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「福島第一原発を分社化すべき」コンサルタントの伊藤敏憲氏が強調

2013年10月21日 18時43分 JST | 更新 2013年10月21日 21時10分 JST
Reuters

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エネルギー産業分析で著名なコンサルタント、伊藤敏憲氏はロイターのインタビューで、「東電を今のままで維持すると経営がもたない」と指摘したうえで、「福島第1原発を東電から切り離し、国の直轄事業化とすべき」と強調した。

具体的には政府直轄となった福島の事故処理に関する全費用を、他電力も含めた原子力発電事業の収益で賄い、柏崎刈羽原発は東電が運転すべきと述べた。将来的には、廃炉や放射性廃棄物処理、核燃料サイクルなど関わる「バックエンド事業」については、国内全ての原発を対象に政府の直轄事業にすべきとした。

また、「国は、全て東電に事故の原因があるという対応で、スケープゴートにした」などと、現行スキームを策定した民主党前政権を批判。「東電は救済しないといけない」と指摘した。

さらに同氏は、「(バックエンドの)費用負担だけは将来も残る。本来はキャッシュを生める原発を動かさないと、何らかの形で国民負担に回る。それは合理的な判断ではない」などと話した。

東京電力<9501.T>の広瀬直己社長は昨年11月、福島第1原子力発電所の事故に伴う賠償、廃炉、除染といった「負の遺産」について「一企業の努力では到底対応しきれない」と、政府による支援の枠組みの見直しを訴えた。

同氏が示したアイデアは、東電の考え方と親和性があり、原発推進の立場である東電や経産省の理解を得やすいとみられる。

伊藤氏はUBS証券アナリストなどを経てコンサルタントとして独立。電力業界や経済産業省に太いパイプを持ち、高い専門性を駆使した分析で知られている。

インタビューの主な内容は次の通り。

──自民党の有力議員から東電の経営形態の見直し議論が出ている。福島事業の分社化、「廃炉庁」案なども出ているが、最近の動きをどうみるか。

「東電を今の形態のままで維持すると経営はもたない。破綻が現実となる可能性もある。政治家の一部には東電を破綻させるべし、あるいは政治家以外にもそういうことを主張する方がいるが、極めて危険だ」

「破綻により全ての原子力事業者にも同様のリスクがあると評価される可能性があり、(電力会社に)カネが回らなくなる。問題は社債・クレジット市場だ。東電破綻によって無限大のリスクが発生する可能性が生じるから、(電力会社への)融資は極めて難しくなる。 東電解体論を主張している人は東電しか見ていない。東電の破綻だけではすまない。電気事業全体がこの影響を大きく受ける。仮に資金調達できたとしてもコストが間違いなく跳ね上がる」

──福島第1を切り離した東電は賠償、廃炉、除染の負の遺産を免れるのか。

「いや、負う。(廃炉などの)費用はフロントエンド事業(=原発の発電事業)で負担する。東電は事故当事者として責任を認めているので、その費用を払ってもらう。一連の原子力政策の見直しの中で、福島以外にも廃炉になる原子炉が出てくる可能性がある。政策変更による判断なので、福島第1だけでなく将来的にはバックエンド全体を国の直轄事業にすべきだと考えている。その費用はフロントエンドのキャッシュフローの中から全額ねん出して、東京電力だけではなく、他電力を含めた原子力事業全体で負担する仕組みを考えるべきだ」

──政治的には「東電救済だ」と言われるのではないか。原発事業の収益で負担するのが東電だけではないとなると、他の電力会社の同意も必要だが。

「東電は救済しないといけない。というのは、今の負担は東電が耐えうる額をはるかに超えている。それが(最終的に)どういう形になるかというと、関東地区の電力需要家に負担が強いられることになる。健全だと思えない」

「他電力の同意は必要になる。ぎりぎりの提案だが説得できると考えている。東電の負担が最も重くなるようにすればよい。結果的には(全国の)電気料金に跳ね返ってしまうことがあるかもしれないが、少なくとも現状よりは公平性が高い」

――東電から福島第1を切り離して受け皿となる組織の性格は。行政組織なのか、国も出資する半官半民の組織か。

「行政や政治が判断して、折り合いが付く段階で決めればよい。国が全額出資する組織にする、国と原子力事業者が折半する、民間事業者の組織にするのか、いろいろな方法はあると思うが、国に責任を分担させるために、国が全額かあるいは過半を持つべきではないか」

――柏崎刈羽原発は東電が運転すべきか。中部電力<9502.T>や東北電力<9506.T>に柏崎刈羽を移管することはできないか。

「柏崎刈羽は東電が運転すべきだ。東電が負う福島関連の費用は、実質上、未来永劫に近いかもしれない。負担を負わせるためには東電に十分なキャッシュフローを持たせないといけないが、それができるのは柏崎刈羽だ。東電から柏崎刈羽を切り離したら、福島の負担を支払う能力がなくなるか、大幅に減る。それこそ東電を負担から切り離してしまうことになる。彼ら(中部電や東北電)に柏崎刈羽をやる気はまったくない」

「原子力事故の後始末は原子力でつけさせるのが私の考え方。一部に送配電事業に負担させろという考え方もあるが、そうすると原子力に関係ない新規事業者を含めて負担することになるので、納得を得られないと思う」

──原発を当分の間、使うことが前提のスキームだ。原子力推進体制の温存ではないか。

「原発を使わないと費用がねん出できない。脱原発でいっせいに全部やめようとすると、本来はキャッシュを生めるものがすべて負の遺産になる。脱原子力はできなくはないと思っているが、(将来も)費用負担だけは残る。キャッシュを生めるはずのものを動かさない形にしてしまうことなので、その分、電気代に跳ね返るか、何らかの形で国民負担に回る。それは合理的な判断ではないと思う」

──国がバックエンド事業に責任を持つとして、(難題の)高レベル放射性廃棄物の最終処分場をどう確保するのか。

「少なくとも民間事業会社がやるより見つけやすい。国対国の交渉もできる」

──高レベル放射性廃棄物を外国に持っていくということか。高くつきそうだが。

「(外国に移管も)1つの方法だが、中間貯蔵で少なくとも数十年、100年単位で引っ張ることは可能。(高レベル放射性廃棄物に処分前の使用済み核燃料の貯蔵は)機械的な部分が全くなく、放射性物質が大気中に放散されるわけではないので、それほど危険ではない。(国外に出すと)コストは掛かるが、これは国の政策であり、国対民間では交渉にならない。国が役割を果たしていただきたい」

(インタビュアー:浜田健太郎、アントニー・スロドコフスキー

インタビューは17日に実施しました)

(浜田 健太郎 編集;田巻 一彦)

[東京 21日 ロイター]

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