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「国はどこまで本気ですか?」―森雅子少子化対策担当大臣に聞く、少子化危機を突破する政策【前編】【争点:少子化】

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MORIDAIJIN
Eri Goto
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 日本の政府が少子化対策に取り組み始めて、もう20年に及ぼうとしているが、合計特殊出生率は思うような回復をみない。そこで、安倍内閣は6月14日、4年ぶりとなる「骨太の方針」(正式名称:経済財政運営と改革の基本方針)を閣議決定、女性の活躍促進や少子化危機突破に向けた方針を盛り込んだ。ハフィントン・ポストでは、これらの対策をまとめてきた森雅子少子化対策担当大臣に、ユーザーの方から募った質問もまじえ、多岐にわたって全貌が見えにくい少子化対策について取材した。まずは、今までの政策とはどこが違うのか――。

■「骨太の方針」に入った「着実に実行する」という言葉

 ――この度の「骨太の方針」には初めて「女性の力の最大限の発揮」や「少子化危機突破」が盛り込まれ、少子化対策が明確に打ち出されましたが、どこまで本気なのでしょうか?これまでの政策との違いは何でしょうか? ユーザーの方からは、以下のような質問が寄せられています。

【36歳女性からの質問】
 国はそもそも少子化対策への取り組みにどれくらい本気で取り組んでおられるのかお聞きしたいです。政治家の皆様はどこかで「産まない女が悪い」と思ってはいませんでしょうか。いままでの「女性手帳」にせよ各種政策に、どうもそのような思惑が透けて見えるように思っています。女性の思惑に関わらず、日本国が存続するためには子供が絶対に必要なはずです。そのような切迫感が国の政策からは正直感じ取れないのですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

森大臣:これまでの政策と違うのは、まず、男性の意識だと思います。この度は、安倍総理をはじめとして、男性が本気になったところが違うのではないでしょうか。これまでの少子化対策は、平成2年に合計特殊出生率が1.57まで落ち込んだ「1.57ショック」から今まで、「エンゼルプラン」や「子ども・子育て応援プラン」「待機児童ゼロ作戦」、民主党政権になって「子ども手当」などがありました。それなりに会議で話し合われてきましたが、PDCAサイクル(編集部注:Plan=計画、 Do=実行、Check=評価、Act=改善という循環)がきちんとしていなかった。

 なぜかといえば、少子化対策担当大臣がころころ変わったということがひとつにあります。自民党政権の時は、一番短い方で1年、長い方で2年。民主党政権の時には1カ月の方もいて、3年半で10人、1人平均3カ月という短さでした。これではプランで終わってしまい、実行までいかない。少子化問題に対する国としての本気度がやはり、低かったのだと思います。大臣が頻繁に変わるのも、国民の皆さまの目から見ても、「少子化対策を軽視しているのではないか」というとらえられ方をしてしまう。
 それが今回は、少子化対策や少子化対策と最も関係が深い女性の活躍推進という部分が、安倍内閣の政策の中核に位置づけられました。少子化対策担当大臣である私が一生懸命、政策を進めるのは当然のことですが、安倍総理自身、また他の大臣も少子化問題の危機意識を共有し、国策として取り組むということが、「骨太の方針」の中に盛り込まれるという形で明確になりました。

――「骨太の方針」に盛り込まれることの重要性を教えてください。

森大臣:自民党政権の場合は、「骨太の方針」に入らないとだめなんです(笑)。これが政策にとって、生死の分かれ目といってよいぐらい。この「骨太の方針」に入れるために、1年間かけて国会議員は党内の委員会や会議で自分たちの政策を練り上げてきます。ここに書かれるということは、予算の獲得の道を開いてもらったということになりますので、とても重要なのです。そのことによって、その政策の本気度がわかります。私も少子化対策担当大臣として、少子化対策を盛り込むということに血道を上げてきました。

 それから、載るということだけで満足せずに、文章の書き方にまでこだわりました。どういう書き方かによって、その次の具体化に向けての道が広いか狭いかが決まるのですが、ここでは「『少子化危機突破のための緊急対策』を着実に実行する」と言い切っています。「推進する」とか「努める」とかではなく、「着実に実行」です。そして、「少子化危機突破のための緊急対策」という言葉も大事です。この緊急対策は、安倍総理を会長とし、全閣僚を委員とする「少子化社会対策会議」でとりまとめたものを示します。つまり、これらの緊急対策はすべて、着実に実行される対象になります。そこまで獲得できたことでも、今回の本気度がはかれると思います。「少子化危機突破」という書き方にもこだわったのですが、これを突破しなければ、アベノミクスも日本の経済再生もありえないという意味です。

■少子化対策の「3本の矢」とは?

――では、今回の「少子化危機突破のための緊急対策」は、具体的にこれまでと何が違うのでしょうか?

森大臣:緊急対策は「3本の矢」を柱に推進されます。1本目は、「子育て支援」で、待機児童の解消やお子さんの多い世帯への支援などです。2本目は、「働き方改革」で、子育てと仕事の両立支援や男性の働き方の見直しなどです。これらは基本的に、これまでの少子化対策でも取り組んでまいりましたが、さらなる強化をします。
それから今回、加わった3本目の矢は「結婚・妊娠・出産支援」です。これまでの政策で足りないところを私がやっていこうと思い、20年間の取り組みでなぜ出生率が上がらなかったのか、政策を並べたマトリックスを作ってみました。人生の結婚、妊娠、出産、育児というライフプランの中で、これまでの政策は後半に向かってとても厚くなっていて、結婚のところはまったく白紙。妊娠のところも、妊婦検診くらいで、不妊治療に対する助成の中身も不十分でした。少子化対策にはこの部分の政策が必要だと思いました。

 少子化対策担当大臣の諮問機関である「少子化危機突破タスクフォース」の安藏伸治委員(日本人口学会長、明治大学政経学部教授)の資料によると、1970年の出生率は2.0以上で人口を維持できる水準でした。当時、最も出産している年齢は25歳くらいの方です。今は高齢出産が進み、産んでいるのは30歳くらいの方で、どうしても全体の数が減ってきてしまいます。お子さんを3人とか4人は産めない状態です。若いうちに出産をしていた時代は出生率が高かったことが、人口学的に明らかになっています。
 もちろん、若いうちに結婚して出産するかは、その人それぞれの自由なので、押し付けることはできません。ただ、結婚や出産をしたいけれどできない人の希望に応えたい。実は、地方自治体ではすでに結婚や妊娠への支援に取り組んでいて、結婚祝い金を出したり、婚活支援をしたり、里帰り出産を奨励したりと施策を打ち始めています。こうした、それぞれ地方の特色を活かした取り組みに国が補助金を出すことも検討します。

 それから、高齢になると不妊になって妊娠や出産が難しくなることが、だんだんとわかってきました。不妊治療に来ている人は平均で39歳ぐらいです。不妊治療による妊娠の成功率は35歳を過ぎると下がることも、医学的に明らかです。今後、もっと早めに治療にくればもっと妊娠の成功率は高いことなどを啓蒙することも今回、決めました。
 他にも、若い女性が産婦人科に行きやすくなるようにしたい。今、若い人たちは将来、不妊治療に行けば赤ちゃんができると思っています。月経痛があっても痛み止めを飲んで我慢していて、出産じゃないからといって産婦人科にいかない。でも、もしも何か病気があった場合、早めに行って治療することができます。

■「女性手帳」批判をきっかけに対話

――ただ、そうした「啓蒙」がプライバシーの領域ではないかという批判が、「女性手帳」の報道をきっかけに起こりました。

森大臣:そうですね。やる気まんまんで急ぎ過ぎたあまり、情報発信の際に説明が不十分だったということがあって、最初に大きな批判が起きました。たくさんの女性団体の方が、この大臣室にいらっしゃいました。でも、今のようなお話をすると、最後にはわかってくださいます。産みたくない人に押し付けるわけではない、結婚したくない人に家に入れというのではない。今、結婚したいという若者に、結婚できる経済状態であるとか、出会いの場を設けるのであれば、賛成しますと。女性の体についても啓蒙は大切ですと。話し合いをすると、望んでいることが最後には一致するのです。

 個人の生き方を強制するのではなく、ただ、子供を希望する人にとって社会的な障壁があるのであるとすれば、それを取り除いていく。本当は産みたいのに、会社の事情で産めば仕事がなくなると我慢しているのであれば、産んでください。会社にもちゃんと戻って仕事を続けられる、そういう世の中を作ってゆくことが大事です。今回、反対意見をおうかがいできたことによって、お互い話すことができて良かったと思います。それをまた糧にして、どうしたら一番、国民の利益に資する形になるのか検討したいです。

――女性の体についての啓蒙の大切さですが、森大臣ご自身も、弁護士として忙しく働いていた20代の頃に、「卵巣のう腫」を患い、片方の卵巣をほぼ全て摘出して、一時は結婚や出産を諦めようとしたご経験があると聞いています。

森大臣:なぜだろうと思っていました。原因は今でもよくわかっていませんが、当時、長時間働いたり、夏はクーラーで冷やしたりしたことが良くなかったのかもしれません。ですから、今回の少子化対策にもあるワーク・ライフ・バランス、残業をなくしていくという取り組みも、大事になってくるのではないかと思います。少子化危機突破タスクフォースには、産婦人科のお医者さん2人に入っていただきましたが、私の時代よりも今、20代、30代の未婚の女性の疾患が増えているということでした。男性にもそれを知ってもらい、彼女や奥さんを大事にして頂かないといけないし、上司も女性社員を大事にしてもらわないといけない。女性にも男性にも、両方に対して、啓蒙していきたいと思います。啓蒙の形式も、色々なご意見がありますので、更なる検討チームを立ち上げて、ゆっくりと検討していきたいと思います。

【中編】に続く

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