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閖上地区の再建は誰のため? 被災地復興をめぐって住民と名取市に大きな隔たり

2014年05月09日 19時17分 JST | 更新 2014年05月09日 19時36分 JST
加藤順子

内陸に移住したい住民と海辺に可能な限り人を集めて町を再建したい行政−−。東日本大震災の大津波の直撃を受け、約800人が亡くなった宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区。住民の5人に1人が犠牲となったこの地区でいま、人口2000人規模の町を再建する事業が動き始めている。しかし、内陸移転を切望する住民と市長・行政の間で大きな隔たりが生まれている。

閖上地区の復興について、市が住宅再建の意向を住民に確かめた調査結果の公表が、予定より大幅に遅れることが新たに分かった。市はこれまで3月に中間報告、4月に結果を公表すると説明してきたが、中間報告も含めて発表されていない。結果は、5月19日の市議会復興調査特別委員会で報告されるという。

■ なぜ名取市の集計が遅れているのか

市は、閖上地区の32ヘクタールを平均3メートル宅地かさ上げしたうえで、「被災市街地復興土地区画整理事業」と「防災集団移転促進事業」の2つを併用し、災害公営住宅街を建てて、街を再建することを計画中だ。

市が住民の意向を直接確かめたのは、2012年夏と2013年春に続く3度目。今年1月から3月にかけて行われた今回の調査が最終となる。面談や文書で、両事業に伴う「土地の買い取り希望」「移転先の希望」「災害公営住宅の入居希望」を3回別々に集めた。

市によると、3回に分けて意向を聞いたため手間が増えたことや、災害公営住宅の入居先希望の調査の回答率が対象者の5割あまりにとどまったために追加調査が必要となったことが、集計の遅れた原因だという。担当課は、「住民の声がしっかり反映されたと努力したと思えるレベルまで、なるべく多く回答を集めたい」として、引き続き電話や文書で調査を続けている。

過去の意向調査では、「閖上に戻りたい」とする住民の数が想定を下回り、国が認めるかさ上げ事業の予算措置に必要な人口密度に満たなかった。このため市は、土地のかさ上げの範囲を2度にわたって規模を縮小。国との間で調整に手間取り、計画は遅れた。

また、調査のたびに、「閖上地区外の内陸に移転したい」と希望する人の数が増加しており、あくまでも閖上に人口を集中させたい市側の意向との間に対立が生じている。市は災害公営住宅を内陸部に100戸整備し、他地区の余剰分も併せて用意する方針だが、希望者数に対して大幅に不足したままだ。

■意向調査の「誤集計」も発覚

これまでの調査そのものも、市側の問題が続いて混乱を招いている。

2012年夏の意向調査では、市は、「現地に戻りたくない」とした住民のうち、内陸部の災害公営住宅に希望しても入居できないはみ出し分を「戻りたい」に加算する操作を行った。

2013年春の意向調査後では、内陸移転を求める住民に、「もし希望が通らなかった場合、閖上区域内でもよいか」と個別に第二希望を電話で尋ねる「追跡調査」を実施。追跡により現地再建派の数は増加したものの、「強引に海辺に戻される」と住民たちの間に動揺が広がった。

さらに、「誤集計」が発覚し、今年1月、名取市の佐々木一十郎市長が謝罪する事態に至った。「すでに閖上の外に移転した」と誤って回答した仮設住宅で暮らす住民の回答分や、未回答の分を、現地再建派の数に集計していたことが、市議会議員の情報開示によりわかったのだ。

住民の希望に応じた計画の見直しはせず、現地再建派を多く見せるよう集計した値を意図的に操作したと疑われても仕方のない市のやり方に、宮城県の都市計画課も「正直に言って、余計な問題が出てきた」と困惑していた。

今回の最終意向調査は、こうした紆余曲折を経たタイミングで実施された。厳正な集計と、増え続ける内陸移転の希望者に市がどのような対応を打ち出していくかが注目される。市のまちづくり復興課は、昨年11月に県の認可が下りた土地区画整理事業の計画変更を5月19日に提示するかどうかは、「国とも検討中」と話す。

閖上で現地再建を望む人たちで構成する「まちづくり協議会」は今月11日に第1回の設立総会が開かれる。現地再建派の街の将来像の検討は進み始めるが、内陸移転を希望する人たちの先行きは、混沌としたままだ。

現在も閖上の住民が暮らす愛島東部仮設団地では、土地の所有者が借り主の県に対し、契約期限の6月末までに土地の返還を求めている。内陸移転を希望している仮設の住民は「将来住みたい家も用意されないし、今住んでいる場所も追い出されてしまうのか」と、不安な表情を見せている。

(加藤順子)

閖上地区・住民向けの全体説明会

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