原発新基準施行で電力会社が再稼働申請開始、規制委の審査方法が今後焦点に【争点まとめ】

原発に、従来より厳しい安全対策を義務づける新規制基準が8日付で施行された。これを受けて、各電力害者が再稼働の審査申請を始めた。今後は原子力規制委員会による審査内容が焦点になるようだ…

原発に、従来より厳しい安全対策を義務づける新規制基準が8日付で施行された。これを受けて、北海道電力は泊原発1~3号機を、また、関西電力が大飯原発3〜4号機および高浜原発3〜4号機を、四国電力は伊方原発3号機、九州電力も川内原発の1〜2号機の再稼働を申請。九電は他にも玄海原発の3〜4号機を12日に申請すると見られており、東京電力は柏崎刈羽6〜7号機を申請したいという。

新規順は原子力規制委員会(規制委)によってまとめられたもので、重大な事故への対策を初めて義務づけるほか、地震や津波の想定をより厳しく評価するなど、「世界最高水準の厳しさ」といわれている。放射性物質の大量放出を抑えながら中の圧力を下げる「フィルターベント」の設置や、テロに備えて外部から燃料を冷やせる装置などの設置も求められる。

規制委の審査は、原子力規制庁と独立行政法人「原子力安全基盤機構」の職員らが参加する3つの審査チームと、地震・津波の専門家によって行われる。審査には1基あたり半年以上かかるといわれており、さらに自治体の同意も必要なため、いつ再稼働されるのかの具体的な見通しは立っていないが、津波などの心配が少ない、伊方原発や川内原発などが、早期に再稼働するのではないかという見方もある。

共同通信社によると、早期再稼働申請を表明した7原発周辺の73の自治体にしたアンケート結果では、再稼働はどのようにして決めるべきかという質問に対し、再稼働は政府が判断すべしという回答が7割を超えたという。このような回答が得られたことに対し、「脱原発の世論が根強い中、規制委が基準適合を認めるなど条件が満たされた場合でも、自治体側から再稼働の是非を言い出しにくいためとみられる」と共同通信は分析している。

NHKニュースは、原発停止に伴う火力の燃料費により、値上げに踏み切る電力会社が出ていると報じている。

電力各社は、1基の原発が運転を再開すると毎月60億円から100億円程度の燃料費を削減できると見込んでいて、早期の運転再開で、収支の改善とともに電力の安定供給につなげたいとしています。

(NHKニュース「原発停止 火力の燃料費が経営を圧迫」より。 2013/07/08 04:31)

一方、産経ニュースは、規制委と電力会社、そして地元の対立を伝え、再稼働審査に時間がかかりそうだと報じている。

規制委の審査が進まず、再稼働が遅れる…。だが、この光景は民主党政権の思惑通りだった。元首相の菅直人(66)は4月、北海道新聞のインタビューにこう答えている。

「10基も20基も再稼働するなんてあり得ない。そう簡単に戻らない仕組みを民主党は残した。その象徴が規制委を作ったことです」

(産経ニュース「対立、不信…真価問われる審査」より。 2013/07/08 09:04)

安倍首相は7日に放送されたNHKの登録番組で、原発の再稼働について、基準を満たさない場合は再稼働を行わないとしながらも、原発停止の影響で3兆円赤字と話し、再稼働を急ぐ考えを示している。原発審査申請のために各電力会社から規制委に提出された資料は1万ページにも及ぶという。今後は審査方法や内容に問題がないか、注意を払う必要があるだろう。

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