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「マイノリティのカミングアウトで社会は変わる」 ペンシルバニア州議会初のゲイ議員、ブライアン・シムズ氏インタビュー

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BRIAN SIMS
「マイノリティのカミングアウトで社会は変わる」 ペンシルバニア州議会初のゲイ議員、ブライアン・シムズ氏インタビュー | 伊吹早織
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ある日、家族や親しい友人が「実はゲイなんだ」とカミングアウト(告白)してきたら、あなたは彼をどう受け止めるだろうか。アメリカ北東部に位置するペンシルバニア州のブライアン・シムズ州議会議員は、大学のフットボールチームでキャプテンを務めていたとき、何年も一緒に過ごしてきたチームメイトに、自身がゲイであることをカミングアウトした。チームメイトの反応は予想外のものだった……。

■アメリカ社会を分断する「LGBT」問題とは?

シムズ議員は、ペンシルバニア州で初めてゲイであることを公言した「ゲイの州議会議員」だ。大学時代にフットボールのチームメイトにゲイであることをカミング・アウト。その後、「アメリカ建国の地」とも呼ばれるように非常に歴史が古く、保守的な市民が多いペンシルバニア州の州議会議員選挙に立候補、2012年の4月に当選を果たした。ペンシルベニア州議会の247年におよぶ歴史の中で、ゲイの議員を迎え入れたことは初めてだった。

現代アメリカを大きく分断する社会問題に「LGBT」がある。レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(心と身体の性が一致しない)などの性的マイノリティを総称する言葉だ。2010年にアメリカで行われた国勢調査によると、成人したアメリカ国民のうち3.8%は自らをLGBTのうちどれかであると認識しているそうだ。割合としてはあまり大きくないと思われるかもしれないが、全米でおよそ900万人の人々が「異性愛ではない」性的指向を持っているという計算になる。

その結果、今やアメリカにおいてLGBTの権利をめぐる論争は、オバマ大統領率いる民主党と保守派の共和党との間の溝を深めているほど、大きな問題となっている。

日本では、先日初めて性同一性障害で性別を変更した夫を父親と認めるという判決が出た。一歩ずつ、性的マイノリティの権利を認める方向に社会は歩み出し始めているが、その足取りは遅い。

LGBTを始めとするマイノリティの権利を守り、共生していくために、私たちや社会はどうあるべきなのか。12月10日の世界人権デーに合わせて来日したシムズ議員にインタビューした。

■強く自立していた陸軍中佐の母を見て育つ

−−シムズ議員はどのような子供時代を過ごしたのでしょうか?

わたしの両親は二人とも陸軍で勤務をしていたので、職業柄わたしも全米各地を転々としながら育ちました。特に母は陸軍の中佐をしていたので、とても強く自立した女性でした。家系的にも代々強い女性が続いていたためか、わたしも自分自身がゲイであるとはっきり認識する前から女性の権利のために活動したいと思っていました。

10代のはじめに今住んでいるペンシルバニア州に引っ越して、フットボールを始めました。大学にもフットボール選手としてスポーツ奨学金をもらって進学し、4年間の最後には全米チャンピオンシップトーナメントにも参加しました。まあ、試合は負けてしまったんですけどね。あのときの悔しさは今でも少し引きずっています(笑)。その試合の後に、チームメイトに対して自分がゲイであることをカミングアウトしました。

−−アメリカでは、軍人とフットボール選手のような男性中心のコミュニティの人たちは同性愛者を嫌うというイメージがあると思いますが、実際はいかがでした?

確かにわたしもそういう印象を持っていました。しかし、実際にチームメイトたちにカミングアウトしてみたら、そのステレオタイプ的な考えは間違っていることがわかりました。

人権に対する考え方が形作られる過程で重要な要素は2つあり、1つ目はどういった教育を受けるかということ、2つ目はどれだけ他の社会を見ているかということです。軍人もフットボールプレイヤーも大学教育を受けている人がほとんどですし、どちらもアメリカ国内あるいは、世界各地を訪れた経験を持っている人が多いです。さらに、軍もスポーツも実力主義の世界ですから、パフォーマンスが良ければ尊敬もされるし、周りも寛容でいてくれると思います。ですから、軍人やフットボールプレイヤーなどのいわゆる「マッチョ」な人々は同性愛者を嫌悪していると思い込むのは間違っているんです。

■マイノリティの人権を守るため州議会議員に立候補

−−シムズ議員は大学卒業後、環境弁護士や障害者の労働相談を受ける弁護士、地元弁護士会の政策顧問などの仕事をしてらっしゃいましたが、どうして州議会議員に立候補しようと思ったのですか?

まず一つ目のきっかけは、政策顧問の仕事をしていた頃、「アウト・スポーツ・ドット・コム」というウェブサイトに私がフットボールチームのキャプテンでいながらカミングアウトしたときの話が掲載されました。そのとき既にカミングアウトから10年経っていたので、「誰もそんな昔の話に興味を持たないだろう」と思っていました。しかし記事は世界中で読まれ、掲載から4カ月の間は11分に1本の間隔で反響のメールが届くようになりました。そうして世界中の若者からメッセージをもらったことをきっかけに、全米の大学を回ってアスリートとしてカミングアウトすることについて講演をさせて頂くようになりました。

その後周りの推薦で「ナショナル・ゲイ・アンド・レズビアン・ビクトリー・ファンド」という組織の理事に就任しました。この組織はカミングアウトしている同性愛者をトレーニングし、LGBTの政治家を誕生させる活動をしています。この職に就いたことで、私の住むペンシルバニア州がゲイの人権を一切保護していないことに気付きました。その状況を打破するためにも、同性愛者の議員誕生を目指して活動を続けていたのですが、2011年の夏頃友人たちが私にこう言いました。「ブライアン、君は今まで政治家になれる素質があり、同性愛者の人権問題について議論することができ、さらに選挙で勝てる候補者を探し続けてきたが、その候補者とは君だよ」と。そこで私は少し迷った後に出馬を決意し、私の選挙区で史上最大規模の選挙キャンペーンを行いました。その結果、233票差という僅差で勝利することができたのです。

■日米で異なるLGBT問題の背景

−−ペンシルバニア州は同性婚の問題などに反対する議員が多い保守派の共和党が議会の多数派を占めていますが、そういった状況の中でゲイの議員としてどのような苦労や葛藤があるのでしょうか?

全体的に保守的なペンシルバニア州のなかで、私の地区はリベラルな地域だと言われています。しかし、私の前任者は保守派とは一切協力をしないというスタンスをとっていたんです。そのため、保守派が牛耳っている議会で何も成し遂げることができませんでした。

ですので、わたしは自分と違う意見の人とも協力しようと決めました。その結果、私の同僚たちは所属政党に関わらず支持をしてくれていると思います。もちろん全員が私のことを支持してくれているわけではなく、個人攻撃をされるようなこともありますが、それらの攻撃があまりにも失礼で敬意を欠いたものであるがために、私が被害を被るよりも攻撃をした本人たちが受けるダメージの方が大きいと思いますね。

−−日本もまだまだ同性愛者の権利保護に関する政策が不十分だと言われていますが、アメリカと日本ではそれぞれが抱えている状況にどのような違いがあるでしょうか?

アメリカで同性愛者の権利保護に強い反対をしているのはクリスチャンの人たちで、教会が中心になって反対活動を行っています。いわゆる「宗教原理主義」あるいは「宗教保守」と言われる人たちですね。そこには同性愛に対する「憎しみ」に近い感情が存在すると思います。一方日本の場合はそういった宗教色はなく、伝統と文化に対する強い誇りから反対の感情が湧き出ているように思います。文化としても変化を好まず和を重んじる特徴があるので、和を乱す存在に嫌悪感を持ってしまっているという印象を受けます。

今回来日をして5、6組の同性愛結婚をされた日本人カップルにお目にかかりました。みなさんアメリカやカナダで結婚をしてから帰国された方々で、「帰国してみてどう?近所の反応は?」と伺ったところ、彼らが強行に何らかの運動を繰り広げようとしているのではなく、普通のカップルのように出会い、愛し合い、結婚したということを理解すれば、周りの人たちはこころよく受け入れてくれると仰っていました。やはり日本の人たちが知りたがっているのは同性愛者のカップルがそこで普通の生活をしたいのか、それとも世界をひっくりかえすような変化を起こしたいという野望を持っているのかだと思います。

しかし、同性愛者だからといって周りの人よりも日本人らしくないということは決してないと思います。同性愛者でもきちんと家族に対する価値観をもって伝統を重んじながら生きているひとたちもたくさんいます。そういったことに対する理解が広まれば、アメリカに存在するような憎しみがない分、かなり速いテンポで包括的な法整備が進むのではないかと思います。

■マイノリティとマジョリティの分断を乗り越えるためには

−−日本では同性愛者に限らず様々なマイノリティと呼ばれる人々がマジョリティから分断されているような状況があります。両者はどのようにお互いと向き合っていけばいいのでしょうか?

アメリカの公民権運動の最も大きな原動力になったのは、やはりマジョリティの人たちの支持です。彼らが「仲間」になってくれることで、マイノリティは権利を獲得してきました。

そこで、当事者であるマイノリティの人々がマジョリティに対して持ちうる最も影響力のある行為とは、カミングアウトすることであると言われています。マジョリティの人からしてみれば、たとえ自分が特定の人々に対する偏見を持っていても、差別を受けている当事者を知らない限りは全く自分とは関係ない話になってしまいます。それがもし自分の家族や友人にそういった人がいれば、差別に関する話を聞いたときにその人たちの顔が浮かぶと思います。私のチームメイトたちもそうだったのではないかと思います。ですから私は同性愛者だけでなく、シングルマザーやファーザー、あるいは精神的な障害を持った人々など、あらゆる人々が「カミングアウト」することが大切だと思います。「自分たちはここにいるんだ」という存在を知らしめることですよね。

とにかくそうした露出が大切で、そうした交流がその国の文化にとってもコミュニティにとっても極めてヘルシーなことであると私は思います。完全に理解しあうことができなくてもいいんです。お互いの違いを尊敬し、権利を守っていくことができれば、物事は解決に向かっていくと思います。

※LGBTをはじめとするマイノリティの権利を守っていくためには、どのような取り組みが必要でしょうか? みなさんのご意見をお聞かせください。


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