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ロシアとアメリカ、制裁合戦に発展か プーチン大統領は企業トップに海外資産の引き揚げ勧告【クリミア情勢】

2014年03月21日 00時11分 JST
Reuters

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ロシアのプーチン大統領は20日、ロシアによるウクライナ南部クリミア編入をめぐり西側諸国が制裁を強めるなか、ロシア企業のトップに対し、国外の資産をロシア国内に引き揚げるよう勧告した。

ロシア議会下院(国家会議)はこの日、ウクライナ南部クリミアをロシアに編入する条約を圧倒的多数で承認。21日に予定される上院(連邦会議)の採決で条約批准の手続きが完了する見通し。

プーチン大統領は、メディア企業を傘下に持つアリシェル・ウスマノフ氏や、ニッケル生産世界最大手のノリリスク・ニッケルなどを傘下に収めるウラジミール・ポターニン氏ら、オリガルキ(新興財閥)として知られるロシア財界の要人を招いて会合を開いた。

席上プーチン大統領は、「ロシア企業は自国内で登記されている必要がある。企業の所有形態も透明にする必要がある」と発言。ただ、クリミア編入をめぐる動向には直接触れなかった。

ロシアでは税率が低いなどの理由から、アルミニウム大手ルサールや鉄鋼大手エブラズなどの資源関連企業のほか、インターネット検索大手ヤンデックスなどの大手企業が国外で登記。

ウスマノフ氏が傘下に置くインターネット企業Mail.Ruは英領バージン諸島、別の新興財閥のミハイル・フリードマン氏が傘下に持つ小売のX5リテール・グループはオランダのアムステルダムで登記されている。フリードマン氏はこの日の会合には出席していない。

プーチン大統領がウクライナに対し強硬な姿勢を示していることで、ロシアの株価は急落。今月だけで時価総額にして500億ドルが失われた。ロシアルーブル安にも歯止めがかからず、年初から9%下落。投資環境悪化につながっている。

こうしたなかロシアの経済成長も鈍っており、1月の成長率は0.7%と、前月の1.0%から鈍化した。ウクライナ問題の余波が広がるにつれ、一段の鈍化が懸念されている。[モスクワ 20日]

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3月20日、オバマ米大統領は、あらたにロシア人20人と、政府当局者とのつながりが深い銀行1社行に追加制裁を科すと発表した。写真はワシントンで19日撮影(2014年 ロイター/Yuri Gripas)

オバマ大統領がロシアに追加制裁、中核セクターへの拡大も

オバマ米大統領は20日、ロシアによるクリミア編入を受け、あらたにプーチン大統領の側近を含むロシア人20人と、政府当局者とのつながりが深い銀行1行に追加制裁を科すと発表した。

またロシアがウクライナでの実効支配を拡大した場合には、ロシアの中核セクターを対象に制裁措置を拡大する可能性を示した。

制裁対象者の米国内の資産を凍結するとともに、米国への渡航を禁じる。

米財務省は、今回制裁の対象に含まれたバンク・ロシア(資産規模100億ドル)は、プーチン大統領の側近を含む、ロシア政府要人のプライベートバンクとしている。

対象はほかに、世界大手の独立系商品取引会社グンボルの共同創業者ゲンナジー・ティムチェンコ氏、国営ロシア鉄道幹部のウラジーミル・ヤクーニン氏、プーチン氏の側近アンドレイ・フルセンコ氏、大統領府長官のセルゲイ・イワノフ氏も含まれる。

今回の20人を合わせると、一連の米制裁対象者は31人となった。

オバマ大統領はまた、ロシアがウクライナ東部や南部にも軍を侵攻させた場合に、ロシアの幅広いセクターへの制裁を可能にする大統領令に署名したと明らかにした。

米政府高官は、金融サービスや中核のエネルギー、防衛、鉱山セクターなど、ロシア経済の幅広い分野が制裁の対象になり得ると明らかにした。

ロシアのガス・石油産業だけでロシアの年間収入の約半分を占める。

オバマ大統領はホワイトハウスでの会見で、ロシアによるウクライナ東部および南部への脅威は、危機をさらに悪化させる深刻なリスクをはらむと指摘。

「制裁はロシア経済に打撃を与えるだけでなく、世界経済にとっても阻害要因となる恐れがあるため、望んだ結果ではない」としながらも、「ロシアは事態を一段とエスカレートさせれば、国際社会からさらに孤立するだけだと認識すべき」と述べた。[20日]

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3月20日、ロシアは、9人の米議員やホワイトハウス高官に対し、渡航禁止とする制裁措置を発表した。写真はジョン・マケイン議員。ワシントンで11日撮影(2014年 ロイター/Gary Cameron)

ロシア、米議員・高官9人の渡航禁止発表

ロシア外務相は20日、9人の米議員やホワイトハウス高官に対し、渡航禁止とする制裁措置を発表した。オバマ米大統領はこの日、クリミア編入をめぐりロシアに対し追加制裁を発表しており、制裁合戦の様相を呈してきた。

ロシアの制裁の対象となったのは、民主党のリード上院院内総務と共和党のベイナー下院議長のほか、ジョン・マケイン議員、ロバート・メネンデス議員、マリー・ランドリュー議員、ダン・コーツ議員ら。

このほかホワイトハウス関係者では、大統領補佐官のダン・ファイファー氏、国家安全保障担当補佐官のベン・ローズ氏とキャロライン・アトキンソン氏の合計3人が対象となった。

ロシア外務省は、「これまでも繰り返し、制裁措置はもろ刃の剣のようなもので、ブーメランのように米国に跳ね返ってくると警告してきた」とし、「すべての敵対的な攻勢に対し、適切に対応する」との立場を示した。[モスクワ 20日]


制裁合戦に発展する恐れも、金融機関は早急な対応必要との見方

ウクライナ南部のクリミア編入を受けた米国の対ロシア制裁が同国の報復を招き、制裁合戦に発展するのではとの懸念が高まっている。

米金融業界関係者の間では、金融機関は制裁対象との取引見直しや不正行為の発見など、早急な対応を迫られるとの見方が出ている。

今週フロリダで開催された資金洗浄対策に関する会議では、制裁対象になるとみられているロシア財界首脳は世界と広く関わっており、金融の利害関係の特定は複雑かつ困難との指摘が上がった。

一方、西側諸国の企業はロシアに大規模な投資を行っており、ロシアが対抗措置を講じた場合には、その影響を受けやすい。

バンク・オブ・アメリカのグローバル金融犯罪コンプライアンス部のマネジングディレクター、ビル・フォックス氏は会議で「今回の制裁は、米国が報復する能力を持つ国に対して制裁を発動、もしくは示唆したほぼ初めてのケース」と指摘。「状況が急速に悪化する恐れがあることが真のリスクだ。未踏の領域に踏み込むことになる」と述べた。

米財務省の元当局者で、米ホワイトハウスでテロ資金対策に関する政策立案に関わったことのあるジュアン・ザラテ氏は、ロシアにはさまざまな金融制裁を発動させる余地があると指摘。「ロシアはとりわけ欧州との通商関係が緊密で、過去にはガス・石油の手段を使って、ウクライナや東欧諸国への圧力を強めた。ロシアも示唆しているように、西側諸国の銀行に制裁を加える能力を有している」とし、ロシアによるサイバー攻撃などもあり得るとの見方を示した。

国連によると、2013年のロシアへの海外からの直接投資は940億ドルに達し、米国、中国に続き世界3位の規模に順位を上げた。

米国の対ロシア投資額は140億ドルと比較的少ないが、欧州連合(EU)は全体のおよそ75%を占める。

米財務省の元当局者、チップ・ポンシ氏は、ロシアは米国の対ロシア投資を国有化する可能性もあると指摘する。

米ホワイトハウスは今週、国内投資家にロシア株への投資を避けるよう警告した。

関係筋によると、米証券取引委員会(SEC)もロシア資産にエクスポージャーを持つ公的基金に対し、リスク管理と投資家への情報開示を徹底するよう指示した。[ハリウッド(米フロリダ州) 20日]