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オバマ大統領がアジア歴訪終了、同盟国にくすぶる「不信」

2014年04月29日 21時09分 JST
Reuters

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オバマ米大統領は29日、アジア4カ国の歴訪を終えて帰国の途に就いた。側近らは何カ月も前から細心の注意を払ってスケジュールを練り上げてきたが、今回の約1週間にわたるアジア歴訪では、すべてがホワイトハウスの思惑通りには運ばなかったようだ。

オバマ大統領の狙いは、外交政策の軸足をアジア太平洋地域にシフトさせるという米政権の意思が本物であることを示すことだった。しかし、これまでのところ、各国からの反応はまだら模様だ。

米国のシンクタンク、ウィルソン・センターのアジア専門家マイケル・クーゲルマン氏は「重要なのは次に何が起きるかだ」と指摘。「もし米国が(アジアへの関与に)消極的になり始めれば、再び懐疑的なささやきが始まる可能性がある」と述べた。

今回のアジア歴訪を特徴づけるのは、悲観と楽観が交錯していることだが、それが最も顕著に表れたのは、最初に訪問した日本だった。

特に、環太平洋連携協定(TPP)交渉で合意に至ることができず、TPPの勢い自体にも疑問が投げかけられる格好となった。安倍首相とオバマ大統領の非公式の夕食会や長時間に及ぶ閣僚協議でも両国の溝は埋まらず、日米共同声明は発表が延期されるという異例の事態となった。結局、TPP交渉をめぐっては「2国間の重要な課題について前進する道筋を特定した」との表現にとどまった。

一方、日本側にとってさらに重要だったのは、中国が領有権を主張する尖閣諸島(中国名:釣魚島)に関し、オバマ大統領が日米安全保障条約の適用対象だと明言し、中国には「いかなる一方的な行動にも反対する」と警告したことだろう。

元外交官の宮家邦彦氏は、尖閣をめぐるオバマ大統領の発言は、日本政府にとって「十二分な成果」だったと述べた。

<難しいバランス>

そうしたオバマ大統領のコメントは、当然ながら中国政府の反感を買い、米中関係を傷つけるリスクがある。

外交専門家の間では、オバマ大統領は今回、アジアの同盟国を安保面で安心させる一方、中国を封じ込める意図はないことを強調し、うまくバランスを取ったとの分析が大勢だ。

中国は、日米に対しては「冷戦的な精神構造」を捨てるべきだと非難したが、残りのアジア歴訪については目立った発言をしていない。ただ一部では、中国政府の反応は数週間もしくは数カ月経ってからでないと分らないと懸念する声もある。

人民大学(北京)のアメリカ研究センターで責任者を務める時殷弘氏は、オバマ政権は恐らく、中国抑止のメッセージがうまく伝わったと感じているはずだと指摘。そのうえで、「今回の歴訪が米中関係に深刻なダメージを与えたかどうか、米国の戦略的および経済的利益にダメージを与えたかどうか」については、現時点では定かではないと語った。

<乏しい具体的成果>

今回は2期目のオバマ政権で初のアジア訪問となったが、シリア内戦への対応など、同政権の幅広い外交政策が批判にさらされているタイミングにも重なった。

アジア地域の米国の同盟国からは、オバマ政権のアジア重視政策が、欧州や中東での危機対応によって骨抜きになると懸念する声も聞かれる。

緊張が続くウクライナ情勢に関しては、今回訪問した4カ国のいずれで行った記者会見でも多くの時間が割かれた。オバマ大統領も会見を通じ、ロシアに対する追加制裁をめぐり欧州首脳らに力強いメッセージを送った。

ただ28日のマニラでの会見では、オバマ大統領はアジア重視路線をアピール。「アジア太平洋でのわれわれの連携はかつてないほど強まっている。それは断言できる」と述べた。

韓国ではオバマ大統領は、4月16日に起きた旅客船沈没事故の犠牲者に追悼の意を示し、北朝鮮問題では韓国との一致団結した対応を強調した。しかし、北朝鮮の核問題では、これといって新たなアイデアは出されなかった。

韓国の朝鮮日報は論説に「米国は言葉だけではアジアで指導力を発揮することはできない」と掲載し、韓国日報も「韓国と米国の首脳会談は象徴にしか過ぎない」と批判した。

今回のアジア歴訪で数少ない具体的成果となったのは、フィリピンとの今後10年に及ぶ新軍事協定への署名だろう。これにより、米軍はフィリピン軍の基地を使用できるようになる。

オバマ大統領は今回、昨年10月に米政府機関の閉鎖によって訪問中止を余儀なくされたマレーシアも訪れた。

米高官の1人はアジア歴訪の意義について、「ここは実際に訪問して高い関心を示すことが大切な場所だ」と語った。

[マニラ 29日 ロイター]

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