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アリアナ・ハフィントンさん ザ・ハフィントン・ポスト編集長(前編)

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THE HUFFINTON POST
数十人だったスタッフは、若い記者や編集者らが加わり500人規模に膨れ上がった=ニューヨークのオフィスで | The Asahi Shimbun

(フロントランナー:上)ネットに咲いた 言論空間

■アリアナ・ハフィントンさん(62) ザ・ハフィントン・ポスト編集長

 「Force of Nature」(強力な人物)と周囲は評する。あらがえない力をもち、周囲を巻き込んでいくパワフルな人物だ。8年前、仲間数人と立ち上げた「ザ・ハフィントン・ポスト」は、米国で最も読まれるニュース・ブログサイトの一つに育った。

 サイト訪問者数は月間5000万人で老舗ニューヨーク・タイムズの電子版と競い合う。ソーシャルメディアを最大限に活用して読者参加を促し、ニュースだけで毎日30万件のコメントが投稿される。米国ではフェイスブックで最も共有されるコンテンツだ。

 昨年はイラク帰還兵の苦悩を描いた連載記事でピュリツァー賞を受賞した。一昨年のAOLによる買収後は海外展開を加速し、フランスや日本に続きブラジルやドイツでも現地版の開設を予定する。ネット出自のニュースメディアの快進撃は、「メディアの救世主」とも称される。

 「メディアは情報を一方的に送るだけでなく、読者が参加し、つながる場へと変わってきた。私たちはこの流れの最先端に居続けています」

 ギリシャ生まれの米国人。父親は新聞発行人で幼い頃から活字に親しんだ。10代で英国に渡り、ケンブリッジ大学を経て作家の道へ。保守派の論客だったが1990年代、「保守が嫌う『大きな政府』なしで貧困や格差は解決できない」とリベラルに転じた。その後もカリフォルニア州知事選に出たり、自動車業界に代替燃料の使用を働きかけたり、信じた道を進んできた。

 一方で太陽のように陽性な一面を持ち、誰にでも気さくに話しかけ、会議やパーティーではつねに人の輪の中心だ。訪問者には「ギリシャ流のもてなし」でまず食べ物を勧める。政界からメディア、ハリウッドまで幅広い人脈を培い、アドレス帳には1万9千人の名前があるという。

 サイト創設当時、ブッシュ政権は2期目に入り、ネットの言論空間は保守派や右派が主流だった。ブログの手軽さと訴求力に魅せられて「聴くべき声を届ける手段に」と始めたサイトには、作家ノーマン・メイラーや著名キャスターのウォルター・クロンカイト、俳優ジョン・キューザックら、思想に共鳴した各界の著名人が無償で寄稿した。「いろんな人間を集めて見事に鍋をかき混ぜ、最高の結果を生み出す」とは14年来の友人で創設メンバーのロイ・シーコフさん(53)の評だ。

 好奇心の強さも折り紙付きだ。MITメディアラボ所長の伊藤穣一さん(46)は約10年前、ある国際会議で初めて会った時の印象を振り返る。「ブログ検索サービスの開発者と技術の話をしていると、『どんな仕組みなの?』と会話に入ってきた。ブログが求めるのは中立性よりも明快な立ち位置。彼女にぴったりの表現方法だったのでしょう」

 現在もほぼ2日に1回のペースでブログを書き、6台の携帯端末を駆使してツイッターで発信を続ける。8年でネットメディアの成功モデルとなったサイトの成長力の源泉に、彼女自身が放つ「Force」がある。

文・後藤絵里
写真・坂本真理

(朝日新聞社提供)

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