まず風疹の免疫確認へ 妊娠望む女性の診察=日本産婦人科学会

風疹が全国的に猛威を振るっている。今年はわずか半年で患者数が1万人を超えた。日本産科婦人科学会は、会員の産婦人科医に対して、妊娠初期に感染すると胎児に障害が起こる恐れがある風疹について、不妊治療を受診するなど妊娠を希望している女性に、抗体検査や風疹ワクチンの接種歴を確認して免疫を確認するよう求める...
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風疹が全国的に猛威を振るっている。今年はわずか半年で患者数が1万人を超えた。

日本産科婦人科学会は、妊娠初期に感染すると胎児に障害が起こる恐れがある風疹について、不妊治療を受診するなど妊娠を希望している女性に、抗体検査や風疹ワクチンの接種歴を確認して免疫を確認するよう求める通知を会員の産婦人科医に対して出した。

妊娠20週ごろまでの妊婦が風疹に感染すると、赤ちゃんに目や耳、心臓に障害が出る「先天性風疹症候群」(CRS)になる恐れがある。

国立感染症研究所の発表によると、今年の風疹患者数はすでに1万102人で、昨年同期の30倍以上。「CRS」と診断された赤ちゃんも今年に入ってから、東京、神奈川、大阪、愛知で6人報告されている(2013年6月12日現在)。

産経ニュースは、日本産科婦人科学会が通知を出した経緯を次のように報じている。

医療機関は一般的に、妊娠が分かった女性の風疹の抗体値を調べるが、仮に抗体が低くても妊娠中は予防接種を打てない。そのため、不妊治療を行う前に感染履歴や抗体を調べ、抗体が低い人は予防接種を打つことが有効とした。
産経ニュース 2013.6.22 18:32)

■25~34歳の女性、20~40代の男性は要注意!ワクチン接種を

風疹はワクチン接種で予防できる。ただ、十分な抗体を持たない「谷間の世代」が存在する。

妊娠中の風疹を防ぐため、1977年8月~1995年4月まで女子中学生を対象に集団接種が行われていた。95年4月以降、男女ともに接種することになったが、学校での集団接種から医療機関に各自で出向く個別接種に制度が変わってしまった。そのため、この移行期にあたる現在の25~34歳は、予防接種率が低く、十分な抗体を持たない「谷間の世代」がうまれた。今の患者の大半を占めるのが、この世代を中心とした20~40代の男性だという。(朝日新聞デジタル「(ニュースQ3)風疹大流行 20~40代の男性に落とし穴」2013/6/19)

日本産科婦人科学会によると、1回の接種でも一般に予防は可能だが、2回接種で確実な予防になるという。20代~40代の女性の約8~9割がすでに風疹に対する十分な抗体価を保有しており、抗体検査を実施することで、免疫を確認することも可能だ。

国立感染症研究所・感染症疫学センターの多屋馨子先生はゼクシィnetの記事で「妊娠前にお母さんが麻疹風疹混合ワクチンの予防接種を受けるということは、赤ちゃんも麻疹と風疹の抗体を持って生まれてくるということ。お母さんから赤ちゃんへの最初のプレゼントになるんです」と述べている。

妊娠を希望している人は、医療機関で風疹の抗体の有無を調べるか、予防接種を受ける(接種する時期は、妊娠の可能性のない月経中や直後の時期を選び、2カ月間の避妊を原則とする)。そして、いま妊娠している人は、夫や同居する家族に予防接種を受けてもらうことが重要だ。

日本産科婦人科学会などは「妊娠を希望する女性、妊婦の家族や職場の人は、すぐに麻疹風疹混合ワクチン接種を受けましょう」と呼びかけている。

■夏以降、ワクチン不足の恐れも

一方、厚生労働省は、風疹ワクチンが夏にも供給不足になる恐れがあると発表している。過去に予防接種対象外だった成人男性を中心に接種が急増しているためだ。朝日新聞デジタルによると、接種費用を助成する自治体も増え、任意で受けた人は4月に延べ9万人で、5月は32万人。月25万人を上回るペースで進むと8月にも供給が不安定になり、月35万人ペースでは在庫がなくなる恐れがあるという。

そのため、厚生労働省は(1) 妊婦の夫、子ども及びその他の同居家族などの、妊婦の周囲の方 (2) 10代後半から40代の女性(特に、妊娠希望者又は妊娠する可能性の高い方)が優先的に受けられるよう協力を呼びかけている。

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