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「公民権運動の成果」に違憲判断:米最高裁

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米連邦最高裁判所は6月25日(米国時間)、投票権法の第4条を無効とした。この条項は歴史的に重要な公民権法の規定であり、「投票に関する法律を変更する際に、連邦政府または連邦裁判所の承認を得なければならない」とされる米国内の地域について定めたものだ。

投票権法は、ごく最近でもテキサス州での有権者ID法(写真付き身分証明書を義務づけ、有権者登録の本人確認を厳しくするもの)を阻止したり、サウスカロライナ州での同様の法律の施行を延期したりした際の根拠となってきた。25日の最高裁の判決により、これらの州は、事前承認を受ける必要がなくなる。

[投票権法が1965年に定められる以前は、南部を中心に、アフリカ系米国人に対して、識字テストなど差別的な手法で有権者登録を妨害するなどして、実質的に選挙権を剥奪していた。そのため同法では、差別が顕著だった9州や郡などを指定して、選挙の実施方法の決定などの管轄権を連邦政府に移管。選挙に関する手続きを変える際は事前に連邦政府の許可を得ることを義務づけ、差別の復活を阻止していた。同条項は当初5年の期限だったが、連邦議会が繰り返し延長してきた]

アラバマ州シェルビー郡が、連邦司法長官に対して(自治権の侵害であるとして)起こしたこの訴訟に対して、最高裁は5対4となった判決(PDF)で、投票権法が成立した1965年から50年近くが経過した現在、南部の「状況は劇的に変わった」と述べている。

5人による多数意見は、ジョン・ロバーツ最高裁長官が記述し、アントニン・スカリア、アンソニー・ケネディ、クラレンス・トーマス、サミュエル・アリートという4人の裁判官が加わっている。

ロバーツ最高裁長官は判決の中で、「この法律は、人種差別の是正と投票処理の統一に大きな成功をおさめたことが示されてきた」と評価しながらも、対象地域の指定については、規定から40年になるにもかかわらず、議会は「時代遅れの統計」に基づいて延長しており、こうした対象地域指定は「憲法に違反している」と述べた(ロバーツ最高裁長官は、具体的な数値として、ミシシッピ州では1965年に白人の登録有権者は全白人の69.9%だったのに対し、黒人は6.7%にとどまっていたが、2004年には黒人の登録者比率は76.1%となり、白人の72.3%を上回ったことを指摘した)。

「議会はこれまで、対象地域指定を改定することもできたが、そうしなかった。議会が議決しなかったために、我々は(第4条を)違憲と宣言せざるを得なくなった。この条項の指定を、各管轄区に事前承認を強制する根拠として使用することはもはやできない」

最高裁の判決では、議会は「現状に基づいて、別の指定を起草することも可能だ」としているが、共和党が下院で過半数を占めている事実を考慮すると、議会が新たな指定を作成するような議決を行う見込みはない、と投票権を擁護する人々の多くは考えている。

最高裁は、投票権法の第5条にある「事前承認」自体の必要性に関しては判断を下していない。この条項は、第4条の対象となる各州が投票に関する法律を変更する場合は、法律が施行される前に、司法省またはワシントンDCの連邦裁判所の承認を得ることを求めたものだ。ただし、第5条の対象となる州を決めた第4条を違憲としたことで、少なくとも当分の間は第5条が事実上施行されないことになる。

今回の裁判において少数意見を書いたルース・ベイダー・ギンズバーグ裁判官は、「最高裁の見解に従えば、投票権法第5条の大きな成功は休止状態を要求されることになる」と記している。

この条項は、マイノリティーの登録と投票への参加を増やし、「昔のやり方に逆戻りする」ことを防いだ点で「非常に大きな成功」であったことが証明された、とギンズバーグ裁判官は述べている。差別が公然と行われなかった管轄区においても、人種に基づくゲリマンダー(選挙において特定の政党や候補者に有利なように選挙区を区割りすること)のように、マイノリティーの投票率を減らすための「微妙な手段」が登場していたからだ。

第4条について、ギンズバーグ裁判官は次のように記している。「2006年の再認可の記録を見ると、マイノリティーの投票権に対する第2世代の障壁が対象管轄区に現れたことは十分に明らかだ。これは、これらの管轄区での事前承認の本来のきっかけとなった第1世代の障壁に代わるものとして企てられている」

「裁判官であるブレイヤー、ソトメイヤー、ケイガン、そして私の見解は、投票権法を延長し、現在の指定を維持するのは道理にかなっているというものだ」とギンズバーグ裁判官は結論している。

いっぽう、クラレンス・トーマス裁判官は補足意見の中で、第5条も違憲であるという自身の考えを繰り返した。2009年に最高裁が投票権法について下した合憲判決に反対したときと同じ立場だ。「議会がまとめたデータをどれだけ集めたとしても、第5条によって生まれた膨大な負担を正当化することはできない」とトーマス裁判官は記している。

オバマ政権下の司法省では、2009年の訴訟で最高裁が第5条を違憲とするのではないかと考え、判決に対処するための計画を用意していた。司法省報道官に25日にコメントを求めたが、即時回答は得られなかった。

投票権を擁護する人々は、最高裁の判決を非難している。

「法の下の公民権を求める弁護士委員会」(Lawyers' Committee for Civil Rights Under Law」で主任顧問を務めるジョン・グリーンボームは声明を発表し、「最高裁は、この国における最も重要で効果的な公民権法のひとつを事実上骨抜きにした」と述べた。

「差別の記録がある地域のマイノリティー有権者は、過去数十年にわたって受けてきた以上に選挙権を剥奪される危険が高まった。今日の判決は、民主主義に対する一撃だ。各管轄区はマイノリティーの投票を妨げる政策を法律化できるようになり、マイノリティーの市民に残された手段は、費用と時間がかかる訴訟だけになる」

「米国女性有権者同盟」(League of Women Voters of the United States)のエリザベス・マクナマラ議長は、声明の中で次のように述べた。「今日の米最高裁の判決は、40年以上にわたって効果を発揮してきた、投票における人種差別に対する基本的な保護を抹消するものだ。議会は投票権法を取り戻すために迅速な議決を行わなければならない」

全米黒人地位向上協会(NAACP)の「法的擁護および教育基金」(Legal Defense and Educational Fund)のシェリリン・アイフィル会長兼理事・顧問は、「今日は、平等の権利に向けた歩みが一歩後退した日として記憶に残るだろう。我々はこの日を、暗黒の章への逆戻りではなく、この国の歴史の単なる1ページとしなければならない」と述べた。

「キャンペーン・リーガル・センター」(Campaign Legal Center)のJ・ジェラルド・ヘバートは、次のように述べている。「ロバーツ長官が率いる最高裁は、最高裁の前例や、我が国の現場における現実によって思いとどまらなかった。さらに、民族や言語によるマイノリティーに対する差別という我が国の長い歴史を是正するために立法府が憲法によって明確な権限を与えられているにもかかわらず、議会の意見を尊重しようとしないことを改めて示した。最高裁は今日、この国の人種差別は終わったと宣言したが、差別の証拠は山ほどある」

オバマ大統領も、「深く失望している。判決は後退だが、投票差別をなくすための我々の努力の終わりを表すものではない」とし、議会に対応を求めた。

[Ryan J. Reilly, Mike Sacks, Sabrina Siddiqui(English) 日本語版:平井眞弓、合原弘子/ガリレオ]

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