Atlas=全幅58mの人力ヘリコプターが飛んでシコルスキー賞と賞金25万ドルを獲得【動画】

人力ヘリコプター Atlas を開発するカナダ AeroVelo チームが、世界記録の滞空時間64.11秒、最高高度3.3mを達成し、1980年の設立以来誰も条件を満たせなかった『シコルスキー賞』の初の受賞者となりました。全長58メートル、どのように飛ぶんでしょうか...

全幅58mの人力ヘリコプターAtlas、33年間未踏のシコルスキー賞を獲得 (動画)

人力ヘリコプター Atlas を開発するカナダ AeroVelo チームが、世界記録の滞空時間64.11秒、最高高度3.3mを達成し、1980年の設立以来誰も条件を満たせなかった『シコルスキー賞』の初の受賞者となりました。

回転翼機のパイオニアとして航空史に名を残すイゴール・シコルスキー氏を記念して1980年に開始されたシコルスキー賞 ( Igor I. Sikorsky Human Powered Helicopter Competition) は、人力ヘリコプターで「滞空60秒以上、最高高度3m以上、かつ10m四方のエリアから離れない」を最初に達成した者に与えられる賞でした。

1980年に賞金1万ドルで始まって以来、いくつかの試みはあったもののそもそも離陸できる人力ヘリコプターがごくわずかしか制作されず、2009年には賞金額が25万ドルへ引き上げられていました。AeroVeloチームの Atlas は、設立から33年間未踏だった賞金を初めて獲得したことになります。

AeroVelo はこの賞の獲得を狙ってカナダ トロント大学を中心に設立されたチーム。人力ヘリコプター Atlas の開発にあたっては、昨年6月にクラウドファンディングの Kickstarter で約3万4000ドルの資金調達に成功しています。

AeroVelo チームによれば、Atlas の初期設計を開始したのは約1年半前、初飛行に成功したのは9か月前。滞空64.11秒と高度3.3mを達成したテストフライトは今年の6月13日に実施されたもので、審査を経て7月11日に正式な受賞が認められました。

人力ヘリコプター Atlas は、直径20.4mの巨大なローター4つを低速で回転させる方式。機体の全幅は約58mにも及びますが、重量はわずか52kgしかありません。

この巨大な4ローターは、1994年に滞空19.46秒・高度20cmを達成して長らく世界記録を保持していた日本の YURI-I で内藤晃 氏が導入した設計。Atlas と競い僅差で先を越された米メリーランド大学の Gamera II も同じ4ローター設計です。(余談ながら、YURI-I は岐阜県のかがみはら航空宇宙科学博物館で展示されています)

世界初の人力ヘリコプターとしてはカリフォルニア州立工科大学(CALPOLY) の Da Vinci III が、1989年にテザーつきで安定性を補いつつ約7秒の滞空を達成しています。

AeroVelo チームは人力ヘリコプター Atlas より以前から人力羽ばたき飛行機や、空力シェルで覆われたリカンベント自転車 (Speedbike) の Vortex などのプロジェクトを進行中。なお、Atlas の実用(?) 化や市販化予定はありません。

Source:AeroVelo

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