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中国経済支える「影の銀行(シャドーバンキング)」 中小企業の生命線に

2013年07月09日 17時43分 JST | 更新 2013年09月07日 18時12分 JST
Reuters

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上海の贈答用カード会社を経営するWang Zhiyong氏は、銀行に2回融資を申し入れたが断られた。

そこで、Wang氏が頼ったのが、中国国内で幅広いネットワークを持つ代替金融のいわゆる「場外(curb side)」融資。銀行を介さない「影の銀行(シャドーバンキング)」の一つだ。

「銀行は、われわれのような新興企業には絶対貸さない。銀行が貸すのは大企業や国有企業だけだ」とWang氏は話す。

政府が経済の不均衡是正を目指すに伴い、ただでさえ厳しい中小企業の借り入れ環境は厳しさ増すと予想される。

中国人民銀行(中央銀行)は前月、不動産投機関連の融資の取り締まりや、地方債務増大に歯止めをかける狙いで資金供給を絞り、短期銀行間金利が上昇するにまかせた。

ところが、当局の取り締まりは、非国有企業の影の銀行への依存を高めるだけだった。

格付け会社フィッチ・レーティングスは、中国の与信残高の約36%が銀行融資以外と試算している。

中国政府は今、自らの政策が生みだし、経済を支えてきたノンバンクの資金融通システムの利用をやめさせるという難しい課題に直面している。

クレディ・スイスは2月の調査リポートで「シャドーバンキングが活発化したのは、経済が成長を必要とする一方で銀行セクターは金融仲介機能を著しく落とさなくてはならない状況が原因」と指摘した。

銀行は普通、零細企業には融資しない。Wang氏にとっては影の銀行が唯一の選択肢だった。Wang氏は6カ月、500万元のローンを組んだ。金利は年14%。銀行融資の約2倍だ。

<政府の融資規制がきっかけ>

影の銀行は、非正当的手法でだが政府の金利政策を自由化させ、中国国内の資金調達メカニズムの多様化をもたらしたとも言える。

それでも当局の監視の目がほとんど届かず、信用力をきちんと評価するメカニズムも持たない与信システムはリスクをはらむ。中国ではこれまで社債のデフォルト(債務不履行)はまったくないが、アナリストはリスク評価が適切にされているのか、と疑問を投げかける。

影の銀行が急成長したのは、政府が銀行融資規制に乗り出した2010年以降。当時、政府は、2008年の大規模景気刺激策を受けて急増した融資がインフレを加速させることなどを懸念していた。国有企業は銀行から借りることができたが、その他企業の大半は銀行以外から資金を調達する必要に迫られた。それが影の銀行の繁栄をもたらした。

影の銀行には、質屋、信託会社、その他さまざまな貸金業者による融資のほか、「理財商品」と呼ばれる高利回りの金融商品も含まれる。 高い利回りをうたって企業や個人に「理財商品」を販売したのは銀行。銀行は影の銀行の仲介をし、顧客は債務をオフバランスで持つことができた。

そのような状況を政府は黙認していた。しかし、影の銀行退治に乗り出すにあたり「理財商品」も対象となった。

実質、人民銀行が演出した6月の銀行間金利急上昇は、短期資金に過度に依存していた銀行を直撃した。アナリストは、銀行は、毎月末の「理財商品」償還・利払い資金を短期金融市場で手当てしていたことが背景と指摘する。

<存在感大きい質屋>

「場外(curb side)」融資は合法だが、規制対象外の高利融資。利点は、素早く資金を手にできることだが、返済金利は月40%を超え、年間で500%近くに達する。

影の銀行の重要な一角を担うのが、認可制で規制対象の質屋。バンク・オブ・アメリカが昨年出した調査リポートによると、2011年末時点で質屋の業界規模は1180億元。しかし、Wansui Micro Credit(広州)の幹部によると、現在の業界規模は5000億元前後。質屋の融資は期間が大体3─6カ月程度、金利は35%になるケースもあるという。

利点はスピード。数カ月もかかる銀行融資と違い、数日で実行できる。

上海の大手質屋、Oriental Pawnの幹部は、銀行がリスクが高いとみなす零細企業に融資しているとして、自分たちは零細企業の重要な支援役と胸を張る。

この会社のホームページによると自動車を担保にした6カ月の融資金利が月4.7%、不動産を担保にした場合では月3.2%となっている。

質屋業は、1956─1987年の間は禁止されていた。しかし商務省によると、2012年末時点でその数は6084社、総資産は1168元、それぞれ前年から16%、34.3%増えた。

Oriental Pawnに金のネックレスを持って入った、小さな葬儀屋を営むWen Shijie氏は「緊急に必要なカネを借りたい」と言った。また親族に借りるより、質屋で借りる方が良い、と述べた。

<「毒」を飲む>

景気が減速する中でリスク融資の取り締まりに動いたことで、政府は自ら難しい状況に陥った。影の銀行を取り締まることは、非国有企業の資金調達環境を一段と厳しくするからだ。

上海交通大学のYan Hong教授は「シャドーバンキングは実は中国経済にとってプラスの役割を果たしている。現在の金融システムはあまり合理的で健全でないからだ」と指摘する。

そんなHong教授も、影の銀行が中小企業の資金不足を補う程度はバランスが崩れてきていることを認める。教授は「毒を飲んで渇きをいやすリスクがでてきている」と述べた。[上海/香港 9日 ロイター]

(Samuel Shen、Michael Flaherty、Pete Sweeney、LawrenceWhite記者;翻訳 武藤邦子;編集 佐々木美和)