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GDP高成長 アベノミクス効果、家計→企業部門が鍵

2013年05月16日 21時06分 JST | 更新 2013年07月16日 18時12分 JST
Reuters

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高成長となった1─3月国内総生産(GDP)をけん引したのは、資産効果とマインド改善による個人消費だった。アベノミクスの初期段階の効果はまず家計部門に表れた形だが、その持続性には疑問もある。

消費の高揚という宴の後も息の長い波及効果を狙うには、資産効果が息切れぬうちに企業部門にバトンタッチしていくことが必要だ。

<即効性高い資産効果、株価4割上昇で消費1%拡大>

「ここまでの消費の堅調は予想外だった」──1─3月GDPをけん引した個人消費について、エコノミストの多くはここまで強くなるとは当初予想しておらず、途中から予測を上方修正する動きが相次いだ。1─3月の各消費統計をみると、高額消費や新車販売、金融取引サービスなどが押し上げたことから、株高や円安による資産効果が効いていることがうかがえる。

日本の家計の資産構成における株保有比率はおよそ7%。米国の33%と比較すると非常に低く、株高が米国のように消費を押し上げる効果はそれほど大きくないと言われてきた。内閣府や民間エコノミストの試算では、株価が1割上昇しても消費を0.2─0.3%程度押し上げるに過ぎない。それでも今回、安倍政権誕生に対する期待が高まった昨年11月末と比較すると、今年3月末までに株価は約4割も上昇。試算上、1%前後の消費押し上げ効果があったことになる。実際、GDPにおける民間最終消費支出の前期比はプラス0.9%となり、ほぼ資産効果で説明がつく。株高効果は、即効性をもって、押し上げ効果を発揮したことになる。

さらに、株式投資や為替取引を手掛けていない一般の消費者の購買意欲までもが堅調に推移し、エコノミストを驚かせた。春闘では一時金増額が中心で、賃金カーブを引き上げるベースアップが乏しかったことから、サラリーマンの年間給与は0.5%程度しか上がらないと予想される中、一般世帯の購買意欲はさほど高まらないとみられていた。しかし消費者態度指数や景気ウォッチャー調査など、マインド系調査は上昇を続けた。消費の現場でも、春物衣服、飲食料品、医薬・化粧品など、一般日用品の小売業販売額は1─3月に前期比で増加した。

第一生命経済研究所・主席エコノミストの新家義貴氏は「株価イコール景気と受け止めている家計は多いため、株価の上昇によって景気回復期待が大きく高まったものと思われる」とみている。

政策当局幹部の間からは、堅調な国内消費の中に成長戦略のヒントを探ろうという声も出てきた。「アベノミクスにまず家計が反応したことには意味がある。富をため込んだ高齢者が相当数いるということ。日本経済の成長戦略もそれにふさわしい構造にすべき」など、消費やサービスに照準を合わせた政策の展開への取り組みを主張する声もある。

<宴の後は、実力勝負の企業部門にバトンタッチ>

こうした消費の堅調な動きはいつまで持続するのか──4月以降も株式相場の上昇は続いており、5月15日時点までで2割上昇。さらに雇用や賃金に大きな期待はできないながら、今のところマインド効果も持続していおり、一般の消費も失速は免れそうだ。ただ、政策当局や民間調査機関は、これまでと同様のペースで株高が続くとは考えにくく「資産効果がここから先もいつまでも続くことは期待できない」とみている。

持続力ある景気の回復に必要なのは、金融市場の高揚に踊らされた資産効果やマインド効果ではなく、地に足の着いた成長だ。「個人消費が景気を支えている間に、企業部門が持ち直せるかどうかが今後の焦点」と、第一生命経済研究所の新家氏は指摘する。

企業部門の回復の糸口として期待が高まるのは、円安効果へのバトンタッチだ。「株高と異なり、円安効果は輸出数量、生産、設備投資、企業収益、個人所得、消費と、波及経路が長く、息の長い景気押し上げ効果があるため、持続性ある成長につながる」(政策当局幹部)。輸出数量は、円安だけではなく外需の動向にも大きく左右されるが、1─3月GDPでは、輸出が前期比3.8%と高い伸びを示した。円安効果はまだ表れていないが、日本企業の依存度が高い米国経済の復調が奏功し、外需の環境は徐々に改善に向かっている。次の段階として、4─6月期以降は円安による数量効果が期待できそうだ。

さらに大型補正予算による公共工事の効果は4─6月に大幅に増加、内需も相まって成長率を押し上げることが期待されている。鉱工業生産統計によれば、このところ当初の生産計画を上ぶれる結果が続いており、内外需の回復が生産に波及しつつある。

ただ今のところ、その先の設備投資に結び付く気配はみられない。1─3月GDP統計では設備投資は引き続きマイナス成長となり、底打ちに至っていない。3月日銀短観でも、大企業製造業の13年度投資計画は過去2年を下回る伸び率にとどまった。企業の首脳陣からは「外部環境はプラス方向にいっていない。今期は自助努力による収益基盤の立て直しに注力する」(帝人<3401.T>の園部芳久・最高財務責任者)といった声が聞かれるなど、内外需要の持ち直しを慎重に見極めているようだ。

企業は政府に法人減税や設備投資減税を要望しているが、今のところ安倍政権が成長戦略の中で本格的に取り組む動きはみられない。為替が円安に振れたからといって、生産を国内に回帰させる動きはまだ目立たない。三菱自動車<7211.T>の益子修社長は「(円安で)日本で生産する車の損益が大きく改善し、競争力を回復しつつある」としながらも、人口減で需要拡大が見込めない国内での能力増強は難しく「現状のレベルを維持していくのが精一杯」と指摘する。

研究開発投資や、付加価値の高い製品の増産投資などが増えなければ、日本企業の競争力向上を伴った成長は実現できない。アベノミクス効果が家計部門から企業部門にバトンタッチしていけるのか、次の局面を見極める必要がある。[東京 16日 ロイター] (ロイターニュース 中川泉;編集 久保信博)