「ラマダン侮辱写真」マレーシアのブロガー、懲役8年か

性的な内容のブログを運営していたマレーシア在住のアルビン・タン(陈杰毅)氏とビビアン・リー(李美玲)氏は7月18日(現地時間)、イスラム教を侮辱する写真を「Facebook」に投稿したとして、当局に拘束された。2人は最長で8年の懲役刑を受ける可能性がある。
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性的な内容のブログを運営していたマレーシア在住のアルビン・タン(陈杰毅)氏とビビアン・リー(李美玲)氏は7月18日(現地時間)、イスラム教を侮辱する写真を「Facebook」に投稿したとして、当局に拘束された。2人は最長で8年の懲役刑を受ける可能性がある。

25歳のタン氏と24歳のリー氏はともに無罪を主張しているが、次回の公判が開かれる8月23日まで、保釈が認められないまま収監されることになる。

問題の写真は、2人が豚肉の入った肉骨茶(バクテー)と呼ばれるスープを食べているところを写したものだ。写真には、ラマダン(日本語版記事)と呼ばれる断食に入ったイスラム人に「挨拶」する言葉が添えられていた。

豚肉は、イスラム教徒にとってハラーム(禁忌されるもの)だが、2人はハラール(イスラム法で食べることが許されるもの)のマークを写真に付けていたため、この写真は極めて侮辱的だとみなされた。

2人はユーモアのつもりだったと主張したが、写真の内容に加えて、彼らが「YouTube」で「Sexcussions with Alvivi」(アルビン/ビビアンとセックスの話をしよう)という名のチャンネルを開設し、性的な内容のブログを運営したりして生計を立てていたことから、この写真は非常に無礼で挑発的だと受け取られた。

ポルノは、マレーシアだけでなくシンガポールでも違法だ。タン氏は、シンガポール国立大学法学部の学生として同国に滞在していたときに、ASEAN奨学生の身分を剥奪されたという過去がある。2人の性的なブログが、一般からの激しい抗議を引き起こしたためだ。

2人には、以下の法律に違反した疑いがかけられている。

a)「2002年映画検閲法」第5条に違反して、7月6日~7日にかけてみだらな写真をオンラインで公開した。有罪となれば、少なくとも1万~5万マレーシア・リンギット(約31万2900~156万4000円)の罰金刑、または5年以下の懲役刑が科される可能性がある。

b)刑法第298条A項に違反して、ラマダンを侮辱する投稿を公開し、宗教の異なる人々の間で敵意を増幅させるとともに、調和の維持を損なう行動を取った。これは、2年~5年の懲役刑に相当する。

c)1948年国内治安法第4条(1)(c)項に違反し、侮辱的な言葉によって治安を乱す内容を投稿した。これは、最大5000マレーシア・リンギット(約15万6000円)の罰金刑に相当する。

マレーシアのナジブ・ラザク首相は17日、現地紙「The Star」の取材に対して、「イスラム教を侮辱したこの若いカップルの無作法で不心得な行動は、表現の自由や無責任な意見が共同体を危機に晒す可能性があることを示した」と語っている

2人のFacebookとTwitterのページは現在閉鎖されているが、その内容はすでに閉鎖前に報道機関によって取り上げられていた。2人は「非常に否定的なコメント」が寄せられたという理由でFacebookのページを閉鎖したが、キャッシュされたページを見ると、問題の写真に対する怒りのコメントの一部を確認できる。

MSN」によれば、2人はその後13日に、次のような挑発的なツイートを(英語で)発したという。「お前たちは俺たち(のページ)を閉鎖させることができるかもしれないが、俺たちはこれまでにないくらい強くなって戻ってくる。いまはラマダンを楽しんでくれ、”友人たち”よ」

マレーシアのアブドゥル・ガニ・パタイル法務長官によると、この写真に対する騒ぎは、この問題に関連していると思われる犯罪が起こったことでさらに注目を集めたという。法務長官によると、中国系マレーシア人の男性が、男性グループに誘拐され、衣服を剥ぎ取られて殴られた。彼らはその男性の胸に、「私はイスラム教を侮辱しました」という文章をマレー語で書いてから、男性を解放したという。

2人は拘束前、14日付けで、YouTubeの自分たちのチャンネルにおいて、謝罪の動画を公開している(以下の動画)。

[マレーシアではイスラム教が国教であり、総人口の約65%を超えるマレー系を中心に広く信仰されている。中国系は総人口の約24%を占め、主に仏教を信仰している。マレー系と中国系には緊張関係があり、1969年には、死者196人にのぼる民族衝突事件が起こった。なお、同国には、住民を起訴なしで無期限拘束できる国内治安法がある]

[Yasmine Hafiz(原文/訳:佐藤卓、合原弘子/ガリレオ)]

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