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特定秘密保護法案、適正評価制度で「内心の自由」を侵害【争点:安全保障】

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(画像はイメージ)特定秘密保護法案、民間人への適正評価制度で「内心の自由」を侵害 | Getty
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秘密保護法案の「適性評価制度」 一般国民の「プライバシー」を侵害するか?

この秋の臨時国会で、政府が成立を目指す「特定秘密保護法案」。外交や防衛、スパイ活動やテロ活動の防止など、主に安全保障に関する情報の保護が目的で、情報漏えいの罰則強化や、そのような情報を扱う人物への「適性評価」の実施といった内容が盛り込まれている。

同法案は「知る権利など基本的人権を脅かすものだ」として批判され、2年前に法案提出が見送られた「秘密保全法」の焼き直しだと、各所から懸念の声や反対の表明が相次いでいる。9月に公募されたパブリックコメントには約9万件の意見が寄せられたが、うち約8割が法案概要に反対するものだったという。

今回注目したいのは、法案の「適性評価」に対する懸念だ。適性評価は特定秘密を取り扱う国家公務員や民間人に対して行われ、本人の犯罪歴や経済状況、精神疾患などはもちろん、父母や子、配偶者とその父母などの家族の氏名、年齢、国籍、住所などの個人情報が調査される可能性がある。

こうした調査に対して、日本ペンクラブは意見書で「プライバシー侵害の領域に踏み込むもの」と述べ、日弁連会長も法案への反対声明のなかで同様の懸念を示している。特定秘密保護法が成立した場合、一般市民のプライバシーが侵害される可能性があるのだろうか。日弁連・秘密保全法制対策本部の副本部長をつとめる井上正信弁護士に聞いた。

●特定秘密を取り扱う者の「適性」を評価する制度

「特定秘密保護法案の柱の一つが、適性評価制度です。この制度は、特定秘密を取り扱わせる国家公務員等の適性を評価する制度です。対象者は、国家公務員や都道府県警察職員のほか、国との契約関係にある民間会社や大学、研究機関職員などです」

どのようなことを調査して、評価をおこなうのだろうか。

「まず、特定有害活動やテロ活動に関する事項が調査されます。特定有害活動とは、外国の利益を計る目的で、我が国の安全保障に支障を与える恐れがあるものを取得したり、大量破壊兵器とその運搬手段に関わるものの輸出入を行ったりする活動のこととされています。さらに、犯罪歴や薬物乱用歴、精神疾患歴、飲酒癖、借金情報などが調べられます」

このような事項について、評価対象者の知人をはじめとする関係者に質問したり、公務所や公私の団体に照会するといった方法で、調査をするのだという。つまり、調査対象は、適性評価の対象者だけではないのだ。

「調査対象となるのは、評価対象者だけではなく、その同居人や配偶者、父母・子・兄弟姉妹・配偶者の父母とその子と広範囲に及びます。たとえ親族関係がなくても、同居している恋人や内縁の配偶者は調査対象となります。このような人たちの氏名や生年月日、国籍が、国家の手で調べられることになるのです」

●評価対象者の「内心の自由」にまで踏み込む恐れ

この適性評価制度の問題点について、井上弁護士は次のように指摘する。

「適性評価制度は、評価対象者の周辺の広範囲な市民や団体が対象になるわけです。調査事項を考えれば、評価対象者の知人や評価対象者が所属する団体の思想傾向や宗教まで調べるかもしれません。

以前、警察庁が国際テロの疑いで、日本在住のイスラム教徒と団体を調査した資料がインターネットに流出して問題になった事件がありました。適性評価制度における特定有害活動やテロ活動に関する調査も、思想信条調査にならない保証はありません」

井上弁護士は続けて言う。

「このような調査は、評価対象者の同意を得て行うことになっていますが、上命下服の関係にあれば、その同意は形式的なものになるでしょう。結果的に、評価対象者の内心の自由にまで踏み込んでプライバシーを侵害することになります。

また、行政機関が評価対象者以外の広範囲な市民や団体について、個人情報を調査収集することは、重大なプライバシー侵害といえます。思想信条の自由や信教の自由は、民主主義社会では最も重要な基本的人権です。適性評価制度は、国家秘密漏えいの防止を理由にした基本的人権侵害の制度化です」

●秘密漏えいを防ぐ効果が本当にあるのか?

問題はこれだけではないという。

「このような制度で、秘密漏えいを防ぐ効果は期待できません。法案の元となった有識者会議の報告書で、法案の必要性を根拠づける過去の秘密漏えい事件が検討されていますが、それらはいずれも、適性評価制度が想定している原因とは無関係でした」

このように適性評価制度の問題点を説明したうえで、井上弁護士は次のように指摘している。

「評価対象者やその周辺の市民のプライバシーを侵害する制度の運用には相当の予算と人員を要するはずですが、そこまでしても、特定秘密漏えいの防止に役立たないとすれば、いったい何のための制度になるのでしょうか。ひょっとして、漏えいがあった際の行政機関の言い訳に使われるのではないでしょうか」

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【取材協力弁護士】
井上 正信(いのうえ・まさのぶ)弁護士
1975年弁護士登録、広島弁護士会所属、日弁連憲法委員会副委員長、同秘密保全法制対策本部副本部長、著書「徹底解剖秘密保全法」(かもがわ出版)、その他憲法問題、安全保障防衛政策に関する論文多数。
事務所名: 尾道総合法律事務所

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