女性に危険が迫る「インドのトイレ事情」とは

インドの農村部では、「家にトイレがある世帯」が全体の3分の1に満たない。そのため、女性たちは共同トイレを使用せざるを得ないが、その間に襲われる可能性があり、身の安全を守れないという悲惨な状況となっている。
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インドの農村部では、「家にトイレがある世帯」が全体の3分の1に満たない。そのため、女性たちは共同トイレを使用せざるを得ないが、その間に襲われる可能性があり、身の安全を守れないという悲惨な状況となっている。

ニューデリー北西部に位置するブホールスワの住民ヘルマさんは、「ウォール・ストリート・ジャーナル」系サイト「India Real Time」に対してこう語っている。「女性は、建築作業員に拉致されたり、性的虐待を受けたりしています。でも、たいていの場合、母親たちは娘の身に起こったことを口にしません。結婚の障害になるからです」

同サイトによれば、ブホールスワには共同トイレが2つ設置されているが、その利用者は1000人もいるという。朝になると女性たちは、清潔とは言い難いトイレを使うため集団でやってくる。トイレを利用するには最も安全な時間帯だからだ。

女性たちは普段から冷やかされ、拉致されたり暴行を受けたりすることも珍しくない。そういった出来事が少なくとも月に1回は起きていると地元住民は言う。

インド関連のニュースを伝える「CNN-IBN」の報道によると、ニューデリー郊外の村バワーナでは、住民約300人に1つの割合で共同トイレがあるが、女性たちが同様の危険にさらされている。

同記事では、地元の若い女性アフサナさんのコメントを伝えている。「男性たちは、よくトイレの周囲にたむろしています。私たちは知らないふりをするのですが、手を伸ばしてきたり、触ろうとしたりするのです」

共同トイレを利用する際には、特に女性は攻撃にさらされやすくなる。屋根はなく、窓も低い位置に設置されているからだ。

暴行を受けるくらいなら外で用を足したほうがましだとする女性も多く、専門家はインドを「世界一の屋外排泄国」と呼ぶほどだ。

世界銀行の発表によれば、インドでは全世帯の53%が屋外で排泄を行なっている、とインド日刊紙「ザ・タイムズ・オブ・インディア」も伝えている

こういった習慣は、水質汚染や病気の蔓延を招くだけでなく、子供たちの成長や認知の発達にも深刻な影響をもたらすと懸念されている。

自国の衛生対策をおざなりにしているとして、インド政府には数々の非難が寄せられている。

「DNA India」の記事によれば、インド北西部に位置するグジャラート州のナレンドラ・モディ州首相はある会議の席上、自らの立場を顧みず、衛生状況の改善を公の場で訴えた。「私はヒンドゥトヴァ(ヒンドゥー至上主義)の指導者として知られており、立場上、こういったコメントは差し控えるべきなのですが、思い切って言わせていただければ、『Pehle shauchalaya, phir devalaya(何よりもまずトイレを、寺院建設はその次)』というのが本音です」。

インドの初代首相ジャワハルラール・ネルーはかつてドイツを訪れた際、祖国が発展するのはいつかと尋ねられてこう答えたという。「インドの全世帯にトイレが設置された時です」

一方、インド国内で活動を行なう支援団体は、この問題に重点的に取り組んでいる。導入が容易で、安全かつ低コストの衛生施設をすでに考案しているNGO団体もある。

インドで活動する社会奉仕団体「Sulabh International」は、1970年の創設以降、汲んできた水で汚物を流すタイプの低価格水洗トイレを120万世帯に提供してきた。

なお、国連は2013年に、毎年11月19日を「世界トイレデー」にすると正式発表した。支援団体などはこれを受けて、衛生的なトイレを利用できない人が全世界に25億人もいるという事実を広め、衛生施設の改善を強く訴えていくきっかけになると期待を寄せている。

[Eleanor Goldberg(English) 日本語版:遠藤康子/ガリレオ]

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