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靖国参拝に対するアメリカの声明。問題解決を内容の解釈に求めるのは危険だ

2014年01月04日 21時56分 JST | 更新 2014年01月04日 21時56分 JST

kyokasho

靖国参拝に対する米国の声明。問題解決を内容の解釈に求めるのは危険だ

 安倍首相の靖国参拝に対して、米国政府が異例の声明を発表してから約10日が経過した。国内では、声明文の解釈をめぐって様々な見解が出ている。だが声明文をどのように解釈するにせよ、今のところボールが日本側にあることだけは確かである。内容の解釈よりも、次の行動の方が圧倒的に重要であり、安倍政権は大きな決断を迫られている。

 今回、米国務省が声明を発表するにあたっては、EUやロシアなど諸外国と事前に協議した可能性が高く、偶発的なものとは考えにくい。

 また米国が貿易問題以外で日本の内政について「失望」を表明するのは前例のないことであり、軽く受け止めるべき状況でないことだけは確かである。

 国内では、内政干渉とも取れる米国の声明に対して反発する声が上がる一方、米国の意向を尊重して譲歩すべきという意見も出ている。

 米国に対して、声明は不当であると拒絶するのか、それとも何らかの譲歩をするのかは、意思決定の問題であり、最終的には日本国民の決断に委ねられることになる。だが、やっかいなのは、どちらにもあてはまらない第三の見解が出てきていることである。

 自衛官出身の佐藤正久参議院議員は、声明文の解釈という観点から、深刻な事態であるとするマスコミ報道に苦言を呈している。佐藤氏によれば失望した(disappointed)という表現はそれほど強いものではなく、友好国であるが故の「残念だ」という程度の表現だという。

 実際、国務省の記者会見では「失望」という表現に対して記者からの質問が集中し、ハーフ副報道官は「失望とは靖国参拝そのものではなく、周辺国との関係悪化が前例のない状況であったことについて言及したものである」と、多少トーンダウンするコメントを出している。

 だが過去の歴史を振り返るまでもなく、問題の解決を、声明の解釈に委ねようとする行為は大変危険である。国際交渉で重要となるのは、解釈ではなくその後の具体的なアクションだからである。

 今回の声明文の末尾には「米国は、首相の過去への反省と日本の平和への決意を再確認する表現に注目する」という一文がしっかり入っている。これは外交交渉のみなならず、国際的なビジネス交渉でもよく見られることだが、要するに「次の日本側の具体的な言動で最終的にどうするか決めますよ」という警告である。

 失望が単に残念という意味であれ、もう少し深刻な意味であれ、米国は日本が具体的な行動を示すよう要求している。日本側の真意は、次の具体的な行動で判断されることになる。

 最悪なのは、米国側はそれほど深刻に考えていないと勝手に「解釈し」、具体的な行動を何も起こさないことである。それは日本側が意図していなくても、米国からの要求を拒否したことと同じになる。

 国際交渉では、相手への警告は婉曲な表現を使って段階的に提示されてくる。だが日本人はこうしたサインの解釈をなぜか非常に苦手としている。日本は太平洋戦争直前、米国から発せられた数多くのサインをすべて「前向き」に解釈し、具体的なアクションを何も起こさなかった。警告レベルが上がっていることに気づかなかった(あるいは気づいていてもなかったことにした)日本側は、最終的にハルノートを突きつけられ、パニックを起こして開戦に突き進んでしまったのである。

 日本が最初から米国と戦争をするつもりで米国側の要求を無視していたのなら、その決断が正しいのかどうかは別にして、論理的には正しい行動といえる。だが現実には、日本側の関係者は誰も米国との戦争を望んでいなかった。日本側は「米国も最終的には戦争を望んでいない」という楽観的解釈をもとに何も行動せず、結果として米国から戦争をするように仕向けられた。みすみす米国にハメられたわけである。

 米国のやり方は汚いと日本国内で批判することは簡単である。だが現実の国際社会においては法の支配など確立されていない。戦争に負けてしまえば、不当な軍事裁判で裁かれ、自虐的な歴史観を押し付けられるのが現実であることを忘れてはならないだろう。

 米国と中国は、昨年からアジア太平洋地域の安全保障や経済問題について、包括的な交渉を進めている。今回の靖国問題に関して、米国からの要求を拒否すれば、日本抜きで米中交渉が進展する可能性が高くなる。米中はすでに金融市場の開放や中国のTPP参加を前提に交渉を進めており、尖閣諸島問題はもちろんのこと、日本は経済的にも不利な立場に陥る可能性が高い。

 だが、外交交渉で不利になり、経済的にさらに苦境に立たされることになったとしても、日本としてのスジを通すという確固たる意思を持った上での決断ならば、それはそれでひとつの選択といえよう。

 だが米国は友好的でいてくれるという楽観的な解釈をもとに、消極的拒絶を繰り返し、結果的に対立することほど恐ろしいものはない。「米国と戦争するつもりはありませんでした」などという為政者の戯言はもう二度と聞きたくないものである。自虐史観でもなく、安易な皇国史観でもなく、本当の意味で、日本は太平洋戦争のリアルな歴史に学ぶべき時が来ている。

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