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日本の大手銀行が海外貸出を加速、しかし融資先はダブルB以下も

2013年05月08日 15時55分 JST | 更新 2013年05月08日 15時55分 JST
Flickr / Jephso

国内の低金利を背景に、日本の大手銀行が海外貸出の現地化を加速させている。これまでは日本企業が関わる優良案件が主な融資先だったが、最近は格付が低い現地企業や、地方政府が手掛ける案件、新興国でも貸し出しを増やそうとしている。

国内は日銀による大規模な金融緩和で超低金利が長期化しそうな一方、企業の資金需要はなかなか高まらない。日本の銀行にとっては海外での業務拡大が収益向上のカギを握るだけに、より利ザヤの大きい融資先を確保する必要性に迫られている。

<ダブルB以下の米企業に融資>

三井住友銀行は昨年度、化学品原料の卸を手掛ける米ニュージャージー州の企業に数百万ドルの融資を実施した。この卸売り業者の売上高は年間2億ドル程度。格付けはダブルB以下で、日系企業とのつながりはまったくない。

同行の海外での貸出先は、依然として大手優良企業向けや、大規模インフラ整備向けなどが大半を占める。しかし、米国では融資先を徐々に多様化させている。前出の例は、そうした取り組みの成果だという。

パブリックファイナンスと呼ばれる地方公共団体向けの貸し出しもその一つ。08年には米銀から人員を採用し、チームを12名体制に拡充した。ニューヨーク市水道局やカナダのオタワ市内のライトレール(軽量鉄道)向けの融資などを実施してきた。

銀行関係者によると、A格付の貸出先に比べ、トリプルB格やダブルB格の利ザヤは一般的にそれぞれ40─50ベーシスポイント、170─180ベーシスポイント高い。「(海外における)高格付け企業との商業銀行取引は収益性に限界がある」と、三井住友銀行国際統括部の川船英生グループ長は、米国でダブルB格など投資適格より格付けの低い企業向け貸し出しを増やす理由を説明する。

<中南米で現地語スタッフ充実>

三菱東京UFJ銀行は昨年、BNPパリバで南米のプロジェクトファイナンスを手掛けていたラルフ・ショルツ氏を採用した。さらにHSBCからもポルトガル語を話す人材を登用するなど、現地の言語を使いこなす布陣で固めて中南米向けの融資事業を強化している。

中南米ではチリの銅鉱山開発や発電所設備、メキシコのガスパイプラインなど案件が豊富で、日本の銀行にとっても魅力的な市場。三菱東京UFJ銀行ストラクチャードファイナンス部の酒井隆行次長は、現地語を話すスタッフを充実させたことで、「従来の実績とは明らかに種類の異なる、日系企業が関わっていない地場色の強い案件も組成できるようになってきた」と話す。今後はドル建てだけでなく、現地通貨建てのプロジェクトファイナンスも増やしたい考えで、融資の現地化を一段と進める。

ただ、債務危機に苦しんできた欧州の金融機関も、最近は資産リストラが一段落。一時は手を引いたアジアや中南米向けの融資業務を復活させつつあり、「一部の案件には戻ってきている」(大手行幹部)という。このため日本の大手行にとっては、融資先をいかに囲い込むかが課題だ。

<採算良いM&A案件>

みずほコーポレート銀行は北米や中南米、欧州など各地域でそれぞれ有望な融資先30社をリストアップし、重点的に営業をかけている。この中から買収案件に対する融資が魅力的な事業に育つことを期待している。同行の国際管理部中川一也参事役は「優良先の(融資)条件は厳しいが、M&A(合併・買収)に対する融資は比較的採算がよい」と話す。

みずほは現在、ロシアの資源会社などが計画する大型買収への融資を中南米と北米で計4件準備中。買収金額はいずれも「ビリオン(十億)ドル単位」だという。買収完了後により長期の資金調達に切り替える際に、社債発行やシンジケートローンの組成など数珠つながりで展開できるビジネスにも期待を膨らませている。(ロイターニュース 浦中大我;編集:久保信博)[東京 8日 ロイター]