日本の「お好み焼きロボット」で最低賃金upに反対?

8月29日付の『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』紙には、日本製「ロボット・シェフ」の写真を紹介する全面広告が掲載され、論議を呼んだ。

「本日の抗議行動は、経営に対する闘争ではない。彼らは技術に抗しようとしている。最低賃金が15ドルに義務づけられた場合、レストラン側が顧客を失わないように低価格を維持しようとすれば、サービスのコストを下げざるを得ない。そうなれば、簡単な仕事は機械で置き換えられるようになっていくだろう」

8月29日付の『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』紙には、日本製「ロボット・シェフ」の写真を紹介する全面広告が掲載され、論議を呼んだ。

この広告は、最低賃金の底上げに反対する団体が出したもので、「働くロボットはすぐに、賃上げを要求するファストフード店員の代わりを務められるようになる」というコピーが付けられていた(冒頭の画像)。

画像のロボットは、安川電機(産業用ロボットの生産台数で世界1位のメーカー。本社北九州市)が製造した「The Motoman SDA10」だ。

WSJ紙の意見広告を見ると、このロボットは、人間のシェフになり代わって仕事をし、飲食店経営者の肩の荷を下ろしてくれる救世主かと思えるが、米ハフィントン・ポストの取材に対して安川電機のスタッフが語ったところによれば、そうでもなさそうだ。

「SDA10は実際に料理をすることはできません」。同社の小宮路修(Sam Komiyaji)氏は、電話インタビューに対してそう答えてくれた。

同氏の説明によると、広告に使われた写真は、2009年に開催された国際食品工業展で撮影されたものだ。産業ロボットSDA10が、他社製品に比べていかに柔軟かつ巧妙であるかデモンストレーションを行なったのだという。

工業展の開催中、このロボットは、緻密な計算のもとに組み立てられたキッチン内に設置され、あらかじめ混ぜられたお好み焼きの生地を熱い鉄板に流し込み、ヘラで裏返し、皿に盛りつける作業を披露した。

印象的な展示だったが、このロボットはもともと、箱詰めや電子機器の組み立てのような繰り返し作業に最適化されており、料理のような予測できないタスクがたくさん含まれる作業には向いていないのだという。小宮路氏によれば、お好み焼きを作る動きを技術者がロボットにプログラミングするのには2週間が費やされたが、それでも4種類しかつくれないという。

仕様書(英文PDF)によると、このロボットはあらかじめ設定された限られた作業しかこなせないので、お客がハンバーガーのケチャップを余計に欲しがったり、玉葱は要らないとか言った場合には対応できない。さらにこのロボットは、20キログラムを超えるものは持ち上げられない。湿度が90%を上回る環境では内部の重要パーツが作動しなくなるので、厨房での作業は不可能だ。そして、価格は何と1万ドルだ。おまけに、床にボルトで固定された上、作業員が1名横についてオーバーヒートを起こさないよう監視しなくてはならない、と小宮路氏はつけ加えた。

こういった事情があるにもかかわらず、意見広告にMotoman SDA10を採用したEmployment Policies Institute(雇用者寄りの立場をとる米シンクタンク)のリサーチ・ディレクター、マイケル・ソルツマン氏は、この画像の利用方法を支持している。

「広告が何らかの誤解を招くのではないかという意見には全く賛成できない」と同氏は言う。

ソルツマン氏はさらに、サンフランシスコを拠点とする新興企業Momentum Machines社を例に挙げた。同社は、「ストライキも起こさないし賃金値上げも要求せず、1時間に400個のハンバーガーを作るハンバーガー製造マシンを発明している」のだという。

Momentum Machines社は、ひき肉パティや野菜、パンを重ねてハンバーガーを作り、専用容器に詰め込む作業を行なうベルトコンベヤー式マシンを設計している。現在は、試作品を開発し、投資を募っている段階だ。

ソルツマン氏はまた、小売店や食品業界が近年、ファストフード店のセルフサービス用ドリンク・ディスペンサーや、コンビニエンスストアのタッチスクリーン付きセルフレジといった機械を導入し、人件費削減を推し進めている点にも言及した。

「技術はすでに存在しているのだ」と同氏は述べた。

[Eleazar David Melendez(English) 日本語版:遠藤康子、合原弘子/ガリレオ]

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