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本のスキャンをしてくれる「自炊代行」って違法なの?

2013年06月01日 01時22分 JST | 更新 2014年06月07日 21時53分 JST
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HANOVER, GERMANY - MARCH 04: A specialized scanner for scanning books scans a rare book at the Zeutschel Digibook stand at the CeBIT technology fair the first day the fair opened to the public on March 4, 2008 in Hanover, Germany. CeBIT, the world's largest technology trade fair, will run from March 4-9. (Photo by Sean Gallup/Getty Images)

「紙の本」をデジタルデータ化して、電子端末に入れて持ち歩こう――。手元にある本を裁断してスキャナで読み込み、パソコンやiPadで読めるPDFなどの「デジタルデータ」に変換する。そんな「自炊」がいま盛んだ。ただ、「自炊」には裁断機やスキャナなどの専用の機器が必要で、その作業に時間もかかるため、本をもっていけば代わりに自炊してくれる「代行業者」もあらわれた。

この「自炊代行」が物議を醸している。自炊の「代行」は著作権を侵害する行為だとして、東野圭吾さんや浅田次郎さん、弘兼憲史さんといった著名な作家・漫画家たちが自炊代行業者7社に対して、スキャン代行の差し止めを求める裁判を起こしたのだ。昨年11月に提訴された裁判は、まだ法廷で争われている。

こうしたなか、代行業者大手のブックスキャンが自炊代行の業界団体の設立を進めている。業界のルールを検討し、作家や出版社に敵視されている状況を解消する狙いもあるようだ。著作権法に違反せず、作家や出版社も納得する形で「自炊代行」業務を行なっていくには、どのような点に注意すればいいのだろうか。著作権法に詳しい雪丸真吾弁護士に聞いた。

●自炊代行が「私的利用」といえるかどうかが問題になる

「自炊は、紙の書籍をデジタルデータ化する行為ですが、著作権法上の『複製』にあたります(著作権法2条1項15号)。

複製は、著作権者の許可がない限り、違法となります(法21条)。しかし例外的に、(1)私的使用を目的とし、(2)その使用者が複製する場合には、適法となります(法30条1項)。

そのため、個人が自身で利用することを目的として、自身で自炊する分には違法となりません」

つまり、「自炊」は原則として、著作権者の許可がないと違法なのだが、「私的利用」に限って例外的に合法だというわけだ。

問題は、自分で自炊するのではなく、誰かに頼んで自炊してもらう場合はどうなのか、ということだ。その点について、雪丸弁護士は次のように説明する。

「自炊代行業の場合は、誰を『複製の主体』と考えるかで、違法かどうかが変わってきます。これは、さきほどあげた要件の(2)をみたすかどうかに関わる問題です。

すなわち、複製の主体が、データ化する作業を物理的に行っている『自炊代行業者』であると評価されれば、(2)をみたさず、違法となります。他方、自炊代行業者は『依頼者の手足』となってデータ化を行っているに過ぎず、複製の主体は『依頼者』であると評価されれば、(2)をみたし、適法となります」

●自炊代行の「複製主体」について判断した判例はまだない

では、自炊代行はどちらなのか。雪丸弁護士によると、「自炊代行の複製主体について判断した裁判例はまだありません」。しかし、「ロクラクII事件最高裁判決(平成23年1月20日)が参考になります」という。

この「ロクラクII事件」とは、海外在住者などのために、自分が住んでいない地域のテレビ番組を録画できるサービスを提供していた業者が訴えられた事件だ。このサービスで、海外などに住む利用者は、事業者のもとにあるテレビチューナー内蔵の親機を、インターネットを使って操作することができた。そして、親機に録画したテレビ番組データを、自分の手元にある子機に送信して、本来ならば視聴できない遠隔地のテレビ番組を楽しむことができた。

「裁判では、このサービスの提供において、子機を操作する利用者と、同サービスを提供する事業者のどちらが『複製の主体』なのか、すなわち、どちらがテレビ番組の録画をしている主体といえるのかが、問題となりました。

最高裁は、判断基準について、『複製の対象、方法、複製への関与の内容、程度等の諸要素を考慮して、誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断する』としました。そのうえで、事業者が放送番組を複製機器に録画するという『複製実現における枢要な行為』をしており、これがなければ複製がおよそ不可能であることを理由に、『事業者による複製』であると認定しました」

この「ロクラクII事件」の判例を参考にして、自炊代行業を考えるとどうなるだろう?

「ロクラクIIのサービスと自炊代行業は、対象著作物や技術的複雑性の点で異なりますが、複製実現における『枢要な行為』をしているという点で共通しますので、やはり自炊代行業者が複製主体であると考えるべきでしょう。したがって、私的複製は成立しないという結論になると考えます」

どうやら、自炊代行業者にとっては厳しい判断になりそうだ。自炊代行が「私的複製」にあたらないとすれば、著作権者の許可を受けないかぎり、違法ということになってしまう・・・・。しかし、それは自炊代行を利用しているユーザーにとって、残念なことだろう。雪丸弁護士も次のように話している。

「自炊代行への社会的なニーズ自体は認められますので、設立が進められている業界団体と作者・出版社側で何らかの権利処理がなされ、自炊代行業が健全な形で発展して行ければいいですね」

弁護士ドットコム トピックス編集部

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【取材協力弁護士】

雪丸 真吾(ゆきまる・しんご)弁護士

著作権法学会員。日本ユニ著作権センター著作権相談員。慶応義塾大学芸術著作権演習I講師

事務所名: 虎ノ門総合法律事務所