ロシア・マフィアたちの驚きの墓石

1990年代はロシアにとって「過剰」な10年だった。新たに開放された経済体制の恩恵を、特権を握った政府に近い者たちが享受した。資本主義が爆発的に広がり、金の流れが活発になるなかで、ギャングやマフィアたちが力を持った。そして、体制からの制約が少ない、金の亡者となった一部の者たちは思うままに行動するようになった。自分の富を守るために人々を殺し始めたのだ。

1990年代はロシアにとって「過剰」な10年だった。新たに開放された経済体制の恩恵を、特権を握った政府に近い者たちが享受した。資本主義が爆発的に広がり、金の流れが活発になるなかで、ギャングやマフィアたちが力を持った。そして、体制からの制約が少ない、金の亡者となった一部の者たちは思うままに行動するようになった。自分の富を守るために人々を殺し始めたのだ。

ロシアとその周辺国で、いわゆる「マフィア戦争」が始まってから20年近くになるが、その退廃と暴力が入り混じった絶頂期をいまに伝える場所がある。

ロシアのエカテリンブルクやウクライナのドニプロペトローウシクなどの街に残されている、贅を尽くした墓石の数々が、あの騒乱の時代を記念するモニュメントとなっているのだ。

「90年代には、犯罪世界における権力者たちの墓に、大きくて高価な墓石が立てられた。高さは3mほどあり、等身大の肖像画が刻まれ、背景には高価な車が描かれた」と説明するのは、写真家のデニス・タラソフ氏だ。

タラソフ氏は、往時をしのばせるこれらの奇妙な遺物を撮影して記録する作業に取り組んでいる。入念な彫刻が施された墓石には、故人が自分を覚えておいてほしいと望んだ姿が描かれている。

高価な車のシートに座っているもの、極上の酒を楽しんでいるもの、お気に入りの革のベストを着ているものなど様々だ。「Essence」(本質)と名付けられたタラソフ氏の一連の作品は、死に直面しながらも物質的な豊かさを称賛する現代文化の奇妙な現象を見せてくれる。

このような墓石は、この場所に独特のものというわけではない、とタラソフ氏は説明する。ロシアやベラルーシ、ウクライナをはじめ、旧ソビエト連邦諸国の主な都市に存在する。

通常は、墓地の1箇所に集中している。かなり不気味に感じられる独占的(かつ高価)な空間だ。「これらの墓は、墓地に立つほかのどの墓よりも巨大であり、ほかの墓を見下ろしている。ちょうど、彼らが生前、日常的にそうだったように」

これらの墓の多くはギャングのものだが、こういった形式は、ロマの長たちやアルメニア人の一族などを含む、さまざまな裕福な人々にも支持されたという。

「すべてが同じ様式で作られているにもかかわらず、それぞれがやはり異なる」とタラソフ氏は述べる。「それぞれに独自性があり、いくつかの特徴的なものがある。それは私にとって一種のプンクトゥム(一般的な概念の体系を揺さぶり、それを破壊しにやってくるような経験)だ」

タラソフ氏の写真は現在、ロンドンにある「Saatchi Galler」の企画の1つ「Body Language」で展示されている。この展示会では、新進の国際的なアーティスト19人の作品を紹介している。ダナ・シュッツの絵画からカスパー・コービッツの彫刻まで、集められた作品は、異様なものと美しいものが網羅され、造形作品の境界を押し広げるものとなっている。

[Katherine Brooks(English) 日本語版:平井眞弓/ガリレオ]

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