「ネット最大の闇市場」摘発:容疑者は「感じのいい29歳」

彼は、オンラインでは「ドレッド・パイレート・ロバーツ」という名で知られ、当局が「インターネットで最も精巧かつ大規模な闇市場」と呼ぶサイトを運営していた。

彼は、オンラインでは「ドレッド・パイレート・ロバーツ」という名で知られ、当局が「インターネットで最も精巧かつ大規模な闇市場」と呼ぶサイトを運営していた。

米連邦捜査局(FBI)が10月2日(米国時間)に提出した刑事告訴状(PDF)によれば、ロス・ウィリアム・ウルブリヒト容疑者は、12億ドルを売り上げる大規模な闇市場を運営していた。しかし、質素な生活を送る29歳の人物で、サンフランシスコにある月1000ドルの家賃の部屋を2人のルームメイトとシェアしていた。

FBIは2日、サンフランシスコの公共図書館にいたウルブリヒト容疑者を逮捕し、彼のウェブサイト「Silk Road」を閉鎖したと発表した。このサイトは、違法な薬物のほか、コンピューターをハッキングするためのツール、その他の違法な製品およびサービスを取り引きできる市場として賑わっていた。

Silk Roadは世界中の麻薬売人が利用していた闇市場で、大量のマリファナ、ヘロイン、LSD、およびコカインが匿名で売られていたと、FBIは告訴状の中で説明している。

9月の時点で、このサイトにはおよそ1万3000の違法な麻薬リストが、「幻覚剤」、「興奮剤」、「大麻」などのカテゴリに分けて掲載されていたと告訴状には書かれている。告訴状によれば、FBIは捜査の過程で、おとり捜査官を使って、10ヵ国のSilk Roadの売人から100回以上麻薬を購入したという。

さらに、サイバー犯罪者らはSilk Roadを利用して、偽りの身元情報を作る方法の解説書、コンピューターをハッキングするためのツール、盗み出したNetflixやAmazonのアカウントを販売していた、と当局は述べている。現在このサイトは閉鎖され、FBIなどによって差し押さえられているというバナーが掲示されている(リンク先にスクリーンショットあり)。

ウルブリヒト容疑者がこのサイトを開始したのは2011年1月で、「ドレッド・パイレート・ロバーツ」というオンライン・ネームを使っていた。FBIによればこの名前は、『プリンセス・ブライド』という名の、映画にもなった小説に登場する架空のキャラクターから取ったようだ。

当局はSilk Roadの存在を数年前から知っていた。チャールズ・シュマー上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は2011年の段階でこのサイトについて、「違法なドラッグのワンストップ・ショップ」であり、「これまで見られたことのない規模で堂々と違法ドラッグ等を販売している」と指摘していた。

FBIによれば、ウルブリヒト容疑者は、自分自身、およびSilk Roadユーザーの身元を隠すために、インターネット・トラフィックを世界中のコンピューターに経由させることで匿名化するネットワーク「Tor」を使用していた。また、事実上追跡が不可能な電子マネーである「Bitcoin」ですべての取り引きを行わせることで、匿名性をさらに高めていた。

ウルブリヒト容疑者は、ある人物からSilk Roadユーザーの名前を暴露すると脅された際、他のSilk Roadユーザーに、お金と引き換えにその人物を殺害するよう依頼したとされる。ただしFBIによれば、この委託殺人が実際に行われたことを示す証拠はないようだ。

FBIの告訴状には、ウルブリヒト容疑者のLinkedInのプロフィール情報についても書かれている。これによれば、同容疑者は2006年にテキサス大学ダラス校を物理学の学位を取得して卒業し、その後ペンシルバニア大学の材料科学技術大学院に通っていたという(LinkedInページには、ペンシルバニア大学の材料科学技術大学院ではなく、ペンシルバニア州立大学と書かれている)。

FBIによれば、ウルブリヒト容疑者はLinkedInプロフィールで、大学院を終えたあとに「進路を変更」し、人々に「社会制度や政府」による力を利用せずに生きるという経験を「直接経験させる」ことにフォーカスを置くようになったと述べているという。

ウルブリヒト容疑者の母親リン・ラカヴァはロイター通信に対し、「息子は才能のある、理想主義的で善良な人間です。彼がほかの誰かを傷つけることは絶対にないとわたしは知っています」と述べている

Satellite Connections

「シリア:政府によるネット規制を逃れる方法」

[Gerry Smith(English) 日本語版:佐藤卓/ガリレオ]

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