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ワールドカップの厄介な対戦相手は「デング熱」

2013年12月06日 21時51分 JST | 更新 2013年12月06日 21時52分 JST
Kallista Images via Getty Images

2014年6月から7月にかけて行われる予定である、アメリカを含む32カ国が参加するFIFAワールドカップ。その1次リーグ組み合わせ抽選会が6日(日本時間7日未明)に開催される。1次リーグが行われるフォルタレザ、ナタール、サルヴァドールという3つの開催都市はすべてブラジル南東部に位置しており、試合が行われる頃にはデング熱の発病件数がピークに達するだろう。

ブラジルは熱帯病が多く発生する場所だ。蚊を媒介にして伝染するデング熱に対し、ワクチンや特定の対処法はない。2013年はじめから11月20日までの間で、この病気によるブラジル国内の死亡者数は572人であり、2012年の倍近い数字だ。大半の人は合併症にかかることなく回復するが、重度のデング熱発症者は4人に1人が死に至る。

「デング熱は世界の多くの地域で増え続けている病気だが、特に南アメリカでの増加が顕著だ」と、ボストン小児科病院の医師ジョン・ブラウンシュタインは語る。

4月に出版されたブラウンシュタインの共著によれば、約3億9000万前にも世界中でデング熱の事例が見られたと言う。

都市化や交通機関の発達、気候変動によってデング熱の発病は増えると考えられており、2014年の夏に行われるワールドカップ期間中には危険性が高まるかもしれない。一方で専門家たちは、世間の注目が集まることで、マラリアの影に隠れた他の病気にもスポットライトが当たるという効果があるとも述べた。

「ブラジルは世界に先駆けてデング熱対策に取り組んでおり、国際的にも指導的役割を果たしている」と、オックスフォード大学の感染症の専門家サイモン・ヘイ氏は述べている。彼はNature誌にコメントを寄せ、デング熱の危険性を警告した。

2014年のワールドカップと2016年開催予定の夏季オリンピックという国際的スポーツイベントに向けて、ブラジルではいくつものスタジアムが建設中で、多くの街が発展している。国内外のスポーツファンが押し寄せてくることで、多くの人がデング熱にかかってしまうかもしれない。この病気の感染源は主にネッタイシマカという蚊である。ヘイ氏はワールドカップで300万枚以上のチケットが販売されることに注目している。

「ネッタイシマカは人間の住む環境を好む」アリゾナ大学の地域開発学博士研究員のコリー・モリーンは言う。「地域が都市化するほど、蚊は生息しやすくなる」

都市化が進むほど多くの人が蚊に吸われるようになり、水たまりのプールも増える。タイヤや玩具、水を地面へ通さないコンクリートや建築現場には水が溜まりやすい。こうした場所は蚊が卵を産むには格好の場所だ。

ニューヨークのミルブルックにあるケアリー生態系研究所のシャノン・ラデュー氏は、「大規模な土地整備を進めれば、スタジアムの周りに蚊の生息環境も増えることになる」と述べた。彼女はブラジルにある庭やゴミが多くの問題の原因だと考えている。

「ワールドカップに注目が集まることで、長期的な取り組みの動機付けにもなるし、変化を促せるだろう」。ラデュー氏はさらに、「土地開発がどんなものであれ、ブラジルに問題をもたらさないよう強く願う」と述べた。

オックスフォード大学で感染症を専門とするヘイ氏は、デング熱の流行期が始まり、決勝トーナメントが開催される前にブラジル当局が「積極的に」蚊の対策をするよう勧めている。その方法は、廃棄物や水たまりの掃除・浄化と、成長した蚊を見つけたら殺虫剤を散布することなどだ。また、ワールドカップの観戦者に対しては、虫除けを使い、手足の肌を覆うような衣服を着るとともに、宿泊先は網戸付きの窓、ドア、エアコンを備えている施設にすることを勧めている。彼とその他の専門家は、個人でできる対策を促すように公式に呼びかけるべきと主張している。

「蚊によって起こる蚊媒介疾病の真の問題を、観光客は理解していない。彼らは危険性を甘く見ている」とブラウンシュタインは述べる。

デング熱マップをざっと見るだけでも最近の状況を理解し、リスクを避けられる。赤く表示されているところは病気が発生しているところだ。

ブラウンシュタインは感染マップの作成に協力してきた。公共のデータベース、新聞、ソーシャルメディア、世界中のデング熱の最新情報が載っている資料をもとに作成した。彼は自分のチームに目をブラジルに向けるよう注意している。そしてサッカーのトーナメント中は開催地につながる交通ルートにも注視している。

他にも、ワールドカップの観戦者がウィルスを自国に持ち帰ってしまうという懸念がある。アメリカ合衆国でデング熱が突如発生する原因の大半は熱帯地域への旅行から帰国した人である。高熱や目の裏側やおなかがひどく痛んだりするというデング熱特有の症状が出るのは蚊に吸われてから約1週間後である。大半は数日のうちに回復するが、症状がデング出血熱に変化して致命的な状態になることが数%ある。

世界の約40%以上が危険と隣り合わせにある。

先進国は他と比べて万全のデング熱対策をとっている。空調が備わっていて、医療機関へのアクセスも容易で、気密性の高い住居に住んでいるからだ。それでも、アメリカのように、デング熱の脅威から免れることができない国はあると専門家は警告する。人間が持ち帰ってきたデング熱が感染拡大に至るという事例はまれだが、フロリダテキサスのように数十年経った後に再び感染発生地になるケースもいくらかある。

ある専門家は、気候変動が要因で、今までより多くのアメリカの地域でネッタイシマカが生息しやすい熱帯性の環境が増えていると述べている。今年の夏に北部カリフォルニアでネッタイシマカが生息しだした。

ヒトスジシマカもアメリカで徐々に分布が広まってきた外来種であり、デング熱を感染させる。北部の温暖な地域で生息域を広げているようだ。

アリゾナ大学のモリーン氏は、今週出版されたデング熱における気候変動の複雑な役割についての専門書を書いた主執筆者だ。

温度上昇は病気の拡散を速める重要な要因になりうるとモリーン氏は説明する。蚊の数、蚊の体内にいるウィルスの複製、蚊が血液を欲するのに人から人へと移る時間間隔に影響がある。

しかしモリーン氏は蚊にとって高温かつ低湿度という環境は好ましくないと説明する。気候変動、気温、降雨量との関係は複雑だ。

全体的に見て、ブラジルの気候変動はアメリカのそれと比べて影響が少ないようだとモリーンは述べる。「ブラジルはすでに理想的な気温にある。しかし、フロリダ南部は気候変動の脅威にある。それでも、すこし温かくすることで蚊から防衛できる」

ブラジル人の中には政府がワールドカップと夏季オリンピックの開催に数10億ドルも費やすことに抗議している者もいる。市民の多くは、こうした資金は国の医療システムとインフラ整備に使われるべきだと思っている。もちろんデング熱対策も重要視している。

ハフィントンポストの取材に対しヘイ氏は、ブラジル政府もFIFAも、ワールドカップを組織する機関は論文のコメントに応えてくれなかったと述べた。論文を出すことで議論に刺激を与えられることを期待すると彼は言った。

「ブラジルはデング熱という悩みを抱えている100の国の中の1つだ。この熱帯地域の問題をワールドカップの最前線で取り上げて、より連動して、世界の反響を得たい」とヘイ氏は述べている。

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[(English) Translated by Gengo]

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