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「武器輸出三原則」安倍政権が見直しをすすめる理由とは【争点:安全保障・アベノミクス】

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武器輸出三原則が変わる――。

政府・与党は12月5日、武器の輸出を原則として禁じてきた「武器輸出三原則」を見直し、適正な管理の下で輸出を認める方針を固めた。年内にもとりまとめ、12月中旬に決定する国家安全保障戦略に明記する考えだ。朝日新聞デジタルなどが報じた。

武器輸出三原則は1967年、佐藤内閣が(1)共産圏(2)国連安保理決議により武器輸出が禁止されている国(3)国際紛争の当事国またはそのおそれのある国――のケースで武器輸出を禁止。三木内閣が76年、三原則以外の国にも原則、輸出禁止を決めた。ただ、米国への武器技術供与などは個別に官房長官談話を出して「例外」を設けてきた。


政権が示した原案では「我が国の安全保障に資する場合」は輸出できるなど、幅広く解釈できる文言を新しく設ける。ただ、(2)と(3)の禁止条項は維持する。輸出の審査・管理基準も設けるが、三木内閣の原則禁止の方針は撤廃の方向だ。武器輸出の品目や地域が大幅に広がる可能性がある。


(朝日新聞デジタル「武器輸出、禁止から管理へ 政府、新原則原案で方針転換:」より 2013/12/05 20:55)

安倍政権はなぜ、武器輸出三原則の見直しを行うのか。その狙いは何か。

■武器輸出三原則から例外化された「共同開発への参画」

これまで武器輸出三原則の例外として認められたものの中に、武器の共同開発への参画がある。

世界的に国防予算が縮小する中で、性能の高度化や複雑化に伴い軍事装備品の開発・生産コストが高騰化。そのため、各国は同盟国や友好国との間で軍事装備品の共同開発を推進している状態だ。共同開発に参加することで、装備品の調達コストが削減できるほか、自国の防衛関連産業を支援することにもなるためだ。

防衛予算の削減は、自国における防衛関連産業の衰退を招いており、世界各国では国をまたいでの防衛関連企業の合併・統合が進んでいる。日本国内においても、防衛産業に関連する企業の倒産や事業撤退・縮小が相次ぎ、高い技能が求められる技術者の維持や育成が難しくなっている。

防衛関連企業を国内に維持することは、各国からの武器輸入が困難となるような状況が生じた場合の安心材料となる。また、軍事装備品の技術を民間製品へスピンオフすることも、期待される効果の一つだ。例えば、F-2戦闘機に使われた技術からは、高速道路のETCで使われる衝突防止レーダーや、医療に使われる骨折補強のチタンボルトなどがスピンオフによってうまれている。

また、各国でバラバラとなっていた軍事装備品の規格が、共同開発によって統一化されるようになった。規格を統一することによって、部品を世界各国から調達することが可能となり、調達コストが下がった。しかし、共同開発に参加しないなどで規格を知らない場合や規格が合わない場合には、逆に調達コストが上がったり、自国内で部品を作らなくてはなくなることもある。なお、日本もアメリカのF-35戦闘機の開発に後方支援として参画することで、エンジンユニットを提供できるようになっている。

f35

■各国との共同開発、技術協力の状況

アメリカ以外の国についても、既に日本は世界の各国と、共同開発を前提とした取り組みをすすめている。

2012年4月には、民主党の野田佳彦首相とイギリスのキャメロン首相による日英首脳会談において、防衛装備品の共同開発や、化学防護服の性能評価方法に関する共同研究を開始することで同意。民主党時代には2012年9月にも、オーストラリアとの間で装備技術協力について議論の枠組みを設ける方針を確認している。

安倍政権においては、2013年6月の日仏首脳会談において、防衛装備品の分野で協力、輸出管理措置を扱うことに合意。

また、インドとは2013年5月に行われた日印首脳会談において、日本の救難飛行艇US-2をインドに導入するための合同作業部会を立ち上げることで合意している。

US-2は、2013年6月に小型ヨットで太平洋を横断中に遭難したニュースキャスター・辛坊治郎さんを救出した飛行艇としても有名だ。ヘリコプターなどより長距離を飛行できるが、救助を目的とするなどの特殊性もあり、購入するのは相手の国の防衛機関ということも想定される。

■日本の強みをトップセールスしたい

US-2などのように、世界各国に対して自社の製品を売り込みたいとする日本の企業は多い。これまで民間製品をつくることで培ってきた技術をもって、海外の防衛産業にも売り込みをかけたいという意気込みもある。しかし、武器輸出の三原則があることで、それができない状況も生じている。

国際的に日本が優位に立つ技術としては、素材(炭素繊維、超高張力鋼など)やデバイス(半導体など)のほか、加工・生産を行う技術もある。これらの製品やサービスを輸出することで、国内に雇用を生み出したいというのが、政府の考えのようだ。

■どこまでを武器輸出として認めるのか

日本はどこまで武器輸出を認めるべきなのか。

政府から武器輸出三原則見直しの提案を受けた自民・公明両党の安全保障プロジェクトチームからは、どこまでを武器輸出の対象とするのかなどが曖昧という点が指摘されている。

この素案に対し、作業チームのメンバーからは、「表現があいまいだ」という意見や、「輸出を認める場合、厳格で透明性の高い審査が必要だ」などという指摘が出されました。


(NHKニュース「「武器輸出三原則」見直しへ」より 2013/12/06 04:14)

11月には、日本とトルコ両政府間で、防衛装備品の共同開発を検討していることが報じられている。三菱重工業とトルコ企業による合弁企業を設立し、トルコ軍向けに戦車用エンジンを供給する計画だという。しんぶん赤旗は、日本共産党の井上哲士参議院議員と小野寺五典防衛相のやりとりを次のように伝えた。

井上氏は三菱重工とトルコ政府がトルコ軍戦車エンジンの共同開発にむけて合弁会社の設立を進めているとの報道を示し、日本企業が外国軍の防衛装備品のために外国企業と合弁会社を初めてつくるものだと指摘。小野寺五典防衛相は「民間企業活動の一環だ」と答えました。井上氏は、5月の首相のトルコ訪問時に日本経団連会長や三菱重工社長ら財界人100人以上が同行した事実を示し、「総理のトップセールスで三菱重工は原発輸出を受注し、さらに戦車の共同開発まで進める。軍需産業と一体で軍拡を国家戦略にするものだ」と批判しました。


(しんぶん赤旗「武器輸出国家化狙う/参院国家安保特委 井上議員が批判」より 2013/11/14)

なお、プロジェクトチームの座長である…岩屋毅衆議院議員は、三原則の撤廃でルールを明確化するものと発言している。

岩屋氏はPT後の記者会見で「三原則の撤廃ではなく、国際環境に適した内容に変える。輸出に抑制的な考え方は維持したうえでルールを明確化し、問題ないものは認めようということだ」と述べた。


(MSN産経ニュース「年内にも武器輸出新基準 三原則見直しで政府・与党」より 2013.12.5 23:53)

武器輸出三原則はどのようにあるべきでしょうか。あなたのご意見をお寄せください。

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