学童保育の定員枠を拡充へ 一方、学童クラブが消える自治体も

政府は「放課後児童クラブ」(学童保育)の定員枠を、約30万人分拡充する方針を固めた。一方、東京都23区の一部では、学童保育が消える事態も起きている。
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政府は「放課後児童クラブ」(学童保育)の定員枠を、約30万人分拡充する方針を固めた。6月に取りまとめる新たな成長戦略に盛り込むという。毎日新聞などが報じた。

厚生労働省によると、学童保育は13年5月現在、全国で2万1482カ所あり、登録児童数は88万9205人。共働き家庭の増加とともに15年前に比べて2.6倍に増えた。政府は保育所の待機児童対策に取り組んでいるが、一方で、小学校に入学した子どもの放課後の預け先が見つからず、女性が仕事を辞めざるを得なくなる「小1の壁」の解消も課題となってきた。

政府は、定員枠や利用時間の問題などで潜在的に利用できていない児童数を「30万人程度」と見ており、5年程度でサービスの供給不足の解消を図る。総合プランには、「空き教室」のように少子化で余裕が生じた学校スペースの活用や、都市部では開所時間を延ばすなど運用基準の改定などを盛り込むことにしている。

(毎日新聞「学童保育:定員枠を30万人拡充 女性就労後押し」より 2014/05/20 06:30)

学童保育は共働き家庭の小学生の児童を、放課後に預かる制度。仕事を持つ親には助かる制度ではあるが、保育園で夜8、9時までの延長保育があったのに対して学童クラブには無いという「小1の壁」や、小学4年生以上は預かってもらえないという「小4の壁」など、切れ目ない育児サポートができていないという課題が指摘されていた。

2015年4月には、子供・子育て関連3法が施行され、学童保育の対象が「おおむね10歳未満」から「小学生」へと拡大される。この制度は義務ではないため、施行されても必ず小学校4年生以上が預かってもらえる保証はないが、来年度に向けて前倒しで整備を行っている自治体もあるという。

■消える学童保育

一方、東京都23区の一部では、学童保育が消える事態も起きている。共働き家庭向けなどの学童保育をやめ、全児童向けを対象とする「放課後子供教室」に移行しているというのだ。

放課後子供教室は、学童保育で行っているおやつの提供や、宿題の促しなどを行わない。利用料金は、基本的に無料。指導員も専門資格を有するかどうかは問わず、地域住民のボランティアなどが携わる。定員枠も設けられていないため、「待機児童」という観念もない。各自治体が学童クラブから放課後子供教室への一本化へ移行する理由について、予算面での事情などがあると朝日新聞デジタルが伝えている。

都のまとめでは、世田谷、品川など独自の放課後事業をしている区は、いずれも学童クラブの待機児童がゼロ。板橋区も「定員を外し、待機児童を解消する目的も大きい」といい、学童クラブを整えるより、全児童向け事業のほうが安上がりだという「本音」も垣間見える。「特別区は国庫補助がないため、国の補助金の基準に縛られない」(都)という事情もある。

一方、全児童向け事業だけで公的な学童保育がなかった横浜市は、働く母親の増加を踏まえ、留守家庭の登録を始めた。定員や専用スペース設置も検討し、現在の89カ所を全342校に広げる予定だという。川崎市も全児童向け事業一本だったが、「厚労省の基準ができたら、検討を始めたい」としている。

朝日新聞デジタル『消える学童クラブ 東京23区内、全児童向け一本化次々 「保育手薄に」不安も』より 2014/03/24)

なお、政府は放課後における子供の居場所作りの今後について、一体化の取り組みを進めるとしている。田村憲久厚生労働相は経済財政諮問会議で、「特に一体型の放課後児童クラブ、放課後子供教室を中心に計画的に整備を進める」と発言。また、下村博文文部科学相も、「単に待機児童を解消するだけでなく、子供たちの放課後の豊かな教育環境を充実させるため、放課後子供教室を質、量ともに充実させることが必要」としている。

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