いまだに続く福島第一原子力発電所をめぐる惨事から、アメリカはどんな教訓を得られるのだろうか。原発専門家や政治家、活動家らが10月8日(米国時間)、ニューヨーク市でシンポジウムを行なった。

参加者らは、問題の多い原発技術に終止符を打つか、あるいは少なくともその安全性を向上させるにはどうしたらいいか、自らの意見を述べた。同様のメルトダウンを米本土でも引き起こす可能性のある要因についての懸念も表明された。

The Fukushima Daiichi Nuclear Accident: Ongoing Lessons(終わりの見えない福島第一原子力発電所事故から学ぶべきこと)」と題したこのイベントは、反原発を訴えるカリフォルニアのNPO団体サミュエル・ローレンス財団が企画。日本の元首相である菅直人氏、米原子力規制委員会(NRC)の元委員長であるグレゴリー・ヤツコ氏、そして米国の社会活動家ラルフ・ネーダー氏などが参加した。

事故当時に首相を務めていた菅氏は今回の講演において、かつては自らが支持していた原発技術に対して厳しい発言を行った。同氏は、通訳を介してこう語った。

「私自身、3・11の事故が起きるまでは、原発については安全性をしっかり確認した上でそれを活用する。そのことを、私自身もそうすべきだと考え、そういう立場で臨んでおりました。しかし、3・11の事故を経験してから、私は考え方を180度変えました。飛行機事故や他の事故で、何百人という人が一度に亡くなることはあります。しかし、5000万人もの人が逃げ出さなければならなくなるといった事故は、戦争以外では、この原発事故を除いてはありません」

菅氏は続いて、津波とメルトダウンに対して日本がとった対策、ならびに、日本政府による他の原発の運転停止計画(リンク先は、2013年9月に大飯原発4号機が停止し、稼働原発が再びゼロになったことを伝える記事)について詳細を語った。

また、ドイツが原発の廃止を決定し、すべての電力を再生可能エネルギーで供給するという画期的な目標を掲げた点に触れ、称賛の言葉を送った。

「(私も、世界中の再生可能なエネルギーの現場を見てきましたけれども)十分に各国が努力をすれば、再生可能な資源エネルギーのみで、人間が必要とするエネルギーの供給、電力の供給は可能だと、こう確信しております」

現在、米国には稼働可能な原発が65基存在し、その発電量は国内総電力の20%を占めている。しかし、ギャラップ社の調査によると、原発を推進すべきだとするアメリカ人はわずか37%にとどまる。

福島第一原発でメルトダウンが起きた当時、NRC委員長を務めていたヤツコ氏は、危機に対するNRCの対応を批判した。原発業界や政府機関の間では、福島のような事故は「米国では決して起こり得ない」という意見が大半であり、米国の安全基準の再評価もせずに原発を推し進めようという姿勢だったという。

「私にとっては全く考えられない話です。事故当時、原発をさらに推進しようという多大なプレッシャーが存在しました。そして、一度立ち止まって原発の安全性を見直すべきだという動きは、業界側にはほとんど見られなかったのです」とヤツコ氏は述べた。

「我々は次世代の原発について考えるべきです。このような問題に直面せずに済む原発、過酷事故を起こさない原発に取り組もうではありませんか。多数の欠点を抱えたこの技術を、なぜ推進し続けなければならないのでしょうか」と同氏は続けた。

反原発を熱心に訴える活動家であるネーダー氏はさらに踏み込んで、ニューヨーク近郊にあるインディアン・ポイント原子力発電所に対する抗議活動に参加するよう、出席者に呼びかけた。同原発は、ニューヨーク市から北へわずか56キロメートルしか離れておらず、大きな問題となっている(福島第一原発事故の直後、米国政府は日本にいた米国民に対して、半径50マイル(約80キロ)圏内からの避難を勧告。この前例に従えば、ニューヨーク市などから約2000万人規模の住民が避難を余儀なくされると指摘されている。ただし、米当局がインディアン・ポイント原発に関して示している「事故時の避難対象区域」は半径10マイル(16キロメートル)となっている)

ネーダー氏は、一時的に「化石燃料」にシフトしてでも、同原発を即時閉鎖すべきだと訴えた。ネーダー氏による主張は、菅氏が講演の最後で述べた次の言葉と共通するものだ。

「原発事故をゼロにする方法はただひとつです。それは、すべての原発をなくすることだ、と。それは国民の力によってなくすること、それしかないと私は信じております」

シンポジウムの様子を紹介する冒頭の動画は、今後30日の間、視聴可能だという。

[Nick Visser(English) 日本語版:遠藤康子/ガリレオ]

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