イランで顔出し「Happy」踊った若者たちが逮捕

ソーシャルメディアで広く共有された動画が問題になり、7人または8人のイランに住む若者が、テヘランで逮捕された。

ソーシャルメディアで広く共有された動画が問題になり、7人または8人のイランに住む若者が、テヘランで逮捕された。

この動画は、ファレル・ウィリアムスのヒット曲「Happy」に合わせて、男女が踊っているもの。女性3人が、ヒジャブ(女性の頭髪を隠す布)を着用していなかったことなどが問題になった(以下の動画)。

この動画は、削除されるまでに3万人以上が閲覧した。逮捕のニュースが広まると、ただちにコピーが再アップロードされ、Twitterのハッシュタグ「#FreeHappyIranians」とともに情報が拡散された。

1979年のイスラム革命以降、イランを支配してきた保守的な宗教勢力は、この動画を検閲すべき対象と見なした。アメリカ「ABC」の報道によると、テヘラン警察のHossein Sajedinia署長は、国営のISNA(イラン学生通信)に対して次のように述べた。「高潔なイラン国民を傷付ける下品なビデオがインターネットで公開された後、警察はこのビデオの制作に関与した者たちを特定すべきと判断した」

署長は国営テレビにこう語っている。「わが国の大事な若者たちは、こういった種類の人々を避けるべきだ。俳優や歌手、そしてこうした問題を避けるように努めてほしい」

イラン国営テレビは、男性7人と女性1人が、このビデオについて取り調べを受けている映像を放送した(以下の動画)。この放送では、ビデオの中のダンサーたちには、ぼかしがかけられていた。イギリスの「BBC」は、拘束された人の数は明らかにされていないと報じている

このテレビ映像の英語字幕版によると、拘束された人々は「俳優」であり、「Happy」のビデオ制作にはオーディションと騙されて参加したが、制作時には「一般公開はされない」と約束されていたという。

しかし、ビデオの終わりに示されるクレジットには、誇らしげにこう書かれている。

ぼくたちはファレル・ウィリアムスのファンであり、「iPhone 5S」を使って8時間でこのビデオを作り上げた。この曲「Happy」は、ぼくたちが、ハッピーになるための口実。ビデオ制作は本当に楽しかった。見るあなたも笑顔になれるといいね。(C) All Rights reserved by Sol Production

ビデオの制作者は、逮捕の3週間前に、イランの英語サイト「Iran Wire」に対して制作意図を語っている。それによれば彼らは、国連の国際幸福デー(3月20日)を記念して、このビデオを作ったという。出演者のひとりでもあるネダさんは、「イランの首都にも、元気で明るい若者が大勢いることを世界に伝え、世界の人々がニュースを見て感じている、厳格で乱暴なイメージを変えたかったのです」と述べた。

イランでは政治的緊張が高まっている。2013年8月から任期についたハサン・ロウハニ大統領は、国内におけるより広範な自由を擁護しようとしているが、イランには、行政・司法・立法の三権の上に立つ最高指導者が存在し、軍や警察、治安機関等も管轄しているからだ(現在の最高指導者は、前大統領であるアヤトラ・アリ・ハメネイ師。終身制で任期はない)。

現在のイランでは、女性がヒジャブなどを着用せずに公共の場所に出ることは法律違反になる。だが、1979年のイラン革命以前には、イラン人の間でもヒジャブはそれほど一般的ではなかった。フェイスブックページ「My Stealthy Freedom」(わたしの隠れた自由)は、警察に見られるおそれのない場所でヒジャブを外し、個人的な抗議活動を行う多くの女性たちを紹介している。ネダさんはIran Wireに対し、ビデオに登場する若い女性たちは、法律に反しないようにウィッグで髪を覆っていたと語っている。

なお、「#FreeHappyIranians」ハッシュタグを始めたイランのラジオホスト、カンビズ・ホセイニ氏は、5月21日のツイートで、制作ディレクター以外の参加メンバーは釈放されたと述べた

ロウハニ大統領の以下のツイートからは、メンバーの釈放には同大統領の介入があったことが伺える。

「幸福は、人々の権利だ。喜びによって引き起こされる行動について、あまりに厳しすぎることがあってはならない」

文末のスライドショーでは、「#FreeHappyIranians」ハッシュタグに集まったイラン人たちのメッセージを紹介している。

[Yasmine Hafiz(English) 日本語版:水書健司、合原弘子/ガリレオ]

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