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参院選、自民圧勝で「憲法改正」が現実に? 「改憲草案」の問題点とは【争点:憲法改正】

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A view of the Japanese Constitution. (Photo by John Dominis//Time Life Pictures/Getty Images) | Getty
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自民党結党以来の夢である「憲法改正」。昨年12月の衆院選で民主党に完勝した自民党は、改憲派勢力と手を組むことでその実現を視野に入れ始めた。

そこで問題になるのが自民党が発表している「憲法改正草案」だ。参院選でも自民党の圧勝が予想される中、草案を「一政党の主張」と看過することはできない。それは、現行憲法に変わる「新憲法」になる可能性が高まりつつある。

日本国憲法の看板とも言える前文は全面的に書き換えられ、天皇は象徴から元首となり、21条の表現の自由にも「公益及び公の秩序」という新しい言葉が加えられている。改憲派論者の中からも「やり過ぎだ」という意見が出るほどの大胆な内容で、改正が実現すれば私たちの生活に大きな影響を及ぼすことが予想される。参院選を前にその内容を吟味することは「国民の義務」とすら言えるのかもしれない。

21日の参院選を前に有権者として知っておきたい「憲法改正」の争点を、ハフポスト日本版に掲載されたニュースやブログ記事からまとめて紹介する。

■96条、要件緩和で憲法改正への突破口づくり

安倍首相は憲法改正に向け、96条をその突破口にしようとしている。憲法改正の発議に必要な要件を両議院のそれぞれの総議員の三分の二ではなく過半数にしようというものだ。「イデオロギー」が絡む9条のような議論とは違い、手続き論である96条ならば国民の合意も取りやすいと目論んでいる節もある。参院選公示以降、首相がこの件について発言する回数は少なくなったが、参院選で勝利すれば間違いなく手をつけてくる点に違いない。憲法改正への入り口となる最重要ポイントであり、ハフポストへの掲載本数も多かった。

96条改正についての各党の姿勢の違いは「96条改正とは何か、各党の改正案」で紹介。「自民と維新、憲法96条改正で連携表明 9党幹事長討論会」では、自民党が日本維新の会との関係強化を明言し、連立政権を組む公明党は慎重姿勢で自民と一線を画していることを伝えた。みんなの党は慎重姿勢、民主党など6党はいずれも反対意見を示したとしている。

ブログ記事で田原総一朗氏は「憲法の良し悪しと96条の改正は別の問題だ」で、「問題のある現憲法を、かくも長い間変えられなかったのは、誤りに違いない悲惨な戦争の反省、そして再びあのような愚かな戦争をやってはいけないという強い拒否反応を国民の多くが示していて、自民党の改憲が戦前への逆行と感じられたからである」と指摘した。

神奈川大学准教授・佐橋亮氏は「ゴールデンウィークのワシントン」で、「憲法96条の改正に理解を示す専門家は、誰一人いなかった。言うまでもなく、アメリカで日本を専門とするものには同盟関係者も多いため、彼らは集団的自衛権の行使によって、日米の防衛協力が進展し、また自衛隊の国際活動が増加することに期待をみせてきた。しかし、時の多数派によって容易に変更が可能になる憲法の危うさを感じているようだ」とアメリカ国内での空気を紹介している。

高知新聞記者・高田昌幸氏は「憲法論議の足元で『長いものに巻かれろ』や『自粛』」で、今年の憲法記念日も護憲・改憲双方による激しいぶつかり合いはなかったと指摘。「端的に言えば、護憲・改憲の動きは、「国民的議論」というよりも、現状は「陣取り合戦」だ」としている。

国際大学GLOCOM客員研究員・境真良氏は、「憲法改正をするかしないかじゃないだろう」で、96条の改正を突破口にして憲法の中身を改変すること容易にしようとしている自民党の姿勢には反対としながらも、「そもそも憲法改正に必要な執行上の手続整備を前提として、今よりは改憲しやすくすべきだという方針には賛成である」と主張。

当事者である自民党・石破幹事長は「憲法96条など」で「96条改正を行なおうとすれば、あらゆる論点に応えられなくてはならず、その作業を徹底して行っておく必要がありそうです」とし、あくまで改正を目指す姿勢を明確にしている。

読者からの反応は「その時の政治中枢の一時的な思惑や、一時的な国民の感情で簡単に変っては困る。常に理念に立ち返って、その判断が正しいかどうか冷静に審判出来る必要が有る」など改正に慎重・反対のコメントが多かった。

■9条、タイトルを「戦争放棄」から「安全保障」へ。国防軍も明記。

「戦争放棄」「戦力不保持」「交戦権否認」の三要素を持ち、徹底した平和主義をうたう現行憲法9条「戦争の放棄」。自民党の改憲草案ではこれが「安全保障」というタイトルに変わる。武力の行使は「永久にこれを放棄する」という言葉は消え、「国際紛争を解決する手段としては用いない」は維持された。

最も議論を呼んでいるのが、改正草案の9条の二「国防軍の保持」という内容だ。「安倍晋三首相が憲法9条改正に言及、各党への踏み絵か」で、安倍首相がテレビインタビューで憲法9条の改正に言及したと伝えた。「われわれは(憲法)9条を改正し、その(自衛隊)存在と役割を明記していく。これがむしろ正しい姿だろう」と述べ、自衛隊を軍隊として位置づける必要性を強調したという。この記事には50以上のコメントが寄せられ、改正賛成は18人、反対は7人という内容だった。賛成とする意見は「自衛隊を軍隊として認めるべき」「集団的自衛権の行使または集団安全保障の必要性」の二つに大分された。

軍事ジャーナリストで元自衛官の潮匡人氏は「与野党は正面から憲法を争点にすべし」で、改憲賛成の立場から「自民党に正々堂々、憲法改正を訴えてほしい」とし、9条について「憲法明文の根拠を持たない『自衛隊』をどうするのか、明言してほしい。元自衛官として申し上げる。これ以上、自衛隊をもてあそぶのは、止めてほしい」と訴えた。

■内部からの改正草案への異論に900近い「いいね!」

自民党内部からも改憲草案に対して異議を唱える議員が現れた。「憲法に『家族の助け合い』を入れるべきか?自民党改憲草案に河野太郎議員が反論」では、衆院憲法審査会での自民・河野太郎衆院議員の「家族は助け合うべきであるということは道徳的に正しい。しかし、これを憲法に盛り込むことは違うのではないか」という主張を取り上げた。自民内部からの改正草案への異議は大きな反響を呼び、記事にはフェイスブックの「いいね!」が900近く付いた。

読者からは「憲法は、国家や権力を縛り、国民を守るもの」「家族の在り方は様々であり、そこに国家が必要以上に介入するべきではない」など河野議員の主張を支持が多く寄せられ、コメントを紹介した「自民党・憲法改正草案の第24条 『家族の助け合い』強制に反対する声が続出」も好評だった

■改憲で「許される拷問」が生まれるかもしれない?

自民党の改憲草案には、上記で紹介した96条、9条以外にも徹底的に議論をすべき重要なポイントが数多くある。たとえば、「拷問の絶対禁止」を定めた36条もその一つだ。「自民案の36条から、拷問禁止の『絶対』が消える?」では、改正草案の文言が現行憲法のものから微妙に変化していることに注目した。

「絶対」という言葉が消えることで予想される事態について言及したこの記事については、「たとえ『拷問は絶対に禁止』と定めていても10万人の命を救うためにそれしか方法がなければ拷問が許されないわけがない」というコメントをきっかけに、「もともと拷問という情報を得る方法があるという考え方が間違っている」など賛否両論の議論が始まった。これらのコメントをまとめた「許される拷問などあるのか?」もツイッターやフェイスブックなどで大きな反響となった。

■「ほかの国は何度も改正しているのだから日本も」という自民党の主張は正しいのか?

また、改正の前提として自民党が挙げている先進諸国と日本との憲法改正回数の比較を「憲法改正、ドイツ58回なのに日本は0回 これっておかしい?」で取り上げた。ここでは、戦後60回近く憲法を改正しているドイツの例を紹介してその根拠の薄さに言及した。「ドイツ基本法と日本国憲法は内容が違う。作られた成り立ちも異なるので改正回数だけを比べることは意味がない」などのコメントが多く寄せられた。

■参院選後が議論の山場

参院選でどのような結果が出るにせよ、自民党が「憲法改正」の夢をあきらめることは決してないだろう。改憲派の急先鋒である橋下氏、石原氏を代表に置く日本維新の会の動きも気になるところだ。

公明党は、憲法記念日に「改憲ではなく『加憲』こそ現実的な選択肢」とアピールをし、安倍首相が目指す「96条の先行改正」については慎重姿勢を明確にしている。さらに、「96条が衆参両院とも『3分の2以上の賛成で国会が発議』という高いハードルを課しているのは、日本国憲法が世界各国のほとんどの成文憲法と同様に一般の法律改正よりも改正要件が厳格な「硬性憲法」だからであり、国家権力から国民の人権を守ることに憲法そのものの成り立ちの意味があるとする立憲主義の立場から妥当性がある」と明言し、連立を組む自民党とは距離を取っている。

みんなの党は基本的には改憲姿勢であるが、その前に違憲状態の選挙制度や政党政治の弊害を改善すべきであると主張。「規範やタテマエは、実体やホンネのルールが確立していないと、空回りしてしまう」「戦時体制を賛美し、復古調の古色蒼然たるレトリックを駆使する勢力とは異なる」と自民党を批判する姿勢を取っている。

一方、かつての政権与党・民主党は完全に存在感を失っている。「民主、マニフェストで『未来志向の憲法』掲げる 憲法改正、扱いは小さく」で民主党の政権公約を取り上げたものの、読者からの反響は驚くほど低かった。コメントも「党として、まだリハビリ中なんだろう」「民主党がどれだけ負けるのかが参議員選挙の争点になってしまったようだ」と手厳しいものがほとんどだった。

これらの議論が本格化するのは参院選後だ。私たちが一票を投じた候補者や政党が、彼らを縛るはずの憲法で私たちを縛ることのないよう、しっかりとチェックをしていかなければならない。ハフポストは参院選後も、様々な視点から「憲法改正」を議論するためのきっかけを出し続けていく。

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