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子どもの貧困対策法、成立 「貧困の連鎖」ストップへ【争点:少子化】

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子ども貧困対策法、成立(写真はイメージ) | Getty
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親から子への「貧困の連鎖」を断ち切れ――。

「子どもの貧困対策法」が19日、参院本会議で可決、成立した。貧困の連鎖を防ぐための対策を国の責務とする。年内に施行される見通しだ。貧困世帯にいる18歳未満の子どもは15.7%(2009年)。「団塊ジュニア」と呼ばれる世代が中高生だったころの貧困率も12.9%(1988年)と、決して低くなかった。現在、約6人に1人の子どもが貧困とされる水準で生活する、子どもの貧困大国ニッポン。所得再分配後の子どもの貧困率の方が高い、親が働いていても貧困、という課題を抱えながら「貧困の連鎖」を断ち切ることはできるだろうか。

法案では、生まれ育った環境によって子どもの将来が左右されることがないよう、教育の機会均等などの対策を国や地方自治体の責務で行うことが義務づけられる。政府は今後、専門家や支援者らの意見を聞いた上で大綱を策定するが、策定までに時間がかかってしまうと、復興庁の「原発事故子ども・被災者支援法」のように、成立から1年経ってからも基本方針すら策定されず、機能していない状態が長く続くことも有り得る。

<子どもの貧困対策法案のポイント>

・年1回、子どもの貧困や対策の実施状況を公表する
・子どもの貧困対策を総合的に推進するため「大綱」を政府が作成する。
・大綱には、子どもの貧困率や生活保護世帯の子どもの高校進学率などの指標を改善するための施策▽教育や生活支援、保護者の就労支援などを定める
・国と地方自治体は、貧困家庭の就学や学資の援助、学習支援といった教育支援に取り組む
・核と度府県は、子どもの貧困対策についての計画を策定する
・「子どもの貧困対策会議」設置

(「子どもの貧困対策の推進に関する法案要綱」から抜粋)

●実はずっと「子どもの貧困大国」

子どもの貧困率とは、貧困線以下で暮らす18歳未満の子どもの割合。経済開発機構(OECD)が作成した基準を使い、厚生労働省が国民生活基礎調査を基に算出している。

厚生労働省の調査では2009年の「子どもの貧困率」は15.7%。1人親世帯では5割強が貧困状態とされ、さらに深刻だ。

OECE加盟国と比較してみると、日本の貧困率が高い水準であることがわかる。2008年の日本の相対的貧困率は14.9%、OECD加盟国30カ国中12番目に高く、加盟国の平均10.6%を上回っている。

また、ユニセフが2012年5月にまとめた報告書でも、日本の子どもの相対的貧困率はOECDに加盟する35カ国中、9番目と高水準。先進20カ国の中では、アメリカ、スペイン、イタリアに次いで4番目だった。

子どもの貧困率は団塊ジュニア世代が中高生だった1988年でも12.9%と低くなく、割合は年々上昇している。

●働いているのに貧困、政府の再配分で貧困率上昇の謎

貧困家庭に育つ子どもたちは様々な困難に直面している。進学したいのに経済的理由で諦めざるを得ないケースや、児童虐待の被害にあったり、不登校や高校中退の割合が高くなったりすることが指摘されている。健康状態に影響を及ぼすこともある。
「子ども・若者白書」によると、経済的な理由により、就学援助を受ける小中学生はこの10年で増加。2010年には約155万人にのぼり、就学援助率は過去最高だった。
子どもの貧困が増えている背景には、景気の悪化による親の所得の減少や1人親世帯の増加などが考えられる。

2010年の母子・父子世帯数は約84万世帯。この10年で約3割増えている。
厚生労働省のまとめによると、1人親世帯の平均収入は母子世帯で291万円、父子世帯で455万円。児童がいる世帯の平均年収658万円と比較すると、母子世帯は約4割の収入しかない。さらに母子世帯では、パートなどの「非正規雇用」が約5割を占め、将来への不安を抱える家庭も少なくない。

しかも、日本では親が働いているにもかかわらず、貧困状態に陥っている世帯の割合が高いことがOECDの調査(2008年)で指摘されている。
日本では、親が働いている1人親世帯の貧困率は54.6%。OECD30カ国の平均21.3%を大きく上回り、アメリカなど他国を引き離して高い。働いてない1人親世帯の貧困率52.5%と、さほど変わらない状態だ。

さらに、所得の再分配前後で貧困率を比較すると、再配分後の方が貧困率が高くなっているのは日本だけ。
デンマークやノルウェーなどの北欧諸国では再配分前の貧困率は日本と同程度だが、再分配後の値は日本を大きく下回り先進諸国の中でも最も低い2~4%となっている。北欧諸国では、子どものいる貧困世帯の負担を少なくしたり、負担を超える額の給付がなされるように制度設計がされていからだという(「子ども応援便り」より)。
日本では社会保障給付のほとんどは年金と医療サービスで、子育て世帯への社会保障給付が少ない。貧困家庭でも社会保険料の負担が重く、その上政府の支援策も十分とはいえない。

今回、貧困率削減の「数値目標」は盛り込まれなかった。
民主党などの野党は「2021年までに10%未満」とするなどの目標明記を求めたが、自民・公明両党は慎重姿勢を崩さなかった。結局、「子どもの貧困率、生活保護世帯に属する子どもの高校進学率などの指標の改善に向けた施策」を国が定める「大綱」に盛り込むことになった。(朝日新聞デジタル「子の貧困、連鎖断てるか 対策法案、衆院を通過」2012/6/14)

国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩さんは、朝日新聞デジタルの記事の中で「貧困率を下げる努力と監視するシステムは必要」と指摘し、次のように述べている。

学習支援のみをもって「貧困対策しています」となるのは問題だ。親の就労と切り離して、子どもの貧困は解決できない。奨学金、学習支援、親の就労支援。優先順位をつけて財源をあてる。子どもを入り口として家庭を支援していかなければならない。(朝日新聞デジタル「子の貧困、連鎖断てるか 対策法案、衆院を通過」2012/6/14)

「貧困で悩む子どもがいなくなってほしい」。東京新聞の記事では、法成立を見守った大学生の言葉を紹介している。中学生のときに父親を亡くし、大学進学を後押ししてくれた母親は年収200万円ほどで息子3人を育てたという。

「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として・・・」
子どもの貧困対策法の基本理念に盛り込まれている一文だ。

「貧困の連鎖」を断ち切り、日本に生まれてきた子どもたちが、貧困によって可能性を狭めることなく、将来を築いていけるのか。国や各自治体だけでなく社会全体の問題として、国民一人一人が取り組むべき問題かもしれない。

子どもの貧困に関する問題や政策について、皆さんのご意見をお聞かせください。