ニュース

ボジョレー・ヌーボー「◯年に一度のデキ」が何度も言われる理由 ソムリエに聞く

2013年11月21日 17時02分 JST | 更新 2014年11月20日 18時08分 JST
ASSOCIATED PRESS
A shop assistant at a store in Nice, southeastern France, arranges bottles of 2013 Beaujolais Nouveau, Thursday, Nov. 21, 2013. According to French law, the wine is released on the third Thursday of each November and this year's theme celebrates the spirit of the roaring 1920's. Beaujolais Nouveau is easy to drink, but everything a fine wine is not: young, poor in tannins and not suited to storage. It's partially because new wines could never hope to stir the imagination the way that the great wines of Bordeaux or Champagne do that the makers of Beaujolais Nouveau resorted to what has become a hugely successful marketing campaign. (AP Photo/Lionel Cironneau)

11月の第三木曜日となる21日、その年に作られたワイン、ボジョレー・ヌーボーが解禁された。ところでこのボジョレー・ヌーボー、毎年解禁日が近づくと、その出来について「例年並み」「◯年に一度の出来」などと評価されているが、実際のところどうなのか。今年のボジョレーの出来は? おすすめの飲み方は? 東京・自由が丘のワイン専門店「イーエックス・ワイン」のソムリエ、柳田由香さんに聞いた。

――よく、「10年に1度の当たり年!」みたいなことが言われますが、10年に1回以上言われているような気がするのですが……

私達ワイン業界の人間が反省すべき部分です。説明をはしょって「今年はこんなボジョレー・ヌーヴォーだよ」というのを「今年は美味しいよ」とか「10年に1度の当たり年だよ」とかで済ませてしまったためにこんなことになってるんだと思います。

最近で言うと2003年と2005年。2003年は「100年に1度の出来」、2005年は「ここ数年で最高」と言われました。

2003年はフランス全土が猛暑で「太陽のヴィンテージ」と呼ばれ、猛烈に暑い夏のおかげで濃厚なワインになりました。

一方、2005年も夏は暑かったものの、朝晩がグッと冷え込んだ年。酸がしっかりと蓄えられたので濃厚な果実味と豊富な酸のバランスが抜群にいいワインが出来ました。

どちらもヴィンテージ・チャートなどの単なる点数評価では2003年が93点、2005年が95点ととても高いのですが、「めちゃくちゃ濃厚なワイン」「バランスが抜群にいいワイン」と個性は全く違います。

でも、それを一言で言うとどうしても点数だけを見て「○年に一度」とか「超大当たり」とか、そんな表現になってしまった結果、今のヌーヴォーバッシングがあるんだと思います。

最近は大手メーカーさんもそれを見てるのか、今年はあまりそういう表記は見かけませんでしたね(笑)

「今年は良い」と言われた年には当然ボジョレー・ヌーヴォー消費量も伸びていますが、個人的にはやっぱり毎年飲んでいただいて、今年は好きな味かも、今年はちょっと濃いね、なんて、その個性ごと楽しんで欲しいなと思います。

――では、今年のボジョレーはどんな感じなのでしょうか。

一言で言うと、色が濃く、例年より味がしっかりしたボジョレーです。

春先の気温が平年以下だったので心配でしたが、ぶどうの成熟に重要な夏と秋は天候に恵まれました。果皮が厚く、エキスがぎゅっと詰まったぶどうが収穫できたおかげで、イキイキとしたフレッシュなボジョレーに飲み応えが加わっています。

ヌーヴォーはこのイキイキとしたフレッシュさ、新酒ならではのピチピチと弾ける感じが持ち味で、渋さも少ないことからワイン初心者でも飲みやすいとされています。が、実は、酸がしっかりとあるために「すっぱいワインが苦手」という人には飲みにくいことがあります。男性に意外と多い印象です、酢の物嫌いな人とか……。

今年はぶどうが完熟して凝縮感があるので酸と果実味のバランスがよく、例年より酸っぱく感じません。そのため、例年より万人受けがいいボジョレーとも言えると思います。

――そもそもボジョレーってどんなワインを指すのでしょうか。解禁日を祝う理由は?

ボジョレーは地名です。フランスのブルゴーニュ地方にあるボジョレーという地区で造られるワインのことで、同時にワイン名になっています。よく誤解されがちですが、この時期解禁になるのは「ボジョレー」ではなくて「ボジョレー・ヌーヴォー」。ヌーヴォーがついていないボジョレーは普通に一年中あります。

ボジョレーで造られたヌーヴォー(新酒)を、毎年11月第3木曜日から飲んでいいよ、ということです。

日本ではボジョレーだけが有名ですが、もちろん違う産地にも新酒はありますし、フランス以外にもイタリアのノヴェッロ(新酒)も法律で解禁日が定められています。

ボジョレー・ヌーヴォーだけが有名なのはボジョレー・ヌーヴォーが一番だから、ということではなくて、ボジョレーのワイン生産者たちによるプロモーションが成功した結果ではないかと。

以前ははっきりと解禁日が決まっていなかったためどんどんと早売り合戦が加熱してしまい、品質が低下していきました。そこで品質を保つために造られたのが「11月第3木曜日」という解禁日です。

解禁日を祝うのは、今年も無事にワインが出来たことを自然に感謝するため。ワインはぶどうがちゃんと育って収穫出来て造られるものですから、「今年も無事にワインが出来ましたよ」というめでたいお祝いなんです。

――ペットボトルのボジョレー・ヌーヴォーもありますが、どうなんでしょう?

最近流行りのペットボトルや1000円以下のものは悩ましいところです。もちろん消費量が伸びるのは業界の人間として嬉しいところですが、出来れば2000〜3000円ぐらいのものを目安にしてもらうといいと思います。

ボジョレー・ヌーヴォーは解禁日に間に合わせるため飛行機で届きます。その数カ月後、年明けに船便でも同じワインが到着します。ここの価格差が実は1000円ぐらいあるんです。

飛行機便で到着する分はプロモーション費用なども乗ってるかもしれないと考えると単純に1000円違うとは言い切れませんが、仮に500円飛行機代が違うと想定すると、いくらペットボトルとはいえ670円で販売されるヌーヴォーはいったい元値はいくらなの……? と不安になります。

もちろん「味は二の次、安けりゃいい」という場合は反対しませんが、やっぱり安く出す前提で造られたヌーヴォーをオススメすることはありません。

「ワインって美味しいね」と飲んでいただきたいので、造り手が丁寧に造っているもの、人件費や造るためのコストが乗っているものとなると、2000〜3000円が目安のラインかと思います。

――おすすめの飲み方や、食べ物との合わせ方は?

飲む30分前ぐらいから冷蔵庫で冷やしてもらって、少し冷えた状態でお召し上がり下さい。冷やしすぎると酸が強く感じるので、清涼飲料水のような温度まで冷やさなくて大丈夫です。

最近は100円ショップでもワイングラスがありますから、出来ればマグカップやコップは避けて、ワイングラスでお召し上がりいただきたいですね。マグカップなどはコーヒーなどを飲むのには適してますが、口に当たる縁が厚かったり、香りが取りにくかったり、ワインを飲むのには適していないので……。

お料理は気張らず、気軽に用意出来るものがいいと思います。それこそ、ボジョレー・ヌーヴォーを買う時に一緒に生ハムやチーズを買ってくるとか、そんな感じの気軽さで。ピザなんかも相性が良いですよ。

あと、大事なのはうんちくを語らないこと(笑)。ボジョレー・ヌーヴォーは今年も無事にワインができたことを祝うお祭りです。「今年は味が濃いね」「去年のより好き」というぐらいにとどめて、くれぐれもヌーヴォーの起源を語り出したりせず「めでたい!」とだけ言って楽しんで下さい。

【ワイン関連の記事】

ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています

関連記事

10 Incredibly Expensive Wines