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日銀政策判断は来年前半に正念場か、黒田東彦総裁は2%の物価安定目標実現に自信【争点:アベノミクス】

2013年07月14日 17時23分 JST
Reuters

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足元の経済・物価が日銀のシナリオに沿って推移する中、黒田東彦総裁は11日の会見で2%の物価安定目標を2年程度で実現することにあらためて自信を示した。

4月に導入した異次元緩和で目標達成に必要・十分な政策を取ったとの見解もあらためて表明したが、中国を初めとした海外経済動向など先行き不透明感は強い。そうしたリスクが顕在化しないケースでも、消費税率引き上げの影響を含めた景気や賃金の動向などが見えてくる来年前半には、政策判断で正念場を迎える可能性がある。

今回の会合では、4月の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で示した2015年度までの経済・物価の見通しを点検し、「おおむね見通しに沿って推移する」と評価した。

日銀では、4月時点で2015年度の消費者物価指数(生鮮食品除く、コアCPI)の前年比上昇率をプラス1.9%と見込んでいたが、今回も同様の見通しを示し、「見通し期間の後半にかけて、日本経済は、2%程度の物価上昇率が実現し、持続的成長経路に復する可能性が高い」との判断を維持した。

底堅い国内需要に加え、輸出の持ち直しを背景に鉱工業生産が増加基調にあるなど、足元の景気は日銀のシナリオに沿って推移している。

このため金融政策運営も、4月に導入した異次元緩和の効果波及を当面は見極める展開になる可能性が大きい。黒田東彦総裁は会見で、実体経済が順調に回復する中で景気に前向きの循環が働き始めていると表明。期待インフレ率も「明らかに上昇している」とし、2%の物価安定目標は2年程度で「十分、達成できる」と強調した。

ただ、日銀が掲げる見通しは、引き続き民間と大きくかい離した野心的な中身で、実現にはさまざまな条件がそろって相乗効果を発揮する「理想的な姿が必要」(国内金融機関)とみられている。

障害となり得る要因の1つが、減速懸念が強まっている中国を含めた海外経済の動向だ。黒田総裁は会見で、展望リポートを公表した4月時点よりも「内需はやや強めだが、外需はやや弱め。内外需のバランスが若干、変化している」と指摘。会合で中国を含む新興国経済の状況を議論したことを明らかにし、中国経済の減速は、新政権が成長の質を重視した政策を進めている結果と前向きに捉えている。

そのうえで、中国経済は「内需中心に安定成長を続けることが十分に見込める」としながらも、「今や世界第2位の経済大国であり、日本・世界経済への影響は大きい。十分、動向を注視していきたい」と警戒感をにじませた。

中国経済が変調を来した場合の日銀の政策対応には明言を避けたが、市場では金融市場や輸出の急減などを通じ、日本経済に甚大な影響を与えることが懸念されている。

こうしたリスクが顕在化せず、景気がシナリオ通りに推移しても、2年・2%の物価目標の実現性について、来年前半には本格的な議論を迫られる可能性が大きい。

黒田総裁が指摘するように目標の実現には、需給ギャップの改善とインフレ期待の強まりなどバランスのとれた物価上昇が不可欠。

だが、それを持続的なものにするには、出遅れている賃金の上昇が必要となる。総裁は会見で、雇用情勢が改善する中で「雇用者所得全体として伸びを高めていく」としながらも、所定内賃金の上昇には「春闘のサイクルがあり、すぐに上がるのは難しい」と述べた。経済・物価が改善する中で、来年の春闘での賃上げ状況を注視する考えをにじませた。

来年4月には消費税率の引き上げが予定されており、それを織り込んだ賃金や景気の見通しが、日銀が重視する先行きのインフレ期待を大きく左右する可能性がある。

異次元緩和の導入から1年程度が経過するタイミングでもあり、政策効果の波及度合いを含めて、2015年度までの物価目標の実現性とそれに伴う政策判断の必要性の議論が、来年早々にもヤマ場を迎えそうだ。

また、消費増税の実施が決まった段階で、景気下押しのインパクトを最小限に抑制するため、連立与党内部から追加緩和を求める声が出てくる可能性もあり、そうした声に日銀が耳を傾ける選択肢も考えられる。

(伊藤 純夫 編集;田巻 一彦)

[東京 11日 ロイター]