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「正社員ゼロ」を目指す「改正派遣法」の改正案とは?

2013年09月28日 19時42分 JST | 更新 2014年06月06日 22時31分 JST
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Businessmen working on a computer in the office

厚労省の研究会は今年8月、「改正派遣法」のさらなる改正を睨んだ報告書をまとめた。しかし、その内容は、『正社員ゼロ』を目指すものではないかと弁護士は指摘する。どういうことか?

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「派遣法改正案は『正社員ゼロ』をめざすもの」 厚労省研究会の報告書をどう見るか

「派遣労働」をめぐる制度が、また変わろうとしている。日雇い派遣の原則禁止などを盛り込んだ「改正派遣法」が2012年10月に施行されたばかりだが、厚労省の研究会は今年8月、さらなる法改正をにらんだ報告書をまとめた。同省はこの報告書をもとに議論を進め、2014年にも法改正を目指す考えだという。

報告書では、改正ポイントは以下の3つとされている。

(1)現在の派遣労働は、原則として最長3年で派遣業務が打ち切りになるが、通訳や秘書など「専門26業務」に限っては打ち切り期間がないというルールだ。改正案では、この「専門26業務」という区分を撤廃し、業種で区分する方式そのものをやめる。

(2)これまで派遣期間の上限は「業務ごと」に設定されていたが、「人ごと」に定める。たとえば、いまは「業務ごと」に上限3年とされているため、1人目が2年働いたところで人員交代した場合、2人目の後任者は1年しか働けない。ところが改正案では、「人ごと」に上限が決まるため、1人目が3年働いたら、次に2人目が3年働くといった形で、ずっと派遣労働者を使い続けられるようになる。

(3)従来は「専門26業種」かどうかで、派遣期間が無期限か3年かが決まっていた。だが改正案では、派遣労働者が人材派遣会社とどういう雇用契約を結んでいるかで、派遣期間の上限が変わるとしている。つまり、派遣会社と無期雇用(正社員)契約を結んでいれば、業種を問わず派遣先でも無期限で働けるとした。一方で、派遣労働者と人材派遣会社との契約が有期雇用契約の場合、派遣期間は最長3年となる。

仮にこの報告書の内容が実現すれば、派遣労働はどう変わるのだろうか。派遣労働の実態に詳しく、派遣法の規制緩和に反対する日本労働弁護団の棗一郎弁護士に意見を聞いた。

●派遣労働は「極めて不安定な雇用形態」

「今回の改正は、これまでの派遣労働の在り方を根本的に変えてしまうもので、日本の雇用全体が根底から破壊されてしまう危険があります」

棗弁護士はこう指摘する。どういう意味だろうか。

「まず、派遣労働者の多くは、派遣会社と細切れな有期雇用契約を結んでいます。これは極めて不安定な雇用形態で、派遣先の都合ですぐに首を切られます。

そのせいで使用者に対して文句が言えず、団結して労働組合も作れません。派遣先に団体交渉を申し入れても拒否されるので、労働条件や処遇の改善もできません。

さらに、生涯ほとんど賃金が上がらないし、キャリアアップもありません。つまり、たとえ正規雇用の労働者と同じように働いても、一生報われない働き方だと言えます」

●派遣労働は「特別なケースで例外的に許されるべきもの」

棗弁護士は、派遣労働者の立場が非常に弱いことを強調したうえで、次のように続ける。

「本来の雇用のあり方は、働く先と直接、無期雇用契約をむすぶ『正規雇用』が原則です。一方、派遣労働というのは、一時的・臨時的な業務または特別の専門的業務に限り、例外的に許されるものです。

したがって、これまでの派遣法は基本的に、常用的にある仕事(雇用)を派遣労働で置き換えることを防止するという考え方で作られてきました。決して正社員だけを保護する目的ではありません」

●「改正案では『派遣労働』が例外ではなくなってしまう」

「ところが、今回の報告書の改正案は、1985年の法制定以来、堅持されてきたその基本的な考え方を捨てて、派遣という不安定で低賃金の働き方を例外ではなく、『普通の働き方』に変えてしまおうという内容です。

つまり、使用者(企業)が、派遣労働者をもっともっと利用しやすくしようという内容で、使用者側だけが得をする改正です」

もしこれがそのまま法律になれば、雇用はどのようになると考えるのだろうか。

「連合が批判しているように、今回の改正案は『正社員ゼロ』を目指すものです。派遣労働者は一生、派遣という立場に留まり、賃金も低いまま固定化されます。

このままだと、『1%の正社員と99%の派遣・非正規労働者』という社会になりかねません。このように日本の雇用を破壊するような派遣法の改悪は断じて容認できないと言えます」

棗弁護士はこのように結論づけた。現在、政府では職務を限定した形の無期雇用である「限定正社員」案も検討している。そういった動きも含めて考えると、いま「日本の雇用」は、大きな岐路に立っていると言えそうだ。

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【取材協力弁護士】

棗 一郎(なつめ・いちろう)弁護士

第二東京弁護士会所属。1996年弁護士登録。旬報法律事務所所属(弁護士25名)。日弁連労働法制委員会事務局長。日本労働弁護団常任幹事

事務所名: 旬報法律事務所

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