子育てしやすい国になるには? ハフィントンポスト日本版、この1年で振り返る日本の少子化問題

今、日本が直面している少子化問題を解決するには何が必要なのか? ハフィントンポスト日本版では2013年5月にスタートして以来、継続してこの問題を報道してきた。1周年を迎えるにあたり、これまでに掲載した記事を紹介、あらためてこの問題について考え、「未来のつくりかた」を探っていきたい。
Shutterstock / Irina Mozharova

今、日本が直面している少子化問題を解決するには何が必要なのか? ハフィントンポスト日本版では2013年5月にスタートして以来、継続してこの問題を報道してきた。1周年を迎えるにあたり、これまでに掲載した記事を紹介、あらためてこの問題について考え、「未来のつくりかた」を探っていきたい。

■20年間も解決しない日本の少子化問題とは?

日本初の少子化対策「エンゼルプラン」が策定されたのは1994年。およそ20年にわたり、日本はこの問題に取り組んできた。2013年5月、「『子育てしやすい国』の条件」として、ジャーナリストの猪熊弘子さんが寄稿、なぜ日本の少子化が進んだのかを指摘した。

少子化問題解決のためあらゆる政策が必要となってくるが、一方で猪熊さんは安易な「待機児童ゼロ」が招く危険性にも警鐘を鳴らした。待機児童ゼロを宣言した横浜市でも、数字のマジックによって「純粋に認可保育所に入れない子どもの数は1746人もいる」という。また、東京都杉並区の保育園で行われた実験も紹介。子ども一人あたりに必要な面積はスウェーデンの保育所の基準に比べ、東京都の認証保育所の基準は見劣りするほど狭かった。

■「イクメン」という言葉がない国、フィンランドの世界一幸せな子育て

では、他の国ではどのように少子化問題に取り組んできたのだろうか。日本の少子化は晩婚化が原因と言われているが、初婚平均年齢も出生率も、日本より高いフィンランドにヒントを得るため、ミッコ・コイヴマー駐日フィンランド大使館参事官にインタビューした

フィンランドでは、「イクメン」という言葉がないという。男性も子育てをするのが当たり前だからだ。フィンランドでも女性の社会進出の影で、ベビーブームが終わった1950年以降、急速に出生率が落ち込んだ。そこで、政府が打ち出したのは育児しながら働く女性への支援、特に未就学児の保育の整備だった。こうした支援策があり、日本のような待機児童問題は発生していない。

さらに、日本では子育てにかかる経済的な負担が大きいため、2人目や3人目の子どもを生まない人も少なくない。フィンランドでは小学校から大学までの教育費は無料。誰でも等しく、教育を受けることができるという。「資源の少ない国なので、自分たちの脳こそ最大の資源と考えます。だからこそ、子供の教育に力を入れているのです」とミッコ参事官。同じく資源が少ない日本にとって、フィンランドの政策は多くの示唆を含んでいた。

■森少子化対策担当大臣に単独取材、ユーザーの質問をぶつける

日本政府も手をこまねいて見ていたわけではない。安倍内閣は2013年6月14日、4年ぶりとなる「骨太の方針」(正式名称:経済財政運営と改革の基本方針)を閣議決定、女性の活躍促進や少子化危機突破に向けた方針を盛り込んだ。ハフィントンポスト日本版では、これらの対策をまとめてきた森雅子少子化対策担当大臣に、ユーザーの方から募った質問も含め、多岐にわたって全貌が見えにくい少子化対策について、単独のロングインタビューを行った。

まずは、「骨太の方針」に入ったことの意味を語る森大臣。少子化対策担当大臣の諮問機関である「少子化危機突破タスクフォース」での議論もまじえ、政府の「本気度」を語った。続いて、「育休3年」や「待機児童ゼロ」は本当に解決できるのかを質問。制度があっても運用に不安があるとする女性の声も伝えた。森大臣は、企業や男性への啓蒙をしていくことや、1兆円規模の予算で、待機児童40万人を解消することなどを説明した。最後に関係省庁の縦割り行政をどう克服するのか。また、森大臣自身、働く女性として育児と子育てをどのように両立してきたかをたずねた

■都知事選の争点にならなかった子育て政策

2014年2月9日は東京都知事選の投開票日だった。「脱原発」が争点としてクローズアップされる中、少子化対策について議論すべきとして、ハフィントンポストでは、その1年前に「保育園一揆」が起きた杉並区の現状を取材した。東京都は人口が集中、共働き世帯も多いことから、日本で最も待機児童数が多い。「保育園ふやし隊@杉並」を立ち上げた曽山恵理子さんに聞いたところ、1年経っても依然、厳しい待機児童問題が浮き彫りとなった。

猪瀬直樹前都知事が打ち出した小規模保育整備促進支援事業「東京スマート保育」にも、母親目線からの疑問を呈した。「認可保育所が認可保育所として運営されるには、それなりのしっかりした基準があります。スマ保を進めて、保育士の有資格者を減らしたり、1人あたりの面積を減らしたりということになると、本当に子供が安心安全に育っていけるのかと疑問はある」

また、女性ばかりではなく、男性からの視点はどうなっているのか。日本で初めて誕生した父親支援NPO「ファザーリング・ジャパン」代表理事・吉田大樹さんにも取材した。吉田さんが重視するのは、「ワークライフバランス」だ。働く女性の約6割が出産により退職している。「女性の活用は、女性だけの問題ではない。男性も自分の問題として考えることが大事」と吉田さんは語る。

「男性が長時間労働の働き方を見直すだけで、家族のあり方は大きく変わります。その影響はとても大きい。もちろん残業ありきの働き方は、企業側が改善しなければならない課題でもあるんですが、子供を持つ男性も『果たして今、仕事ばかりしていていいのか』と自分に問いてみることが大切です」

■最も「いいね!」をされた「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない」

ハフィントンポストでは、子育て世代に向けて意見発信もしてきた。ブロガーで、コピーライター・メディア戦略家の境治さんが1月24日にエントリーした記事「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない」は、Facebookでハフィントンポスト日本版史上最高となる16万4000の「いいね!」がついた。

「子育てを母親だけに押し付けてはいけない。そして少子化の原因のほとんどがそこにあるとぼくは思う。良妻賢母の幻想を女性たちに無理強いしてきたから子供が減った。「ごめんなさい、それ無理です」と女性たちが思っているのだ。そしてその押し付けは間違っているのだ」という境さんの考えは、多くの人々にシェアされた。

■誰もが「ベビーカーおろすんジャー」に変身できる

ハフィントンポスト日本版では2014年元日から、「未来のつくりかた」という記事のシリーズをスタートさせた。自分たちの未来をどのように作っていくか、取り組んでいる人たちを取材している。その初回に登場したのは、東京都杉並区の方南町駅で活躍しているヒーロー「ベビーカーおろすんジャー」。エスカレーターやエレベーターが設置されていない駅に立ち、改札口までの階段を昇り降りしてベビーカーを始め、妊婦さんやお年寄りの荷物を運んでいる。彼はなぜ、そんなことを始めたのだろうか。

町で暮らすうちに、子連れのお母さんたちが駅にエレベーターがないことに苦労していることを知る。彼は町のために何かをしたい、お母さんたちの力になりたいとベビーカーおろすんジャーに変身した。メディアでも紹介され、その勇姿は海外でも報道されるようになる。

しかし、彼は言うのだ。「ベビーカーおろすんジャーの活動は、まだ始まっていないぐらいなのにこんなに反響があったということは、それぐらい皆、困っているんだと思いました。僕自身は自転車や徒歩での移動が多く、駅を使いません。だからお店でお母さんたちに話を聞くまでベビーカーのことなんて、全然気づいていなかった。怖いなあと。皆声をかけるのは苦手だし、お母さんたちも助けてとはなかなか言えない。そこが変わればいいなあと思います」

自分たちの未来は自分たちの手で。その一歩になるべく、ハフィントンポストでは5月27日、ハフィントンポスト日本版1周年イベント「未来のつくりかた」を東京都千代田区のアーツ千代田3331で開催する。5月に子育てしながら活躍する女性をたたえる「ベストマザー賞」に輝いた株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長、小室淑恵さんや長野智子編集主幹が登壇、女性の働き方などについて語る。

また、フィンランド大使館のミッコ・コイヴマー参事官や、デンマーク出身で日本コロニヘーヴ協会・代表理事のイェンス・イェンセンさんを招き、北欧の子育てについて語ってもらうほか、ハフィントンポストのブロガーで、育児について寄稿しているNPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事の吉田大樹さん、コピーライター・メディア戦略家の境治さんもまじえ、イクメンの視点から日本の子育てについて話し合う。

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