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トヨタの利益率向上はアベノミクスの円安とは無関係だった...本当の原因は?

2013年11月10日 22時27分 JST | 更新 2013年11月10日 22時31分 JST
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Takuo Sasaki, managing officer of Toyota Motor Corp., left, and Nobuyori Kodaira, executive vice president, attend a news conference in Tokyo, Japan, on Wednesday, Nov. 6, 2013. Toyota, the worlds largest automaker, raised its full-year profit forecast by 13 percent as the weaker yen boosted earnings from Prius and Lexus vehicles exported from Japan. Photographer: Junko Kimura/Bloomberg via Getty Images

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9月の中間決算がほぼ出揃う。円安は本当に日本の製造業を復活させているのか?

9月の中間決算は円安を背景として、製造業を中心に好業績となる企業が目立っている。だが決算の内容をより詳しく見てみると、円高が是正されたからといって、製造業が抱える問題がすべて解決されるわけではないことが分かる。円安によってメリットを享受できるのは、競争力が高い企業だけであり、そうでない企業にとって、円安はそれほどの追い風になっていないのだ。

製造業の代表的な企業といえるトヨタ自動車は良好な決算内容となった。

売上高は前年同期比で15%増の12兆5375億円、営業利益は前年同期比81%増の1兆2554億円となり、上半期としては過去2番目の水準を記録した。トヨタの営業利益率は6.4%から10.0%に大きく増加している。

だが、すべてのメーカーが同じような状況になっているわけではない。同じく自動車メーカーのホンダは20%の売上増となっているが、営業利益率はそれほど上昇していない。電機メーカーの代表格であるソニーは12%の増収にとどまり、パナソニックはほぼ横ばいとなった。両社の利益率も昨年とほぼ変わらない水準だ。

絶好調に見えるトヨタも、販売数量ベースで見ると昨年からほとんど増加していないことが分かる。販売数量が変わらないのに売上げが増加しているのは、円安による効果といってよい。だが、利益率が向上しているのは円安とは直接関係なく、同社のコスト削減策によるものである。

トヨタの原価率は87%から82%に低下しているが、他の3社の原価率はほぼばいだ。全体的にも同じ傾向となっており、資本金が10億円以上の製造業全体で見ても原価率はあまり低下していない。

現在では多くのメーカーが海外に生産拠点を持っている。海外で部品を調達し、海外で生産・販売を行う場合、円安になったとしても、利益率が大きく向上するわけではない。売上高や営業利益の円換算額が増えるだけである。つまり、円安によって利益の絶対額は増加させることができるが、企業の収益力を拡大することはできないのだ。

収益力の拡大を実現するためには、数量を増やしてボリュームメリットを享受するか、製造コストを引き下げる必要がある。価格競争に巻き込まれず、数量を増やすには新興国などの成長マーケットをいち早く攻略することが重要だが、日本企業の多くはこの点でにおいて出遅れている。またコストの引き下げには限界があり、付加価値の高い業種でしか実現できない。

日本でもっとも高い業績を上げているトヨタですら、数量ベースの売上げが横ばいであることを考えると、他の企業はマイナスになっているところも多かったはずだ。トヨタはコスト削減の余地があったため業績の拡大が可能であったが、他の3社はトヨタほどの余裕はなかったということになる。またそのトヨタですら、付加価値の向上で製品単価を大幅に向上させることは実現できていない。

円高とデフレが日本経済を苦しめていた時代には、製造業の低迷は円高のみが原因であり、円高を是正すれば日本の製造業はすぐに復活するという楽観論が支配していた。だが実際に円高が是正されてみると、必ずしも円安が業績向上に結びつかないという現実が浮き彫りになってきている。

日本が製造業の技術力で勝負する技術立国であるならば、最終的にはイノベーションによって製品の付加価値を向上させる以外に製造業を復活させる方法はないはずだ。円安の進展後、初めての本格的な決算シーズンとなった今、この現実はますます重みを増してきている。

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