派遣法改正案で非正社員化が進むのか 「自民党はブラック」との声も【争点:雇用】

これまで正社員に任せていた仕事を、今後は派遣社員が行うことになるかもしれない――。厚生労働省は3年ごとに派遣社員を交代させれば、企業はどんな仕事でも期限を決めずに、同じ業務をずっと派遣労働者に任せられることを盛り込む、労働者派遣法の改正案の骨子をまとめた。
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これまで正社員に任せていた仕事を、今後は派遣社員が行うことになるかもしれない――。

厚生労働省は12月12日、労働者派遣法改正の最終報告案の骨子をまとめた。3年ごとに派遣社員を交代させれば、企業はどんな仕事でも期限を決めずに、同じ業務をずっと派遣労働者に任せられることを盛り込む。47NEWSが報じている。

厚労省は12日、労働者派遣制度の見直しに関し、企業にとって現在最長3年となっている派遣受け入れ期間の上限を廃止し、3年ごとに労働者を入れ替えれば、同じ職場で継続的に派遣を利用し続けることができるとする報告書の骨子案を労働政策審議会の部会に示した。

(47NEWS「派遣制度3年の上限規制廃止 企業の継続利用可能」より 2013/12/12 10:24)

現行ではソフトウェア開発者やウェブデザイナー、秘書などの26業種を除き、1つの業務を派遣労働者に任せられる期間は3年となっている。というのも、「派遣」は臨時的、一時的な仕事を担う例外的な働き方と位置付けられているからだ。

臨時的で一時的なものだから、正社員との代替が起こらない。「この仕事は臨時的なもの」という意味合いで、「業務ごと」に3年という上限を設けていた。

これを、最終案では全ての業種において3年という「業務ごと」の上限をなくし、「人ごと」に縛りを設ける。60歳以上の高齢者や、派遣元の派遣会社と無期の雇用契約を結ぶ人を除き、どの業種で働く場合でも、一人の労働者が一つの組織で同じ仕事を続ける期間の上限を3年とする。

この改正案は、3年の期間を超えて派遣を利用したい企業や、人材派遣会社にとっては、大幅な規制緩和となる。一方、労働者から見ると、正社員を派遣に置き換えることが進むことも懸念される。

正社員の職場が狭まる恐れから、当初案では、派遣先の労使でつくる委員会が反対すれば、企業は4年目以降は同じ仕事で派遣を受け入れられなかった。だが最終案は、労組などに意見さえ聞けば、反対意見が多数を占めても、別の派遣労働者を継続して同じ仕事で受け入れることができる。

朝日新聞デジタル「労組反対でも派遣受け入れ継続可能 厚労省審議会最終案」より 2013/12/12 12:08)

また、これまでソフトウェア開発などの業種で無期限で働いていた派遣労働者にとっては、職場の移動によって、仕事が無くなる可能性もあるため、労働者を保護する内容も盛り込まれる。

一方、派遣労働者を保護するため、3年たって同じ職場にいられない働き手に対し、派遣会社が勤め先を見つける義務を課す。できない業者は「事業許可の取り消しもある」(厚労省)という。派遣先企業に対しても、自社の従業員と、派遣労働者の待遇バランスに配慮する義務を課す。

朝日新聞デジタル「労組反対でも派遣受け入れ継続可能 厚労省審議会最終案」より 2013/12/12 12:08)

また、派遣先企業が3年以上を超えて同一の労働者を雇用したいという場合は、派遣元企業が派遣先企業にその労働者の直接雇用を依頼することや、派遣元企業が無期限で雇用して派遣する方法でも可能とする。

派遣労働者が働く期間に上限を設けることについては、これまでの議論では派遣労働者のキャリアアップにもつながるとの意見も出ていた。改正案では、派遣元企業の労働者派遣事業の許可・更新が認められる要件に、労働者のキャリア形成支援制度を設けることや、派遣先企業が受け入れている派遣労働者の職務遂行能力などを、派遣元事業主に提供するよう努めることも盛り込む。

これらの改正案について、インターネットからは、これまでよりも雇われやすい環境になるという声や、格差が是正できなくなる政策ではないかと、政府・与党に対して「ブラック企業」とする声も上がっている。

なお、景気の回復を受け、派遣労働者の需要が増している状態だ。人材派遣大手のテンプホールディングス代表取締役社長の水田正道氏は、人材派遣の需要と、派遣料金改定について次のように話している。

水田氏によると、需要が拡大しているのは、金融、不動産、自動車、建設などの産業。「景況感の改善、また、2014年4月の消費増税への対応などで、前年比30%増近い需要がある」とし、「2014年4月までは需要過多の状態が続くだろう」と見通している。

同社では、労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)で議論が続く労働者派遣法の改正を見据えて、派遣労働者の待遇改善・安定就業を実現するための施策に取り組み、企業に対して派遣料金改定などの交渉を進めている。「料金改定に関しては少しずつ進展し、企業が欲する人材の条件についても、徐々に目線が低くなってきている。派遣労働者の待遇を改善し、登録スタッフの拡大など供給サイドを向上できるかが当面の課題」と現状を伝えた。

(サーチナ「テンプHD、需要激増受け派遣労働者の待遇改善めざす料金改定図る」より 2013/11/21 11:29)

【※】派遣法改正案について、あなたはどのように考えますか。ご意見をお寄せください。

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