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もし「ゴルゴ13」に殺人を依頼したら日本では何罪になる?

2014年02月23日 18時06分 JST | 更新 2014年06月05日 00時48分 JST
Dean Marsh via Getty Images

「殺し屋」の報酬は3万円から・・・もし「ゴルゴ13」に殺人を依頼したら何罪か?

他人から依頼を受け、殺人を請け負う殺し屋。「ゴルゴ13」や「007」などマンガや映画の話……と思いきや、「殺し屋の実態」をまじめに研究した論文がこのほど、イギリスの専門誌に掲載された。

バーミンガム市立大の研究チームは、イギリスの新聞記事から、「契約殺人」と思われるケースを検索。さらに裁判の記録をたどり、1974年から2013年にかけて、36名の「殺し屋」がかかわる27件の殺人事件が発生していたことを突き止めたという。

論文では、「殺し屋」は、100件以上の殺しにかかわる「ゴルゴ13」のような「達人」から、全くの「初心者」までいたと紹介。報酬は、一番高いもので、10万ポンド(約1700万円)。一番安いのは、16歳少年が請負った200ポンド(約3万4000円)だったという。凶器で一番多かったのは「銃」だった。

なんとも凄い研究があったものだが、もし日本で「殺し屋」に殺人を依頼した場合、どういう罪に問われるのだろうか。元検事で刑事事件にくわしい高岡輝征弁護士に聞いた。

●まず考えられるのは「殺人罪の教唆犯」

「人に犯罪を依頼するという犯罪類型では、まず実行犯(正犯)が何罪になるかを検討したうえで、依頼した人が何罪になるかを考えます(共犯の従属性)」

順番としては、「実行犯の罪」を考えるのが先のようだ。

「まず、実行犯である『殺し屋』の罪を考えてみましょう。殺人行為を実行し、被害者を死亡させた(既遂)場合は、殺人罪(刑法199条)が成立します。法定刑は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役です」

では、殺人の依頼者の犯罪はどうなるのか。

「他人に犯罪を決意させて実行させるという犯罪類型として、『教唆犯』(刑法61条)という共犯類型があります。

殺し屋が殺人既遂になれば依頼者は『殺人罪の教唆犯』になり、また、殺し屋が殺人未遂にとどまるときは『殺人未遂罪の教唆犯』になります。

教唆犯の法定刑は、正犯、つまり、殺人の実行者と同じです」

●共謀共同「正犯」という扱いになることも

この教唆犯というのは、他人に犯罪を教唆する(そそのかす)ことだが、殺人の実行に対して、それ以上の関わりをもった場合は、どうなるのだろう。たとえば、ヤクザの親分が部下の若い衆に殺人を命令するような場合だ。

「教唆犯の範囲を超えて、実行犯と同一視できるようなケース、すなわち、(1)実行行為を分担したと評価できるだけの謀議と共謀者内での地位があり、(2)意思の連絡があり、(3)共同正犯の意思(正犯意思)があるような場合には、依頼者を『共謀共同正犯』(刑法60条)とすることもあります。

この場合も法定刑は正犯と同じです。つまり『教唆犯』とも同じですが、『共犯』ではなく『正犯』として扱われる点が違っています。

このような場合は、名実ともに『正犯』として処罰することが国民感情に沿うという考え方に則っています。判例としては、傷害致死の事例ですが、札幌地裁H12.1.27判決が依頼者に共謀共同正犯を認めています」

●その犯罪の「キーパーソン」かどうかが重要

この札幌地裁判決で問題になった事件は、日頃から高圧的態度をとっていた夫に対して、妻が仕返しをしようと考え、元愛人の男に夫を痛めつけることを依頼したというものだ。

元愛人の男はさらに、その知人2人に依頼した。その結果、この知人を含む実行犯3人が夫に傷害を加え、死亡させた。妻は、実行犯に対して、間接的に犯罪を依頼したかたちだが、「共謀共同正犯」とされたという。

このような判例も踏まえ、高岡弁護士は次のように述べる。

「英国で報道されたような、依頼者がお金を出して『殺し屋』に殺害を依頼したケースの場合は、依頼者に正犯としての意思があり、犯罪の因果の出発点は明らかに依頼者にあるといえます。つまり、殺人という犯罪において、依頼者が重要な役割を占めているキーパーソンであることは間違いありません。

したがって、さきほどあげた(1)~(3)の要件にあてはまる可能性が非常に高く、立証の壁等も乗り越えやすいと考えられるので、もし『殺し屋』への殺害依頼が立件されれば、共謀共同正犯が成立するといえるのではないかと考えます」

こう見解を語ったうえで、高岡弁護士は次のように付け加えていた。

「最近、インターネットの『闇サイト』で殺害を依頼された『見知らぬ実行犯』が殺人に及ぶケースがいくつか報道され、注目されています。今後は、これらの事件が判決を迎えたとき、かなり高い確率で、共謀共同正犯として処罰されることが予想されます」

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【取材協力弁護士】

高岡 輝征(たかおか・てるまさ)弁護士

神奈川県藤沢市出身。1999から2003年まで検事として名古屋・山形・東京・横浜の各地検に勤務。2004年「大船法律事務所」開業。2012年「弁護士法人プロフェッション」設立。2013年に支店「辻堂法律事務所」開設。趣味は旅行、ドライブ、読書。

事務所名: 弁護士法人プロフェッション 辻堂法律事務所