日本の「セックスしない症候群」をBBCが特集

BBCが制作し、10月24日(英国時間)に放送予定のドキュメンタリー番組『No Sex Please, We're Japanese』(セックスはナシ、我々は日本人です)は、日本に住む若い男女のセックスをめぐる状況について扱っている。

BBCが制作し、10月24日(英国時間)に放送予定のドキュメンタリー番組『No Sex Please, We're Japanese』(セックスはナシ、我々は日本人です)は、日本に住む若い男女のセックスをめぐる状況について扱っている。

ジョークじみたタイトルに騙されてはいけない。これは、日本政府も重大視する非常に深刻な問題だ。「The Observer」に最近掲載された記事でも、日本には「セックスしない症候群」が広まっていると指摘されている。

The Observerの記事を書いたアビゲイル・ハワース氏によると、「日本の40歳以下の人たちは、従来の男女関係に興味を失いつつある」という。「何百万人もの人たちがデートすらせず、セックスにまったく関心を持たない人も増えている。(中略)日本の出生率はすでに世界最低の水準にある。日本の現在の人口は1億2600万人だが、ここ数十年は減少傾向にあり、2060年までには現在の3分の2を下回ると予測されている」

1970年には35歳から39歳の女性で結婚していない人は5%程度だったが、2005年にはその率は20%程度になっている

状況は複雑だ。人々はセックスをしたがらないが、問題はそれだけではない。BBC番組を制作したアニタ・ラーニ氏によると、現在も保守的で伝統を重視する日本社会では、子どもを持つ女性には一つの選択肢しか残されていない。それは、仕事を辞めて二度と職場には復帰しないというものだ。これまでの日本人女性はそういう事態に満足していたかもしれないが、現代の女性たちはそうではない。

「日本はアジアの国だということを思い出す必要がある。表面的には現代的だが、そこに暮らす人々は保守的なのだ。日本に行けば、そこら中で利用されているハイテク技術に圧倒されるだろう。しかし、日本人の生活を深く観察していくと、人々は伝統的で、結婚した女性は家事と子育てに専念するものと期待されていることがわかる。女性が出産して仕事を辞めた後、再び働き始めるための仕組みが整備されていないのだ。これは大問題だ」と、ラーニ氏は述べる。「この世代の日本人は、『セックスしないこと』を選択したが、これは日本でしか起こりえない奇妙な現象だ」

特に重要な問題として、日本の女性と男性がそれぞれ非常に異なる人間に変化しつつあるということが挙げられる。ラーニ氏によると、取材した女性たちは「非常に積極的な」人たちで、男性たちよりも仕事のスキルが高かったという。だが、そうした女性たちが社会で活躍していく一方で、自分の殻に閉じこもり、主導権をとりたがらない男性たちが出現している。「言ってみれば、男性たちは去勢されているが、それは彼ら自身が望んでのことだ」とラーニ氏は述べる。

日本を取材中のラーニ氏。

ラーニ氏は同番組で、2人の「オタク」男性を取材した。ここでいうオタクとは、漫画やビデオゲームに熱中している人たちを指す。2人には「仮想のガールフレンド」がいた(一方の男性は実在の女性と結婚していたのだが)。彼らは30代後半で、毎日会社のために一日中働いている従来の日本人サラリーマンのあり方に強く反発していたと、ラーニ氏は述べる。

「従来の労働倫理は、日本の戦後復興の原動力となったが、今日ではそれが日本の足かせになっている。日本経済は過去20年にわたり停滞を続けている。その間、親が必死に働く姿を見た若い世代の人たちは、『同じような生き方はしたくない』という考えを持つようになったのだ。この2人のオタク男性たちの状況も深刻だ。結婚している方の男性に、実在の妻と仮想のガールフレンドのどちらを選ぶかと聞いてみた。そうしたら彼は、本当に考え込んでしまったのだ」

ラーニ氏は次のように提案している。「移民問題について日本人は議論しないが、労働力の構造を変えていかなければ、深刻な結果が待ち受けている。現在、子供を持つ日本の女性は職場への復帰を希望しない。その理由は驚くことに、同僚たちに迷惑をかけると心配しているからだという。わかるだろうか? 子どもの世話があると、同僚の仕事が増えてしまい、同僚に悪いというのだ」

「けれども、何かの方策がなされなければならない。高齢者の面倒を見る若い層は次第にいなくなるだろう。仕事をもち、税金を払える若い層が少なくなって行くのだ」

[Poorna Bell(English) 日本語版:丸山佳伸、合原弘子/ガリレオ]

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