「PM2.5」濃度、各地で上昇 体育の授業が実施された地域がある理由

PM2.5の数値が上がり、各地で注意喚起情報が発表された。マスクの着用などの呼びかけが行われた自治体があった一方、体育の授業を実施するところもあり、不安や怒りを投稿する人も続出した。PM2.5の濃度が上がった場合でも体育の授業が実施されるのは適切なのか。
時事通信社

大気汚染物質「PM2.5」の濃度が国の暫定指針値を超える可能性があるとして、2月26日、各地で「注意喚起情報」が発表された。マスクの着用や外室を控えるなどの呼びかけが行われた自治体があった一方、屋外で体育の授業を実施するところもあった。

インターネットでは「窓から見たら景色が霞んでる。こわい」、「普通に運動場で遊んだり体育もしてる、止めればいいのに」など、不安や怒りを投稿する人も続出した。

PM2.5の濃度が上がった場合でも、屋外で体育の授業が実施される学校があるのは何故なのか。

実はまだ日本では、PM2.5の濃度によって体育の授業を屋外で実施する・しないの判断基準が統一されていない。PM2.5の濃度が、1日平均値で大気1立方メートル(m)あたり70マイクログラム(μg)であれば、体育は屋外実施とするとしている自治体もあれば、1日平均値で140μg/mにならないとマラソン大会は中止しないとするところも存在するなど、基準はバラバラな状態なのだ。

■大阪市:指針値を大きく超えない限りは、体育祭等を中止する必要はない

26日の朝、大阪市ではPM2.5の濃度が1日平均値で70μg/mという、国の暫定指針値を上回る状態となった。大阪府の観測データによると、大阪市住之江区にある北粉浜小学校では、26日午前3時にPM2.5の濃度が1時間あたり100μg/mを突破。午前7時〜9時の間も、1時間あたり100μg/mを超えるなど、高い値を記録した。

しかし大阪市では、「PM2.5の濃度がこの値になった場合には体育の授業を屋内実施に変更する」などの、具体的な基準は設けられていない。大阪市のホームページには、「PM2.5が注意喚起のための暫定的指針値を大きく超えない限りは、体育祭等の屋外行事を中止する必要はない」と書かれているが、「大きく超える場合」の具体的な値については、「健康影響に関する十分な科学的知見がないため、具体的な値を示すことは困難」としており、濃度の1日平均値が「140〜150μg/mを超える場合には、すべての人は長時間の激しい運動や屋外活動を中止すべき」とだけしか書かれていないのだ。

大阪市が掲載した内容は、環境省の「微小粒子状物質(PM2.5)に関するよくある質問」に沿って掲載されているものだ。環境省では、暫定的指針値を超えた場合は「屋外での長時間の激しい運動は避けるべき」としているが、「屋外での長時間の激しい運動」とは、マラソン大会のように呼吸器系への過度の負担が長時間続くような運動が想定されるとしており、運動会等の屋外活動は、長時間の激しい運動にはあたらないと考えられるとしている。

この環境省の方針に倣っている自治体は、大阪市のほかにも盛岡市岡山市群馬県などがある。

また、2月16日に実施された熊本城マラソンでは、「暫定指針値を大きく超える場合」として具体的に示されていた「1日平均140μg/m」というPM2.5の濃度が、大会を中止する基準とされていた。

■鳥取県:指針値を超えたら体育は屋内で実施

一方、暫定的指針値を超えた場合などの対応には、独自の方針を取っている自治体もある。注意喚起は自治体ごとに行って良いとされているためだ。

鳥取県ではPM2.5の濃度が、1日平均で70μg/m、または1時間平均で85μg/mを超えた場合には体育や部活動は室内で行うとしている。

北九州市でも、1日平均値が70μg/mを超えそうな場合には運動会・体育大会の行事は延期するとしている。しかし、屋外での体育や部活、遠足、昼休みの遊び等については中止するとは書かれておらず、激しい運動は控え、また、屋外活動後は洗眼、うがいを指導するとしている。

沖縄市の美東中学のように、自治体単位ではなく、学校単位で方針を掲載しているところもある。

このように、日本全体で見た場合には、PM2.5の濃度による体育の実施基準には、ばらつきがある。対応方法が制度化されていない自治体や学校も、多くみられた。今後、PM2.5の飛来が激しさを増すと予想されるため、各自治体や学校の対応も慌ただしくなりそうだ。

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