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児童ポルノ禁止法改正案がクールジャパンを殺す? 漫画家、赤松健さんにその問題点を聞く【争点:クール・ジャパン】

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Chika Igaya
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 児童ポルノ禁止法の改正案が5月29日、自民党、公明党、日本維新の会の3党によって今国会に提出された。第三者への提供や販売が違法となっている現行法から、個人がみだりに児童ポルノを持つ「単純所持」にも規制を拡大するもの。また、漫画やアニメ、CGなどへの規制も検討項目に含まれていたことから、「表現の自由」の侵害につながるとして、日本漫画家協会などの業界団体から一斉に反対声明が出され、ネットでも議論が広がっている。改正案の問題点はどこにあるのか。日本の漫画やアニメの文化、産業にどう影響するのか。「ラブひな」や「魔法先生ネギま!」の代表作で知られる漫画家、赤松健さんに聞いた。

――今回、何の議論もなく突然、「単純所持」や漫画などへの規制拡大が懸念される改正案が国会に提出されたようにみえましたが、どのように受け止めていますか?
 
 この改正案は突然、降ってわいたわけではなく、実は2008年や2009年にもほぼ同じ内容のものが国会に提出されたことがありました。2009年提出案は衆議院解散で廃案になりましたが、今回、「これだけは通そう」と自民党が集約した8つの法案のひとつに、この改正案が入っていたわけです。
 議員立法なのでいつ提出されるかわかりませんでしたが、日本漫画家協会や日本出版書籍協会などはいつでも反対声明が出せるよう、あらかじめ文面の準備はしてたようです。 


――それで、改正案が提出された直後に反対声明が出されたわけですね。それ以外にも、日本雑誌協会、日本マンガ学会、日本アニメーター・演出協会、コミックマーケット準備会、全国同人誌即売会連絡会など漫画やアニメに関係する団体から一斉に反対声明が出されました。業界が足並みを揃えて反対するこの改正案の問題点とはどういうものなのでしょうか?

 一般的にいわれているのは2点あります。ひとつめは「単純所持」の禁止。ふたつめは「附則第二条」です。漫画やアニメなど、実際の被害者が存在しない創作物が、児童の権利を侵害する行為と関係があるかどうかを調べるとありますが、その後、準児童ポルノとして規制を強化していくのではないかとも読める内容でした。日本漫画家協会としては特にこの「附則第二条」を問題視しています。


――その「附則第二条」をみんなの党の山田太郎議員がブログで公開している改正案から引用してみます。

 「政府は、漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するもの(次項において「児童ポルノに類する漫画等」という。)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進するとともに、インターネットを利用した児童ポルノに係る情報の閲覧等を制限するための措置(次項において「インターネットによる閲覧の制限」という。)に関する技術の開発の促進について十分な配慮をするものとする。」

――実在する児童とは違う、漫画やアニメの表現として描かれた児童への規制は、何が問題になるのでしょうか?

 絵を描く人ならわかると思うのですが、絵柄というものは、そんな大幅にバリエーションを変えられないものでして(笑)。例えば30代のお母さんキャラを描く場合でも、実際には高校生の美少女とあまり変わらない絵柄だったりします。女性だけではなく、30代という設定で、上半身はだかの美しい男性を描いたとします。しかし、絵としては16歳にみえて、女性の性欲も刺激するかもしれない。日本の漫画のキャラクターは幼く表現されることが多く、「児童」に該当するとして、法に触れる恐れが出てきてしまいます。

 そうなると、漫画家も出版社も危険を避けて、あらかじめそういったキャラクターを出さないようになるでしょうから、いわゆる「創作活動の萎縮」に繋がります。たとえば今、TPP加盟で著作権侵害が非親告罪化される可能性出てきています。2次創作の同人誌がその対象となってくるわけですが、「警察が同人誌ぐらいで動くわけない」と言われても、逮捕されるかもしれないというだけで、2次創作をする作家は萎縮して、作品の内容にも影響してきます。非親告罪化に関しては、日本の漫画やアニメを支えてきたコミックマーケット(日本最大の同人誌即売会)の壊滅も考えられない話ではありません。表現への規制はそれほど、創作活動にとって重要な問題なのです。

――漫画やアニメに対する規制強化が、実際に児童の人権を侵害する児童ポルノを食い止めることにつながるという根拠はどこにあるのでしょうか?

 科学的な根拠はありません。むしろ創作物の摘発に時間を取られて、実在の児童の人権保護がおろそかになる方が問題ですね。ただ、改正案の推進派の方は、なかなか反対派との対話の場に出てきてくれないので、深い議論が難しい状況です。改正案に関しては、専門の弁護士や法学者の間でも非常に問題視される方が多いのですが、国会議員の方は論理だけで動くとは限らない。そこで実際にお会いして気持ちを伝えることも重要だと考えました。

――それで、赤松さんは5月30日、漫画家のちばてつやさんや松本零士さんと一緒に永田町の議員会館を訪れて、与野党の議員に面会していらっしゃいますが、手応えはありましたか?

 私ひとりだと怖いので、大御所について来ていただきました(笑)。自民党や民主党の議員の方にお会いして、お二人の先生からは改正案の件だけでなく、漫画への情熱や将来性まで広く語っていただきました。民主党の海江田万里代表にもお会いしたのですが、「単純所持」の危険性について、よくご存知でした。私たちが訴えている「表現の自由」に対しても、とても理解してくださっています。
 その後、私だけでみんなの党の山田太郎議員にお会いしました。山田議員はいち早く児童ポルノ改正案が提出されることを知り、4月には日本漫画家協会へいらっしゃった方です。

――この赤松さんたちのロビー活動によって急遽、改正案が6月4日に自民党内で開かれる法務部会で議題になることになりました。また、その前日の6月3日には、やはり自民党内の「知的財産戦略調査会コンテンツに関する小委員会」で、赤松さんご自身が漫画の海外展開や児童ポルノ禁止法改正案について講演することが決まりました。小委員会ではどのような話をするご予定ですか?

 主に日本のコンテンツ業界の優れた点や内包する問題点、そして海外展開について述べさせていただく予定です。その際もちろん、この改正案が及ぼす悪影響についても触れざるを得ないでしょう。クールジャパンとして日本のアニメや漫画文化などを強化・発信していこうという時に、そのパワーをそぐような政策はいかがなものかと思いますし。

――今後、想定される国会の動きを教えてください。
 
 現在、ネットを中心に反対する声が広まっていて、議員の方たちにメールや手紙が届いているようなので、改正案についてまず、自民党内で再議論がされるかもしれません。しかし、衆議院は可決されるのではないかとみています。次に参議院ですが、こちらは野党の議席数が若干多く、否決される可能性があります。参議院で否決されても衆議院に戻して再可決できますが、その頃には夏の参院選で時間切れになるのではと思っています。
 もし、継続審議か廃案になると、参院選で自民党が勝った場合、いずれはそのまま可決されてしまうでしょう。できれば今国会の衆議院か参議院で否決されることが望ましいです。もし否決されれば、同じ改正案を提出しづらくなって、今後何年かは安心かなと予想しています。
 ですから、自民党内の議員の方々にご理解を得て、衆議院での勢いをそぐことも大事ですし、参議院では民主党やみんなの党など野党の方々の協力が重要になってきます。


――赤松さんご自身は今後、どのような活動をするご予定ですか?

 参院選のため国会の会期延長がありませんので、6月前半が勝負だと思っています。できるだけ議員の方とお話をするつもりです。また、反対する方々から議員の方へ手紙やメールを送ることも有効だと思います。ただ、言葉使いが悪いと逆効果です。真摯な言葉で訴えていただけると話題となり、支援につながりますので、お願いします。

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