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キユーピー、味の素、ケンタッキー 円安で調達コスト増、値上げ広がる可能性も

2013年05月12日 20時11分 JST | 更新 2013年05月12日 23時34分 JST
Reuters

アベノミクスにより一気に進んだ円安・株高。輸出産業の業績回復期待や資産効果による高額品消費の増加など、景気回復に向けたプラス面に目が行きがちだったが、ドル円が節目の100円を突破したことで、原材料をはじめとする輸入価格の上昇というデメリットも意識され始めている。

ただ、輸入原材料のコスト高が懸念される食品・外食企業への影響は二極化。海外展開が進んでいる企業は円安がプラスに働く一方で、国内中心に展開する企業では、コストを吸収し切れず、製品価格に転嫁する動きも出ている。一段の円安進行により、今後、値上げが広範囲に広がる懸念も強まっている。

<輸入コスト増を為替換算が上回る>

輸入原材料価格の上昇でマイナス影響を受けそうなのは食品メーカー・外食企業だが、地道に展開してきた海外事業の成果やここ数年の積極的なM&Aや海外進出によって、足元では状況が大きく変化している。現地生産・販売を中心に海外展開を進めてきた企業は、円安が為替換算でプラスに働くようになっている。

味の素<2802.T>は2014年3月期の海外売上高比率が49%、利益比率は59%と半分以上を海外で稼ぎ出す体制となっている。海外事業は、現地生産・販売が中心となっており、為替円安は収益にとってプラスに働く。14年3月期は営業利益段階で為替要因で36億円のプラスを見込んでいるが「冷凍食品の輸入など貿易為替で10億円のマイナスだが、換算為替で46億円のプラスとなるため、輸入面でのマイナスを換算為替のプラスが上回っている」(広報)という。

日本を含む31の国と地域で販売を行っているヤクルト本社<2267.T>も「現地通貨ベースでは伸びていた部分が、これまでは円高で消されていた。今期は、為替換算で売上高157億円、営業利益33億円の押し上げ要因になっている」(川端美博副社長)と、円安を歓迎する。一方、容器の原材料となる樹脂の調達コストは上がるものの、為替換算によるプラスに比べると小さな規模で「それによる値上げは考えてない」という。

このほか、積極的に海外企業のM&Aを繰り広げてきた大手ビールメーカーのキリンホールディングス<2503.T>は、海外売上高比率が26%、営業利益に占める比率は18%(2012年12月期)に高まっており、為替円安は「連結全体ではプラスに働く」(鈴木政士取締役)という。同社の場合、豪ライオン社やブラジルキリン社の売上げを円換算するため、豪ドル、ブラジルレアルの円換算レートが影響してくるほか、配当金も豪ドル高/円安で増加することになる。キリンの13年の想定為替レートは、1オーストラリアドルが90円、1ブラジルレアルが43円。足元では、1オーストラリアドルが101円、1ブラジルレアルが50円で推移している。

<食用油・輸送コストなどの上昇は徐々に影響>

一方、国内を中心に事業を行っている企業にとっては、円安による調達コスト増は徐々に影響を及ぼしてくる。日常品に対する消費者の節約志向は続いているだけに、胃袋の減少・節約志向・コスト高と、逆風は強まるばかりだ。合理化や効率化だけでは急速な円安に対応しきれず、値上げや数量減による実質値上げなどを迫られる企業も増えそうだ。

キユーピー<2809.T>は7月1日出荷分から、業務用・家庭用マヨネーズを2―9%値上げすると発表した。08年以来5年ぶりの値上げとなる。主原料となる食用油の価格が13年1―3月は09年5月に比べて約1.4倍に高騰していることに対応。同社では「値上げを実施する7月には、足元よりも食用油の価格が一段と上がるとみており、一部を価格に反映させざるを得ない。7月に1キログラム(訂正)230円(日経ローリー相場)を想定しており、今回の値上げにより、60%程度を価格転嫁することになる」(広報)という。ただ、新興国の需要増による穀物相場上昇に円安、包装材やエネルギーコスト上昇など、コスト面では厳しい環境が続く。

為替円安がプラスに働く味の素も、グループの冷凍食品会社は円安の影響を大きく受ける。伊藤雅俊社長も「原料輸入も製品輸入もあるため、影響が大きいのは冷凍食品だ。原料高を吸収するために、個数を少なくしてより良いものを作るなど価値を上げる必要があるかもしれない」と述べ、コスト高への対応が必要になるとの認識を示した。

日本ケンタッキー・フライド・チキン<9873.T>は、主原料の鶏肉はほとんどが国産で円安による直接的なコストアップ影響は軽微なものの、鳥のエサとなるトウモロコシなどの価格やガソリンなど運送費用の上昇などで「これ以上の円安だと、下期には影響が出てくる」(渡辺正夫社長)と懸念を示す。

日本ケンタッキーでは、円安進行を意識したわけではないが、穀物価格上昇などを踏まえ、世界的に調達を効率化しようというタスクフォースが立ち上がった。今後、共同調達などを検討していくという。ただ、円安のスピードが速いだけに「100円を超えて120円レベルになると、コスト上昇のインパクトは吸収し切れない。今は価格改定を考えていないが、さらなる円安ならば、考えざるを得ない」と、渡辺社長は話している。[東京 10日 ロイター] (ロイターニュース 清水律子   編集 宮崎大)