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2013年09月06日 16時23分 JST | 更新 2013年09月12日 15時26分 JST

オリンピック、東京落選ならアベノミクスの「矢」も折れそう

ロイター

2020年に開催されるオリンピックが東京に決まるのかどうかは、安倍政権の政策運営に大きな影響を与えそうだ。落選の場合には株価下落とともに支持率の低下を招きかねず、消費増税の判断などにも影響を与える可能性もありそうだという。アベノミクスの行方はどうなるのか。

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2020年夏季五輪が東京で開催できるのかどうか──。この点が安倍晋三政権の政策運営に大きな影響を与えそうだ。首相周辺は東京が選ばれる公算が大きく、選ばれれば株価も上昇、「期待」を通じてデフレ脱却を実現するアベノミクスの成功がより確実になると期待する。

一方、落選の場合は株価下落が支持率の低下を招きかねず、消費増税の判断などにも影響を与える可能性がありそうだ。

<決選投票で東京優位との読み>

安倍首相は4日午前、「日本の熱気をIOC(国際オリンピック委員会)の皆さんに伝えて東京招致を勝ち取りたい」と強調した。 ロシアでの20カ国・地域(G20)首脳会合出席とアルゼンチンで開かれる2020年夏季五輪の開催都市を決めるIOC総会への出発を前に、力がこもる表現になったようだ。

開催候補地である東京とマドリード、イスタンブールは接戦が伝えられている。だが、官邸周辺では東京が選ばれる可能性が相当程度高まってきたという強気の見通しが出ている。

イスタンブールは政情不安で不利との見立てが強く、最初の投票でイスタンブールが3位になった場合、その票が2回目の投票で、マドリードではなく、東京に多く流れるとの読みがあるようだ。

<東京決まれば株・支持率上昇、3%増税後押しか>

仮に東京招致が決まれば、短期的には株価の上昇が期待される。大和証券・投資戦略部の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは「東京に決まった場合、(日経平均<.N225>は)1万5600円(終値ベースの年初来高値)を超えてくる可能性がある」とみる。

岡三証券が建設や不動産、観光など五輪関連企業79社の株価の動きを指数化した「東京五輪関連株指数」によると、昨年末からの上昇率は47.2%。日経平均の34.5%を上回っており、五輪銘柄が株式市場を盛り上げている。

実体経済でも波及効果が期待される。東京の2020年オリンピック・パラリンピック招致委員会の試算によると、五輪開催による全国の経済波及効果は、施設建設や地価上昇により20年までの7年間で約3兆円。

7年間合計で国内総生産(GDP)の0.3%程度と、見かけの数字は小さいが、「『クールジャパンの格好の宣伝の場になり、数字に織り込めない経済効果が見込まれる」(野村証券投資情報部の山口正章エクイティマーケットストラテジスト)という。

首相に近い政府関係者の間では、株価上昇やこれらの経済波及効果により、来年4月に消費税を予定通り3%引き上げる場合に懸念される経済へのネガティブな影響をある程度相殺できるとの声も出ている。

そのことで「消費税も上げられる」と、その先を読む関係者もいる。安倍首相に近い別の関係者も「安倍首相の本音は増税延期だろうが、五輪を誘致でき、シリア空爆による世界経済混乱が軽微であれば、3%増税を飲まざるを得ないのではないか」と指摘する。

株価上昇に伴い「政権支持率も上昇する」(シティグループ証券の道家映二チーフJGBストラテジスト)との見方がある。

共同通信によると安倍内閣の支持率は、発足直後の昨年12月調査で62.0%だった。その後、6月調査の68.0%まで60%台を切ることはなかったが、参院選直後に急落。8月24、25両日に実施した最新調査は57.7%と、7月の56.2%からほぼ横ばいだった。

<落選なら株価500円値下がりも>

もっとも、株価上昇の持続性には懐疑的な見方もある。これまでアテネやロンドンがオリンピックの招致に成功した際は、開催国の株価は1カ月から3カ月間値上がりした。ただ「利益確定の売りがかさみ、最短1カ月で失速してしまえば、10月の消費税引き上げの判断に影響を及ぼしかねない」(邦銀)との声もある。

招致に失敗すれば、さらに深刻だ。大和証券の木野内氏は「はしごを外されるかたちで、日経平均は週明けに500円程度値下がりする可能性がある」と指摘する。

実際、東京が開催地に選ばれるか予断を許さない。日本国外では東京電力<9501.T>福島第1原発の放射能汚染水事故をめぐる懸念が大きい。政府は3日に総額470億円の国費投入を決定。汚染水の漏れを防ぐ遮水壁の建設などに取り組む方針を打ち出した。

だが、4日にブエノスアイレスで東京五輪誘致委員会が開いた会見では、海外メディアの記者から出た質問6件のうち、4件が汚染水問題に集中し、海外における汚染水問題への関心の高さをうかがわせる結果となった。

株価が下落すれば、物価連動債と普通国債の利回りの差から算出されるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI、)が連動して低下する公算が大きい。

内閣官房参与の本田悦朗・静岡県立大学教授など安倍首相に近いリフレ派の識者は、BEIを期待インフレ率の指標として重要視しており、低下傾向が続けばデフレ脱却も遠のくとして、増税の幅や時期について、慎重な判断をするよう首相に進言する公算が大きい。

有識者60人の意見を聞いた「集中点検会合」では、7割の出席者が予定通りの来春3%の増税引き上げに賛同を示したが、首相周辺では「想定以上に毎年1%ずつの小刻み増税の提案も多かった」との受け止めが聞かれる。

このため仮に3%増税に「ゴーサイン」を出しても、補正予算と各種減税措置の組み合わせで、来年度の増税インパクトが実質1%程度にとどまるような手法を探るべきだとの声も漏れてくる。

増税幅の変更などは法改正を伴うため、本来は成長戦略を集中議論する予定だった臨時国会が、増税議論一色になる可能性がある。また、与党内には予定通りの3%増税を見送れば、長期金利高騰や株安を招くとして首相の慎重姿勢をけん制する意見も強い。官邸主導で法改正に強引に動く場合、党内政局を招くようであれば、政権運営に不透明感が強まることも予想される。

五輪招致を「アベノミクスの第4本の矢」とみる市場関係者の間では、それが放たれないとなれば「4本どころか3本目の矢も折れそう」(国内証券)と懸念する声がある。

開催都市決定は日本時間の8日午前5時前後。今秋以降の市場動向にとどまらず、安倍政権の「吉凶」を占う上でも目が離せなない。

(ロイターニュース 竹本 能文、山口 貴也 編集;田巻 一彦)

[東京 6日 ロイター]

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