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笹子トンネル崩落事故、遺族ら提訴 賠償求め

2013年05月16日 17時53分 JST | 更新 2013年05月16日 17時54分 JST
Getty Images
Picture shows the entrance of the Sasago tunnel along the Chuo highway near the city of Otsuki in Yamanashi prefecture, 80 kms west of Tokyo on December 3, 2012 following the tunnel collapsed on December 2. Japan ordered inspections of ageing highway tunnels on December 3 after a fiery collapse that killed nine people, as suspicion over the cause of the accident centred on decaying ceiling supports. AFP PHOTO / KAZUHIRO NOGI (Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)

9人が死亡した中央自動車道・笹子トンネル(山梨県)の天井崩落事故で、ワゴン車に乗っていて事故に巻き込まれた5人の遺族が15日、事故を防ぐための注意義務を怠ったとして、中日本高速道路(本社・名古屋市)などに対して、総額約8億9千万円の損害賠償を求めて横浜地裁に提訴した。時事通信によると、遺族らは提訴後の会見で「なぜ事故を防げなかったかの情報が訴訟で出ることを願っている」、「命を絶ち切られた本人たちは声を上げられない。残された親としてできることは、裁判で社会に安全を訴えていくことだ」と話し、事故の原因究明や再発防止を訴えたという。

提訴したのは同じシェアハウスに住みワゴン車に乗っていて死亡した20代男女5人の両親たち10人。朝日新聞デジタルが次のように報じている。

(編集部注:提訴した遺族10人は)中日本高速と、トンネルの保守・点検を担っていた中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京(本社・東京都新宿区)は事故を予見しながら、ハンマーでたたく打音検査や目視点検などで事故を防ぐ注意義務を怠ったと主張する。

中日本高速は「提訴の有無にかかわらず、引き続き誠心誠意対応していく」とコメントしている。


朝日新聞デジタル 2013/05/15 11:38)

事故で亡くなった松本玲さん(当時28歳)はシェアハウスの仲間らとワゴン車で山梨県へ観光に行った帰り、事故にあった。玲さんの父・邦夫さん(62)と母・和代さん(62)は提訴に踏み切った経緯を産経ニュースに語っている。

(編集部注:玲さんの遺体と対面した)翌日、シェアハウスを訪れると、玲さんと交流のあった仲間たちが「いつも明るく、ムードメーカーだった」「お姉ちゃんのような存在だった」と涙ながらに思い出を話してくれた。

部屋には「Rei」と刺繍(ししゅう)が入った新調したばかりのグレーのパンツスーツがあった。形見として床に落ちていた玲さんの髪の毛を夢中で拾い集めた。


産経ニュース 2013/5/15 06:53)

12月末、5人の遺族が集まり、「子供たちの死を無駄にしたくない」と結束、提訴に向けて動き出した。今年2月に業務上過失致死容疑で中日本高速の金子剛一社長ら4人を山梨県警に刑事告訴すると、3月下旬にはワゴン車が保管されていた山梨県警日下部署分庁舎を訪れた。落下した天井板の衝撃で原形をとどめないほど潰れ、すすで真っ黒になった車に、事故のすさまじさを実感する一方で、「事故を風化させてはならない」との思いを強くした。


産経ニュース 2013/5/15 06:53)

事故は日常生活の中で突然、起きた。

訴訟の論点について、前川直輝弁護士弁護士ドットコムで解説している。

前川弁護士によると、損害賠償訴訟では一般的に、責任に争いがなければ和解が成立するケースも多いという。だが、今回の訴訟における中日本高速道路の責任については「トンネルの壁や天井が道路に落下して、直接自動車に衝突するなどした場合、安全点検や補強・改修工事を怠った責任があり、点検の不備についても責任を負うことが明らか」と指摘。原因究明を求める遺族や被害者の気持ちをふまえた上で、原因解明をみるポイントを次のように述べている。

「今回の事故原因については、天井板を支えるボルトが外れていたことが挙げられています。その点について、検査で見落としがあったのは間違いないにしても、それ以外の要因も複数考えられます。検査の方法、人員体制、ボルトや周辺部品の耐久性、天井の構造上の欠陥、トンネル自体の構造が適切であったか、というように複合的な原因が重なった可能性があります。

二度と同じことが起こらないように、事故原因を徹底的に究明し、各地の道路を管理する国、地方自治体、企業に十分な管理を行わせる。原告の皆さんの気持ちに十分配慮する必要はありますが、今回の裁判はその契機とするべきです」

(弁護士ドットコム「笹子トンネル事故で遺族が「提訴」 知っておくべき訴訟のポイントは?」 2013/05/14 15:00)

国交省の調査では、「事故原因の着目箇所は、ボルト孔の設計・施工も含めた接着部まわりに絞り込んで良い」と指摘。また、トンネル上部の詳細な点検が12年間実施されていなかったことも「不十分と言わざるを得ない」としている。

「あのトンネルは大丈夫だろうか」「あの橋は、道路は安全か」。そんな不安を抱いた人も多いのではないか。

産経ニュースの記事のなかで、邦夫さんらは「事故原因を究明し、二度とこのような惨劇が起きないようにしてほしい」、「事故をきっかけにインフラの老朽化や保守点検について多くの人に考えてほしい」と訴える。

その声は届いているのだろうか。