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「あべぴょん」と「カクサン部」に注目 ネット世代(原田謙介さん、春香クリスティーンさん、石垣達也さん)による「ネット選挙反省会」(後編)

2013年07月25日 15時00分 JST | 更新 2013年07月25日 15時28分 JST
宇津宮尚子

日本で初めてネットを利用した選挙活動が解禁された参院選が終了した。果たして、政党や候補者たちはネットを使いこなせていたのか? 若い世代にその声は届いたのか? ネット選挙解禁を支援してきたNPO法人「YouthCreate」、原田謙介さん(27)、「永田町大好き! 春香クリスティーンのおもしろい政治ジャパン」の著者である政治好きタレント、春香クリスティーンさん(21)、慶応大1年で10代の政治関心の向上を目的に活動している学生団体「僕らの一歩が、日本を変える。」の副代表、石垣達也さん(18)に、参院選を振り返っていただく「ネット選挙反省会」。前編に引き続き、後編ではネット選挙の課題を話し合った。

■自民党ゲームアプリ「あべぴょん」や共産党カクサン部が人気

ーーネット選挙で面白いと思った政党や候補者はいましたか?

春香クリスティーンさん(以下、クリスティーン):今回の選挙では、共産党の「カクサン部」が面白かったです。共産党のイメージが変わった感じ。「雇用のヨーコ」とか、かわいらしいピンクのキャラクター作ったり、LINEで流したり。あと、普通のオセロで白と黒をひっくりかえしていくCM動画がありました。「なんだこれは?」って見てたら、オセロの色がどんどん、変わっていって、最後に全部赤くなって「日本共産党」って出てくる。そんなに興味がない人でも見てしまうような、面白みのある動画を作っていました。

自民党も自民党で、ゆるキャラみたいなの作っていたじゃないですか。安倍さんがスーパーまんみたいな格好してて、投票行こうっていうゲーム「あべぴょん」。当確バラを集めると、いろんなコスチュームのあべちゃんをゲットできる。ゆるキャラ的に作っていたから、興味ない人でも普通に見るだけでも面白かった。そういうところで工夫されてましたね。

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石垣達也さん(以下、石垣):「あべぴょん」はけっこう、びっくりしましたね。僕は私服までしか行けなかったです(笑)

クリスティーン:私は全部の服を持ってます(笑)。でも、国対委員長までしか行っていないですよ。

石垣:自民党は、圧勝とわかっていたにも関わらず、あそこまでやっちゃうんだって。僕が個人的に面白いなっていう議員さんは、今回、出馬されなかった民主党の松井孝治さんです。普段は真面目なことをツイートしているんですけど、突然、「ww」を使いながら、「あまちゃん」について話し始めたりしていて、ああいうのを面白いなあと思ったり。

原田謙介さん(以下、原田):僕は一番、予想してなかったのは、マイク使えるはずの朝8時から夜8時までの間に、街頭に出ない時間を作るという選択をされた候補者がいたこと。ネット動画を配信したり、戦略的にされていました。候補者もそうですが、有権者にとってもひとつ新たな選択肢ができたのかなって思いました。シームレスにそういうのを使い分けていくのがいいかなって。

クリスティーン:東京選挙区の山本太郎さんはかなり面白かったですね。街頭もネットもすべての方法を使っていた印象です。

石垣:でも、夜8時以降はネット番組もやらなきゃいけないって、疲弊されている候補者が多かったですね。

クリスティーン:みんな睡眠時間も取れなくって……。民主党の細野豪志幹事長なんて昨日見たら、ものすごいクマになってました。

原田:それから、公明党もすごくうまかったかなと思っていて。イカンザキさん(元代表の神崎武法さん)とかOBが出てきて、ネット番組をやっていました。その間に現役の議員は休めるんだなって。候補者の人は、朝から晩までマイクを持ってまわるということをされていて、戦略的に良かったのかなと思いました。

ーーネット選挙「ここが足りない!」と思ったところはありますか?

原田:投票で迷っている人の観点でいえば、投票日の朝、誰に投票するかスマホで候補者の情報を検索します。その時、候補者のツイッターで最後に出ている情報が「ありがとうございました」ではもったいなくて、「私の政策はこれです」ってばしっと言ってくださらないと、誰に投票するかの指標にならないと思います。結局、ツイッターやフェイスブックで拡散しても、政策に関する発言がなければ意味がない。

クリスティーン:まとめサイトがもっと増えればいいなと思いました。各候補者を見るのはもちろんなのですが、全部見切れない。特に比例代表になるとものすごい数だし、もちろん、参院選の候補者のブログをまとめたサイトもありましたけど、そうじゃなくて、一覧してぱっと見られるような。毎日新聞の「えらぼーと」みたいなマッチングサイトがいくつかありましたが、それに似たような感じだけど、全体的に見られるものがほしいです。情報がいろいろなところにありすぎて、ネットだとそれを見つけ出すのが大変。

原田:そうですね。せっかく候補者がリアルタイムで何かをつぶやいたり、更新したりしているわけなので、政策別にカテゴリに分けて見られるサイトがいいですね。津田大介さんの「ポリタス」が近いと思う。17日間で、この候補者は何を重視したか、経済政策については誰が何をしゃべったとか、せっかくのリアルタイム性なので、それを活かせば判断材料になると思います。

石垣:僕は2年後に選挙権を得た時のことを考えると、ネット選挙はこれから発展していくと思うのですが、投票場所も変えていけばいいんじゃないかなと思っていて。渋谷駅のハチ公前に投票箱があってもいい。そうすれば、ネット選挙の効果があるんじゃないかと思います。

クリスティーン:愛媛県の松山大や沖縄県の大型スーパーでも初めて期日前投票ができるようになりました。ああいう身近なところでやっていれば、投票につながりますよね。

■どうすれば若者は投票へ行くのか?

ーー今回のネット選挙の反省点ですが、期待されていた投票率はふるいませんでしたね。

原田:そうですね。ネット選挙は全体の投票率のアップにはならなかった。少なくとも若い人ほどインターネットで選挙に興味を持ってくれたし、各政党や候補者の「いいね!」数やフォロワー数が17日間の選挙期間中に増えた。でも、もともと若い人で政治に興味ある人は7〜8割。実際に投票にいくのは3割〜4割です。政治に興味関心はあるけど、投票までは行かないという層に訴えられるほどの影響はまだなかったと思います。興味関心がある人は何かきっかけがあれば投票に行きます。まだやっぱり、候補者のツイートになりフェイスブックなり、まだまだ完成されてないのかなと思います。

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ーー投票に行かない若い世代の人たちは、政党や政治家の政策に自分の問題を重ねることはできるのでしょうか?せっかくのネット選挙で情報の送受信はできるようになっても、肝心の情報が若い世代にとって興味ないものであったら、投票率は上がらない気もします。

石垣:若者の政策が少ないというのは、気になるところではあるかもしれないです。10代として思うところは、自分たちの活動は未来の有権者を育てることだけではなく、10代が関心を持つことで、その親たちも投票に行かせたいとう思いがあります。そいういう中で、自分たちは総務省でも政党でもできない活動を、草の根でやっていかなければいけない。でも、宗教と政治の話は怪しいと思われてNGになりがちです。草の根で政治をがんばっていこうという団体も、資金という面で難しい。そういう部分も社会的に認められるようになって活力が出てくれば、みんなの意識が変わって政治につながり、投票につながるというあるべき姿ができるんじゃないかって期待してます。

原田:アメリカだと、若い人の投票率を上げようと活動している団体に企業からの寄付が入るんですよね。若者向けの情報発信というところに話を戻すと、若者といっても、学生か、社会人かで違うし、社会人でも正規雇用か非正規雇用かで違う。何が若者かすごく難しいのですが、年金問題について候補者は、高齢者の人には「もらえます。2年遅れるけど、なんとかなります」っていう話をしますよね。でも、若い人からすると40、50年後にもらえるかどうかです。だから、その候補者が年金政策を本当に安全だと思っているなら、街頭は街頭、ネットはネットで相手の年齢を見て発信の仕方を変えてもらえれば、各政策も変わってくるかなと思います。

石垣:去年、衆院選の時に菅直人元首相の講演会に行ったことがあるのですが、「若者向けの政策はなんですか?」って質問したら、「そういう政策は自分たちで考えてほしい」と言われてしまって(苦笑)。そういう会に来ている若者だから、期待をかけてくれたのかもしれませんが、他の場所でも同じ考えだったら不安だなという部分がありました。候補者がこの人は若者に向けた政策もがんばっているんだよってメディアでも推してくれると、ニュースも見やすくなりますね。

クリスティーン:維新の橋下徹代表は、そういうことをよくおっしゃってますね。でも、だからといって、票がそこに確実に集まるかというのは難しくて。政党が歩み寄ることもありますが、若者から日常的にもっと訴えていかなければいけないこともあると思います。例えば、「若い人も見てるんだよ」ということを政党事務所にメールを送って知らせるだけでも、違う空気になると思います。

私自身、テレビに出たり、ツイッターをやったりしていますが、「投票行きました」って発言すると、「僕も、私も」という返事が多いです。だいたい政治に興味があるから見ている人たちです。そうではない政治に興味がなさそうな人たちが、普段、ツイッターとかで政治的なことをリツイートしてみたりすると、ひとつのハードルを下げられる。今回、総務省がLINEで投票日を呼びかけてるスタンプを出していましたが、それを使ってみたり。「あの子から、こんなスタンプ送られてきた」って選挙に興味を持ってもらえる。そこをもっと活用できたらと思います。

原田:ネットは気軽に発信できるじゃないですか。そういう意味でネット選挙が解禁になって、候補者を「いいね!」する人が、増えたと思うし、春香さんがおっしゃったみたいに、「俺、投票行ったよ」ということがもっと発信されていけば、もっと広がっていくかなと思います。

ーー最後に、ネット選挙について「これだけは言っておきたい!」ということがあればぜひ。

石垣:政治に必要なものは、「民意」とか「リーダーシップ」とか言われると思うのですが、僕は「当事者意識」だと思っています。そのアプローチとして、選挙権をもらう前からそれを持つべきです。そういう意味で、ネットを手段として用いて、政治と若者を近づけることを目標にしたいと思っています。

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原田:今回、ネット選挙解禁が4月に決まった時、参院選が終わったら見直すという条項が書かれていました。そういう意味で今回、ポジティブな影響もあったと思うし、ネット関係の違反が増えたり、選挙運動の最後の方に誹謗中傷がみられたりと問題点はあったと思います。そこはちゃんと精算をして、国政選挙は3年後、地方選挙は常に行われているので、早いタイミングでどうだったか、いろいろな立場から検証してほしいです。

クリスティーン:ネット選挙はどこまで何をしていいのか、非常に微妙だったから食いつきにくいところがありました。それを時間をかけて、明確にしてほしいです。あと、選挙が終わったからといって、LINEも終わり、フェイスブックも終わり、ツイッターも終わりじゃなくて、投票した人は特に自分たちが選んだ道なんだから、それを見守ることにネットを活用してほしいです。テレビやニュースを流れる与野党や国会議員のいろいろな動きは、ネットで分かるのですから、普段からチェックを続けてみてほしいなと思います。

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■原田謙介(はらだ・けんすけ)

東大在学時の2008年、「20代の投票率向上」を目指し学生団体「ivote」を結成。2012年3月に大学卒業後、「政治と若者をつなぐ」をコンセプトに活動を続ける。インターネット選挙運動解禁を目指した「One Voice Campaign」発起人。2013年1月にNPO法人「YouthCreate」を設立。地方議員と若者の交流会「VotersBar」や行政などとのコラボレーションイベントなどを展開中。ブブゼラを購入するほどのサッカー好き。バルカン半島・南アジアなど放浪

ツイッターアカウント https://twitter.com/haraken0814

■春香クリスティーン(はるか・くりすてぃーん)

上智大学文学部新聞学科(休学中)。趣味は、国会議員さんの追っ

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