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遅行指標化する「日銀短観」

2013年07月01日 19時47分 JST | 更新 2013年08月31日 18時12分 JST

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日銀の6月短観(全国短期経済観測調査)で企業の景況感改善が確認されたが、ここから日銀の今後の金融政策を判断するのは難しそうだ。

金融政策の決定で短観が占める重要度は低下しつつある上、黒田日銀は短期的な景気の上げ下げに対しては、4月に打ち出した「異次元緩和」の効果を見守り、安易に政策変更しない姿勢を明確にしているためだ。また、短観が景気の「遅行指標」との見方が広がり、市場関係者の注目度が低下しているという指摘も出ている。

6月短観では、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス4と前回3月短観から12ポイントの大幅改善となり、2011年3月調査(プラス6)以来の高水準となった。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による金融緩和を背景とした株高・円安で、輸出企業を中心に景況感が改善した。

日銀は年央以降に国内景気が緩やかに回復するとのシナリオを描いており、今回の短観結果は、その見通し通りに景気が推移していることを示したと言える。このため、景気の下振れリスクを懸念して、追加緩和を検討する状況とはかなり異なった情勢だ。

また、ここ数年は、短観の中身と金融政策の関連性が薄くなる傾向を強めていた。白川方明前総裁が、上場投資信託(ETF)の買い入れなど現在の金融政策につながる大胆な「包括緩和政策」を始めた2010年10月以降、日銀は今年4月の「異次元緩和」導入まで、約2年半で計11回追加緩和に踏み切っている。

しかし、直前の短観で景況感が大幅に悪化していたのは、2012年10月末、と12年12月の2回だけだ。

日銀の公式な説明とは裏腹に、客観情勢からみて米量的緩和第2弾(QE2)、第3弾(QE3)導入や、米国のインフレ目標導入など円高進行要因を背景に追加緩和に動いたという"ヒストリカル・データ"が多い。消費増税を実現するため景況感の改善を演出したい政府側の意向が重視されてきた一面を指摘する政府関係者もいる。

みずほ証券の上野泰也チーフ・エコノミストは「白川時代後半以降、景気の回復以前に円高・デフレ脱却を強く要請するリフレ派の声が与野党を超え強まり、短観の景況感と金融政策の関係が薄まった印象がある」と指摘する。

そもそも現在の日銀は、戦力の逐次投入はしないとの姿勢で、4月に打ち出した資金供給量(マネタリーベース)を倍増させる「異次元緩和政策」を簡単には動かさない構え。

岩田規久男副総裁はロイターとのインタビュー(6月24日)で、追加の政策対応が必要となるようなケースは中長期的な観点で判断し「特に予想インフレ率が長期的に低下し、安定した(物価上昇率)2%に中長期的に到達しないような場合」と説明。短期的な経済・物価の変動での追加対応に否定的な考えを示している。

実際に6月の金融政策決定会合では、市場で期待された長期金利の抑制策の導入を見送った。理由として一時乱高下していた長期金利が安定していたほか、戦力の逐次投入とみられれば日銀の政策に対する信認にも悪影響が及ぶ、との声も政府・日銀内であったようだ。

ただ、短観は引き続き日銀の重要経済指標で、日銀幹部らも政策判断の重要な材料の1つと強調する。

JPモルガン証券・シニアエコノミストの足立正道氏は「公表が四半期に一度だけで、景気の遅行指標となっており、足元の景況感を見るのには遅い」と指摘する。株式市場など市場関係者の注目度も「米雇用統計を100とすれば、短観は10以下」と足立氏は述べる。

足元の景況感を把握する指標として、短観の重要性が低下している可能性もありそうだ。

(ロイターニュース 竹本 能文;編集;田巻 一彦)

[東京 1日 ロイター]