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バングラディシュのビル崩壊事故「再現」アートで抗議【動画】

2013年06月12日 17時09分 JST | 更新 2013年06月12日 18時27分 JST

バングラデシュで1千人以上が死亡したビル倒壊事故。ビルには、世界各国のアパレルブランド製品を作る縫製工場などが入居していた。この事故で、衣料品を製造するアジアの工場での劣悪な労働環境や安全基準の問題が改めて浮き彫りになった。こうした現状に、スペイン・マドリードの高級街地区のアパレルショップの前で崩壊事故を「再現」する抗議アートの動画をスペイン人女性アーティストがYou Tubeに投稿、話題になっている。

この動画は「Fashion Victims」というタイトルで、スペイン人アーティストYolanda Dominguezさんが作成した。

動画では、スペイン・マドリードの高級街地区グラン・ヴィア通りに並ぶマンゴなどアパレルショップの前で、倒れ込こむ女性たちが映し出される。女性たちは、おしゃれな洋服に身を包んでいるが、コンクリート壁や段ボール、パイプなど、がれき(実際には人工的に作られたもの)の山に埋もれ倒れ込んだまま。崩落事故の現場を切り取ったような突然の光景に、通行人たちは、その様子をぽかんと見つめたり、写真を撮ったり。多くの通行人が通り過ぎる中、女性の上にあるがれきを振り落とし、脈を確認する女性もいた。

米国版ハフィントンポストによると、Yolandaさんはこの抗議動画を通じて、ファッション業界の本当の犠牲者とは誰なのか問題提起し、安全基準が守られていない工場の労働者やこうした工場による公害に苦しむ人たち、児童労働を強いられる子どもたちの問題を浮き彫りにしたかったという。

「世界のアパレル工場」と呼ばれるバングラデシュ。

今年4月24日に、首都ダッカ郊外で崩壊した8階建てビル「ラナ・プラザ」には、五つの縫製工場が入り、従業員は3千人以上いたという。朝日新聞デジタル(「バングラの倒壊、死者300人超 『世界のアパレル工場』安全置き去り」 2013/4/28)によると、23日にビルの壁にひびが見つかったため、入居者に退去を要請したが、各工場は操業を続けたという。地元警察は、過失致死などの疑いで工場経営者らを逮捕した。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、バングラ政府はこの事故を受けて、安全基準を改善するための措置を発表。さらに、現在月間38ドル(3900円)と中国の4分の1にすぎない衣料品製造業界の最低賃金の引き上げを約束したと報じている。

ロイター通信によると、ビルに入居していた工場は「世界の大手小売企業のサプライヤー」。だが、欧米諸国での販売価格のわずか10分の1で注文を受けていた。ロイター通信は次のように報じている。

縫製工らの多数の遺体が見つかった事故現場では、スペインのアパレル大手マンゴによる工場ファントム・タックへの発注書も見つかった。
(中略)

1月23日付の発注書では、秋冬コレクション用のコットン100%の男性用ポロシャツ1万2085枚の注文内容が記され、マンゴが1枚当たりに支払う金額は4.45ドルとなっている。同ブランドの似たようなポロシャツはスペインで26─30ユーロ(約3400─4000円)で販売されている。(ロイター2013/5/16 16:05)

ロイター通信の取材に対し、マンゴの広報担当者は、この発注書の注文は完了していなかったとした上で、「ファントム・タックが労働安全基準を満たしていると確認できない限り注文しない予定だった」と説明している。

同国を生産拠点とする大手アパレルブランドに対し、労働環境改善を求める署名活動は日本でも行われた。

署名を呼びかけていたのは、NGO「グローバル・ヴィレッジ(GV)」。インターネット経由で5月31日まで受け付けた。署名では、同国で生産した商品を日本で販売する多国籍企業が、建物の安全性や防火対策などを定めた「バングラデシュ安全協定」に調印し確実に実行するよう求めている。

署名活動の発起人のひとりでGV代表の英国人サフィア・ミニーさん(49)は朝日新聞デジタル「&」の記事で、同国の衣料産業で働く人の多くが10~30代の女性で、中国の3割程度以下の賃金で働いていると指摘。「現在の安価なファッションは、こうした状況の上に成り立っている。署名活動を通して、透明性のあるもの作りをしている企業の製品しか買わないという意識が消費者にも広がれば」と述べている。

スウェーデンの「H&M」や「ザラ」を展開するスペインのインディテックスなどは安全性強化などを盛り込んだバングラデシュでの労働環境改善案に合意したという。

GVのホームページでは、作家の村上龍さんやフリーアナウンサーの末吉里花さんらから寄せられた事故に対するメッセージも紹介されている。