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「財政黒字化なんてムリ!」安倍首相の法人税減税案で政府与党の駆け引きが激化か【争点:アベノミクス】

2013年10月10日 21時21分 JST | 更新 2013年10月11日 15時07分 JST
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Shinzo Abe, Japan's prime minister, gestures during a news conference at the prime minister's official residence in Tokyo, Japan, on Tuesday, Oct. 1, 2013. Abe proceeded with an April sales-tax increase and will implement a stimulus program as he tries to rein in the world's biggest debt burden without jeopardizing efforts to end deflation. Photographer: Haruyoshi Yamaguchi/Bloomberg via Getty Images

安倍首相が検討するとした「法人税減税」をめぐり、政府与党の間での駆け引きが激化しそうだとの見方が強まっている。法人税減税による税収減が、政府の財政健全化目標に大打撃を及ぼすとの考えもあるからだ。どういうことだろうか。

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法人減税の急浮上によって、政府内部の財政をめぐる綱引きが激化

安倍政権が消費税の増税と、これに対応した総額5兆円の経済対策を発表したことで、政府内部で財政再建と経済対策をめぐる綱引きが激しくなってきた。当初、投資減税と復興特別法人税の前倒し廃止にとどまると見られていた減税措置に、法人税の実効税率引き下げが加わってくる可能性が出てきたからだ。

法人税の実効税率の引き下げは、与党が合意した税制改正大綱の中で「今後、速やかに検討を開始する」と明記された。あくまで検討であり実施が決まったわけではないが、安倍首相は来年度からの実施にかなり前向きとされる。

だが財務省や与党の一部からは慎重が声が上がっている。法人税の減税は恒久的な減税となることから、財政再建にとってマイナスとなるからだ。

麻生財務大臣は、2014年度予算編成について「4兆円の基礎的財政収支(プライマリーバランス)改善が最大の目標である」と述べ、早くも来年度の予算膨張を牽制した。

日本政府は、2015年度に基礎的財政収支のGDP比を半減させ、2020年度までの黒字化を目指している。そのためには、2014年度予算では約4兆円、2015年度予算では約3兆円ほど、財政収支を改善する必要がある。麻生氏の発言はこうした流れを受けたものだ。

2014年度予算は現在、概算要求に対する財務省の査定が行われている最中である。今回の概算要求は消費税の増税が正式決定されない中で行われたため、変則的な手法が用いられた。増税がない場合を想定した要求額に加え、増税が決定した場合に備えた「要望枠」が設定された。この要望枠は事実上、消費税対策のバラマキ予算となる。

概算要求の総額は73.9兆円となっており、昨年度よりも3.6兆円増加した。国債費を加えた予算全体は99.2兆円となっており、このまま通れば、かなりの大型予算である。

今年の日本経済は大型の公共工事の影響で大幅なプラス成長となっている。このままいけば今年度の税収は、昨年度より6兆円多い53兆円ほどを見込むことができる。だが要求額も大きいため、基礎的財政収支は3兆円しか改善することができない。残り1兆円は査定の段階で削ってしまうか、別に財源を確保するか、あるいは4兆円の改善目標を取り下げるのかの選択となる。

現在の財政計画では2015年の基礎的収支半減は何とか実現が可能だが、2020年の黒字化はかなり困難である。ここに法人税の恒久的な減税が加わるとなると、政府目標の実現はほぼ不可能になると考えてよい。

安倍政権では、大型公共工事の効果が消滅する来年度は景気が大きく落ち込むと予想している。このため、一部からは消費税10%への増税は先送りすべきとの声が早くも上がっている。安倍氏も支持率を維持するという政治的判断からこのプランに乗る可能性は少なくない。財務省はそうした事態を危惧している。

最大の問題は、現在の景気回復が、公共工事という財政出動に伴うものであるという点だ。だが現在の日本の世論や経済体力では、痛みを伴う改革は実施しずらい。景気を維持しようとすると財政収支が悪化し、財政を優先させれば景気が悪くなるという板挟みだ。

財政再建目標の最初の期限である2015年が近づいていることから、財政をめぐる政府与党内の駆け引きは、今後ますます激しくなってくるだろう。

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