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村山談話をなぜ歴代の内閣は踏襲するのか

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15日に開かれた参院予算委員会で、安倍首相は民主党の大河原議員からの村山談話に関する質問に対して、下記のように回答した。

安倍首相:

村山談話に関しては、我が国は、かつて多くの国々、特にアジアの人々に対しては多大な損害と苦痛を与えた、その認識としては安倍内閣としても同じであり、これまでの歴代の内閣の立場を引き継ぐ考えであります。



いわゆる村山談話は、戦後50年を機に出されたものであり、戦後60年にあたっては当時の小泉内閣が、談話を出しているわけでありまして、当然、累次に出された談話については、その時どきの内閣が出された談話であり、これまでの歴代の内閣を、安倍内閣としても引き継ぐ立場でございます。その上において、然るべき時期に、21世紀にふさわしい、未来志向の談話を発表したいと考えているわけでございますが、そのタイミングと中身につきましては、今後十分に考えていく立場でございます。

(参議院予算委員会 2013/5/15)

安倍首相の発言にもあるように、村山内閣のあと、小泉内閣や、麻生内閣、そして、民主党の鳩山由紀夫内閣といった、歴代の内閣が、村山談話を引き継ぐ見解を出している。

歴代の内閣が村山談話を引き継ぐには、理由がある。

村山談話は、戦後50年目に当たる1995年(平成7年)8月15日、自民・社会・さきがけの連立政権の時に、村山富市内閣総理大臣が閣議決定に基づいて発表した声明だ。この声明が出される前年、「戦後五十年問題プロジェクト」が作られ、戦後の未解決問題の処理について検討が進められた。

1996年当時、「戦後五十年問題プロジェクト」の事務局を担当していた田村重信氏(現自民党政務調査会調査役)は、村山談話の歴史的意義について、自身のブログに下記のように書いている。

 戦後の歴史認識問題で、かつて永野茂門法務大臣や桜井新環境庁長官が言及して、マスコミや韓国、中国から批判を受けて辞めるという事がありました。

それが、「あること」をきっかけに、閣僚が戦後の歴史認識問題で辞めることがなくなりました。

 「あること」とは、村山談話です。これは、自民・社会・さきがけ連立政権の時です。

 村山談話が出る以前は、何が政府の歴史認識なのかが定まっておらず、その結果、閣僚が歴史認識発言によって辞職に追い込まれたことがあったのでした。

 閣僚が、「あなたの歴史認識は」と質問されて、「私は村山談話の通りです」と答えることで、戦後の歴史認識問題で辞めることがなくなりました。

(田村重信ブログ 『「村山総理談話」の歴史的意義』より。 2006/10/05 12:10)

それまで戦後の歴史認識問題については、政府的見解がなく、閣僚がそれぞれ、個々の見解に基づいて発言・対応していた。それを、国としての見解はこうですよと述べることで、個々の責任で閣僚を辞める必要はなくなった。その国としての見解が「村山談話」であると解説している。

15日の参議院予算委員会で、冒頭の答弁のあと大河原議員は安倍首相に下記のような質問をしている。

大河原議員:

総理にお答えいただきましたので、内閣の皆様は、総理のお言葉でしっかりと統一されたというふうに思います。ただ、大臣の中では、例えば稲田大臣は、政治家として村山談話と河野談話の撤回を最大の課題としているというふうにおっしゃっていまして、政治家おひとりおひとりの信念というものはあろうかと思いますが、今の総理の発言が、それをカバーしていく、そのように理解してよろしいでしょうか。そして、高市政調会長についても、村山談話の侵略という部分については、しっくりこないとおっしゃっていましたけれども、それは政府としても、また与党自民党の中でも、どのように扱われているのかを教えていただきたいと思います。

これに対して安倍首相は、下記のように回答。

安倍首相:

もちろん私は内閣総理大臣としてお答えをしておりますから、これは、安倍内閣の考え方を申し上げているわけでございます。高市政調会長の発言については、私もつまびらかには承知はしていないわけでございますが、いずれにせよ、内閣としての考え方は、今申し上げた通りでございます。

このように、内閣の考えはこれであると、答弁をすることができるようになっている。

しかし、安倍首相自身の歴史観については公にすることはない。
同委員会で歴史的認識について質問をした小川敏夫議員に対し、安倍首相は下記のように答えている。

安倍首相:

私は今まで、日本は侵略しなかったというのは一度も言ったことはなかった。今、歴史認識についてここで述べることは、政治問題、外交問題に発展していく。私は行政府の長として、権力を持つものとして、歴史に対して謙虚であらねばならないと考えている。こうした歴史認識に踏み込むことは、抑制すべきであることであろうと考えている。歴史認識に関しては歴史家に任せるべきである。

しかし、この政府見解をつくるのは容易ではなかっただろう。村山談話が出される少し前、平成7年4月に慶応大学で行われた「戦後五十年問題」というテーマの講演で、田村氏は下記のように話している。

 私は、戦後五十年問題というものを考えた場合には、自由民主党の単独政権のときよりは、今の連立政権に期待ができるのではないかというふうに思います。それは、この問題について何よりも真正面から村山連立政権が取り組んでいるということだと思います。自民党の政権であればどうだっただろうかなということになるし、またみずから積極的にこの戦後五十年問題に取り組む姿勢を今のようにとっていただろうかということが、疑問に感じられます。



 現在、連立政権になったからこそ、自由民主党もそれなりにこの問題に取り組むことになったというふうに思います。その意味では、村山連立政権と戦後五十年問題というのは、切っても切れない関係にありますし、村山さん自身がこの問題を大変重視しているということでございます。

(田村重信ブログ「村山談話について」より。 2013/5/16)

自民党だけでは解決できなかった問題を、党派を超えて解決しようとしたのが、この自社さ連立政権における「戦後五十年問題プロジェクト」である。

 現実の政治とは、こういうものなのです。相互に自己の正当性や利益だけを主張するだけでは国際関係はうまくいかないのです。

 評論家や学者は、自己の思想の正当性だけ述べて、その結果が悲惨であっても、責任は取りません。しかし、政治家はその結果に対して責任を持たなければならないのです。

 それが、政治家と評論家・学者・マスコミとの大きな違いなのです。

 安倍総理が、「村山談話」を踏襲するのは当然のことです。

(田村重信ブログ 『「村山総理談話」の歴史的意義』より。 2006/10/05 12:10)

課題を解決し、先に進めるための、仕組みづくり。その地道な仕事も、政治家の役割であろう。

現在、政治に興味が無いと言われる人も多いだろうが、過去の背景をなかなか報道しないような状態においては、政治に興味がなくなるのも、当たり前のことではないか。

田村氏はブログの中で、2種類の村山談話を紹介している。それぞれどのような時期に、どのような内容で出された談話なのか、確認しておきたい。

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