アメリカで「26分間苦しむ死刑」が行われている理由

ヨーロッパ諸国では死刑廃止論が強まっており、このことが、死刑が残るアメリカの一部の州における死刑執行の障害になっている。ヨーロッパの大手製薬会社数社が、2010年頃から、死刑執行に使われる場合には薬物を販売しない方針になったからだ(アメリカでは現在、薬物注射による薬殺刑が死刑の主な方法になっている)。

ヨーロッパ諸国では死刑廃止論が強まっており、このことが、死刑が残るアメリカの一部の州における死刑執行の障害になっている。ヨーロッパの大手製薬会社数社が、2010年頃から、死刑執行に使われる場合には薬物を販売しない方針になったからだ(アメリカでは現在、薬物注射による薬殺刑が死刑の主な方法になっている)。

このためアメリカでは、薬殺刑に使われてきた薬物の入手が困難になっており、死刑にかかるコストも上昇していると報じられている

死刑を現在でも実施している各州では、代替の方策として、調剤薬局に死刑執行用の薬物調合を頼んだり、試験が行われていないような薬物を組み合わせた「ドラッグカクテル」と呼ばれる代替薬物を使ったりしている。薬物の調達ができないために執行を延期せざるを得ない州もいくつかあるほか、一部の州では、銃殺やガス室等による執行の再開が検討されている

最近の死刑で用いられた薬殺刑用のドラッグカクテルは、憂慮すべき結果を招いている。「タイム」誌の記事によれば、オクラホマ州では2014年1月9日、殺人で有罪判決を受けていた死刑囚マイケル・リー・ウィルソンが、ペントバルビタールを含んだドラッグカクテルの薬物注射を受けて刑に処された。ペントバルビタールは、動物を安楽死させるときに使われる麻酔薬だ(従来の薬殺刑では、最初に死刑囚の意識を失わせるため、即効性のある鎮静・睡眠薬チオペンタールを投与するが、アメリカではこの薬品が不足しているためペントバルビタールが使われるようになってきている)。

タイム誌によれば、「(ペントバルビタールの)製造は適切な規制を受けていない場合が多く、質の悪いものは、死の直前に耐えがたいほどの痛みを引き起こす可能性がある」という。ウィルソン元死刑囚の最期の言葉は「全身が焼かれているようだ」だった。

一方、オハイオ州では、ペントバルビタールの在庫も2013年9月で底をついたことから、初めて、鎮静剤ミダゾラムと鎮痛剤のヒドロモルフォンを組み合わせた薬殺刑が行われた。

婦女暴行および殺人で有罪判決を受けていたデニス・マグワイヤ死刑囚は、2014年1月16日に刑に処されたが、死亡までに26分間を要し、あえぎながら死んだと報じられた

テキサス州では、4月はじめからペントバルビタールの使用を予定している。しかし、2名の受刑者は州当局を相手に、その調達先の情報を開示するよう訴えを起こしている。

オクラホマ州の裁判所は2014年3月、州政府が執行に用いる薬物を決定していないと公表したのを受けて、2件の死刑執行を4月まで延期するという決定を下した。さらに、受刑者は注射される薬物の種類を知る憲法上の権利があるとして、1件の執行保留を決めている

以下のインフォグラフィックでは、アメリカにおける死刑のデータを整理している。最後の地図では、18州が死刑を廃止、12州はこの5年間死刑を執行していないことが示されている。また、1990年を境に、薬殺刑の執行数が電気椅子による死刑の執行数を超え、現在はほとんどが薬殺刑であることや、代替薬のペントバルビタールによる死刑は、従来のチオペンタールを使った死刑と比べて経費が10倍以上かかることなどがわかる。

[Jan Diehm(English) 日本語版:遠藤康子、合原弘子/ガリレオ]

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