「李コノミクス」なぜ李克強首相は中国経済に自信満々なのか?

中国の李克強首相は夏季ダボス会議で講演し、中国経済の今後の運営について強い自信を示した。「李コノミクス」とも呼ばれる李首相の経済政策は安倍首相のアベノミクスとともに今回のダボス会議では関心が集まった。一部ではシャドーバンキングへの懸念や、中国経済のバブル崩壊の声も上がっている。李首相が強気の発言を行った背景を分析した。
Li Keqiang, China's premier, gestures as he speaks during the opening plenary at the World Economic Forum Annual Meeting of The New Champions in Dalian, China, on Wednesday, Sept. 11, 2013. Li said the foundations of a growth rebound aren't solid while cautioning that stimulus won't help resolve deep-rooted issues in the world's second-largest economy. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg via Getty Imagesg
Li Keqiang, China's premier, gestures as he speaks during the opening plenary at the World Economic Forum Annual Meeting of The New Champions in Dalian, China, on Wednesday, Sept. 11, 2013. Li said the foundations of a growth rebound aren't solid while cautioning that stimulus won't help resolve deep-rooted issues in the world's second-largest economy. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg via Getty Imagesg
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中国の李克強首相は夏季ダボス会議で講演し、中国経済の今後の運営について強い自信を示した。「李コノミクス」とも呼ばれる李首相の経済政策は安倍首相のアベノミクスとともに今回のダボス会議では関心が集まった。一部ではシャドーバンキングへの懸念や、中国経済のバブル崩壊の声も上がっている。李首相が強気の発言を行った背景を紹介する。

李克強首相が中国経済の運営に自信。欧米経済の回復を追い風にバブル封じ込めか?

中国の李克強首相は、大連で開かれている夏季ダボス会議で講演を行い「中国経済のファンダメンタルは良好である」と述べ、今後の経済運営について強い自信を示した。また地方債の状況はコントールできているとして、一部で懸念されている不良債権問題についても管理可能であることを強調した。

中国経済は10%超という驚異的な経済成長から7%台の成長へと鈍化している。このため、高成長で覆い隠されていた経済的、社会的諸問題が一気に噴出するという事態になっている。特にシャドーバンキングと呼ばれる過剰な不動産融資が大量の不良債権を生み出しているとの懸念があり、一部からはバブル崩壊を危惧する声も出ていた。

中国における融資総額は少なく見積もってもGDPの1.7倍近くに達しており、バブル崩壊当時の日本やリーマンショック直前の米国に匹敵する水準になっている。確かにいつバブル崩壊が起こってもおかしくない状態だ。

だが一方で、中国は共産党が独裁的に支配する計画経済の国であり、強権的な手段でバブル崩壊を食い止めることも可能である。その意味で足元の景気動向に市場の注目が集まっていた。

中国の国家統計局が発表した最新の製造業景況感指数は51.0と景気の境目である50を上回っている。中小企業も調査対象に含まれるHSBCのPMIも50.1となっており、景気回復が中小企業にも及んでいることが明らかになっている。

製造業の経営環境が改善しているのは、米国の景気回復に加え、欧州経済がとりあえずの底入れとなったことが大きい。中国は欧米企業の生産拠点となっており、両地域の景気が回復すれば、中国の製造業の状況も大きく改善する。中国は内需にもとづく不動産バブルという爆弾を抱えながらも、欧米景気の回復という外需要因に支えられて、何とか状況を維持していることになる。

李首相の強気の発言は、こうした中国の現状について、より自信を深めた結果と考えられる。中国政府は今後あたらに1億人を農村から都市に移住させる計画を明らかにしている。そのため、バブルへの警戒から一時中断していた大規模な公共事業を一部再開している。また外資に対する投資規制も今後段階的に緩めていく方針だ。

バブル崩壊の懸念が完全に後退したわけではないが、強制的な不良債権処理と公共事業による景気拡大策同時に進め、クラッシュさせることなく、高度成長の膿を処理する腹づもりのようである。しばらくは、こうした綱渡りの経済政策が続く可能性が高いだろう。

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