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痴漢冤罪、なぜ繰り返されるのか? 誤認逮捕を招く3つの条件

2013年08月20日 18時32分 JST | 更新 2014年06月06日 22時15分 JST
足成

なぜ「痴漢冤罪」は繰り返されるのか? 誤認逮捕を誘発する「3つの条件」

電車内で痴漢をしたとして起訴された東京大准教授の男性の「無罪」が8月8日、確定したことがわかった。男性は1審で有罪とされたが、東京高裁が7月25日、逆転無罪の判決を下した。検察が期限までに上告しなかったため、判決が確定した。

各社報道によると、男性は2010年にJR総武線で女性の尻を触ったとして逮捕され、東京都迷惑防止条例違反の罪で起訴された。1審は「犯人の指先をつかみ、手から腕、肩をたどって犯人の顔を確認すると男性だった」とする女性の証言をもとに有罪としたが、高裁ではこの証言を「1審の裁判官が答えを誘導するような聞き方をしていて信用できない」と判断し、無罪とした。

今回のように、痴漢で起訴されたが裁判で無罪となるケースが後をたたない。これまでもたびたび問題にされてきた痴漢の冤罪だが、なぜこうも繰り返されるのか。全国痴漢冤罪弁護団の事務局長を務める生駒巌弁護士に聞いた。

●警察・検察・裁判所は「客観的な証拠」を重視すべき

「まず、痴漢事件、特に満員電車内での痴漢事件には、次のような『誤認逮捕が起きやすい特有な条件』があります。

(1)目撃者がほとんどいない

(2)周囲にたくさんの人がいるので、犯人を誤認しやすい

(3)被害者の女性による私人逮捕であることが多い」

確かに、混雑しだいでは自分の身体がどうなっているのかわからないときすらある。しかし、犯罪にするかどうかは、最終的にはプロである警察や検察がきちんと捜査をしたうえで判断をするのでは?

「残念ながら痴漢事件では、捜査機関は以前から『供述偏重の捜査』をしており、被害者が訴えれば、それ以上の捜査をきちんと行わないという体質があります。

これは本来とは逆の姿です。被害者が犯人を特定するのが難しい状況にあるのだから、本来、捜査機関は目撃者捜しや現場の状況の確保など、『客観的な証拠』をより重視しなくてはならないはずです」

それでも、裁判で有罪になるかどうかは、また別の話なのでは?

「その通りです。しかしこれまでは裁判所も、被害者の供述を重視するあまり、被告人の弁解やそれ以外の客観証拠を軽視する傾向がありました。捜査機関と同様の判断をしてきたわけです。

そのような傾向に対し、最高裁が2009年4月14日に下した、いわゆる『名倉判決』は、控訴審まで有罪だった事件について、逆転無罪を言い渡した画期的な判決でした。最高裁はこの判決で、満員電車内での痴漢事件の特性をあげ、被害者の供述に偏重することなく、他の証拠をきちんと評価することの重要性を述べています」

その名倉判決が出されたのはもう4年も前だ。『痴漢冤罪』は近年、映画の題材にもなるなど社会的にも大きな話題となったが、事態は改善していないのだろうか……?

「残念ながら芳しくありません。その後の下級審の動向をみると、必ずしも、この最高裁の判断手法にはそぐわない、相変わらずの被害者供述中心の事実認定が行われる判決が後を絶ちません。それが、現在も痴漢冤罪が繰り返される大きな原因の一つになっています」

卑劣で悪質な痴漢は決して許すべきではないが、それで冤罪を生み出しては意味がない。痴漢被害者を減らすために、社会として取り組むべきことが、まだ残っているのではないかという気がする。

(弁護士ドットコム トピックス編集部)

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【取材協力弁護士】

生駒 巌(いこま・いわお)弁護士

第二東京弁護士会・全国痴漢冤罪弁護団事務局長、法と心理学会会員。

事務所名: 代々木総合法律事務所